356 / 539
第354話 二学期・期末テスト(3) at 1995/11/27
しおりを挟む
「な――なんのハナシだか、さっぱりわからないんだけど……?」
「とぼけなくたっていいよ、木島さん。僕、二人がやりとりしているところ、見てたんだ」
「……っ」
三時間目の『保健体育』のテストが終わったあと、さっきの二人――クラスでも地味目な部類にわけられる木島さんと森谷さんを呼び止めて、僕は廊下の端の、誰も来ない場所で単刀直入にそう告げた。
「別に君たちをどうこうしようってんじゃないんだ。けど、それにどうしても興味があってね」
「だ、男子が見るものじゃない! 見ていいものじゃないんだって!」
「? ……どういう意味だ?」
「ち――ちょっと待って! どういうものか知ってるって言ってたけど、あれ、嘘だったの?」
「もうこの際、嘘かホントかは関係ないんだよ。さあ、見せてくれ」
「……っ」
「どうしても断るって言うなら……こっちにも考えがある。それくらい真剣なんだ」
「………………わ、渡せばいいのね?」
「うん。それだけでいい。君たちが渡したってのはヒミツだ。迷惑はかけないって約束するよ」
それでも木島さんは最後の最後に抵抗するそぶりを見せた。が、やがて通学鞄の奥の奥の方にしまいこんでいたそれを取り出した。ごく普通の茶封筒。中の物の厚みでわずかに膨らんでいる。それからもう一度まわりを見回して誰もいないことを確認すると、僕の手の中に置いた。
「ぜ、絶対に、あたしたちが渡したってことはナイショにして」
「もちろん。神に誓うよ。足りなければ仏にも誓う」
「じ、じゃあ――」
僕の言うことを信じたというより、一刻もこの場を立ち去りたかったのだろう。木島さんと森谷さんは念を押すように僕の目を覗き込みうなずくと、人目を避けるように去っていった。
そのまま早足で階段を下りていく二人の姿が見えなくなった頃、僕は茶封筒の中に入っている数十枚かの紙片の束を取り出し――そして、驚きのあまり声を失ったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はじめに言っておくけど……ちょっと刺激的な写真だから、驚かないように。いいね?」
僕ら『電算論理研究部』の部員たちは、顧問でもある荻島センセイに無理を言って、テスト対策の勉強会をする、と半ば嘘をついて部室に集まっていた。僕の前置きに、たちまち緊張が走る。
「クラスの女子の間で出回っていたのは、これみたいなんだ。今回の件に関係しているらしい」
僕は手の中の光沢を帯びた紙片を一枚ずつちゃぶ台の上に並べていく。
「こ、これ……なんなの……!?」
「恐らくは、っていう推測なら話せる」
実は、木島さん、森谷さんとの会話から、たぶんそうであるらしいことを僕は知っていた。
「これが例のウワサの中で出てきた『体操部員たちの弱み』ってシロモノなんだろう、きっと」
その中には――。
みずみずしい真っ白な姿態をあらわにした、下着姿だけの女子生徒の、着替え途中の無防備な姿が写し出されていた。隠し撮りなのだろう、なまめかしくも生々しすぎて。見れてうれしいというより、背徳感と罪悪感の方が強い。他のものを見ても大体同じようなシーンで、恐らく部活後の女子更衣室での着替え時間に、悪意持つ何者かによって撮影されてしまった写真なのだと思われた。
ただ唯一の救いは、どれも顔に関してはほとんどと言っていいほど写っていないことだった。斜め後ろから撮影されたものだったり、正面からのアングルでも首から下しか写っていなかったりといった具合に、だ。それでも、写っている本人ならどれが自分かはわかるに違いない。
――ただ一枚を除いては。
「こ、これ……きっとそう、だよね? ほとんど目元まで写っちゃってる……。ひどい……!」
純美子が小さな悲鳴を上げて、わななく口元を両手で押さえた。
その写真に写っている女子生徒の名を、僕は確かに知っている。
ああ、間違いない。
カノジョの名は、桃月天音だ。
「とぼけなくたっていいよ、木島さん。僕、二人がやりとりしているところ、見てたんだ」
「……っ」
三時間目の『保健体育』のテストが終わったあと、さっきの二人――クラスでも地味目な部類にわけられる木島さんと森谷さんを呼び止めて、僕は廊下の端の、誰も来ない場所で単刀直入にそう告げた。
「別に君たちをどうこうしようってんじゃないんだ。けど、それにどうしても興味があってね」
「だ、男子が見るものじゃない! 見ていいものじゃないんだって!」
「? ……どういう意味だ?」
「ち――ちょっと待って! どういうものか知ってるって言ってたけど、あれ、嘘だったの?」
「もうこの際、嘘かホントかは関係ないんだよ。さあ、見せてくれ」
「……っ」
「どうしても断るって言うなら……こっちにも考えがある。それくらい真剣なんだ」
「………………わ、渡せばいいのね?」
「うん。それだけでいい。君たちが渡したってのはヒミツだ。迷惑はかけないって約束するよ」
それでも木島さんは最後の最後に抵抗するそぶりを見せた。が、やがて通学鞄の奥の奥の方にしまいこんでいたそれを取り出した。ごく普通の茶封筒。中の物の厚みでわずかに膨らんでいる。それからもう一度まわりを見回して誰もいないことを確認すると、僕の手の中に置いた。
「ぜ、絶対に、あたしたちが渡したってことはナイショにして」
「もちろん。神に誓うよ。足りなければ仏にも誓う」
「じ、じゃあ――」
僕の言うことを信じたというより、一刻もこの場を立ち去りたかったのだろう。木島さんと森谷さんは念を押すように僕の目を覗き込みうなずくと、人目を避けるように去っていった。
そのまま早足で階段を下りていく二人の姿が見えなくなった頃、僕は茶封筒の中に入っている数十枚かの紙片の束を取り出し――そして、驚きのあまり声を失ったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はじめに言っておくけど……ちょっと刺激的な写真だから、驚かないように。いいね?」
僕ら『電算論理研究部』の部員たちは、顧問でもある荻島センセイに無理を言って、テスト対策の勉強会をする、と半ば嘘をついて部室に集まっていた。僕の前置きに、たちまち緊張が走る。
「クラスの女子の間で出回っていたのは、これみたいなんだ。今回の件に関係しているらしい」
僕は手の中の光沢を帯びた紙片を一枚ずつちゃぶ台の上に並べていく。
「こ、これ……なんなの……!?」
「恐らくは、っていう推測なら話せる」
実は、木島さん、森谷さんとの会話から、たぶんそうであるらしいことを僕は知っていた。
「これが例のウワサの中で出てきた『体操部員たちの弱み』ってシロモノなんだろう、きっと」
その中には――。
みずみずしい真っ白な姿態をあらわにした、下着姿だけの女子生徒の、着替え途中の無防備な姿が写し出されていた。隠し撮りなのだろう、なまめかしくも生々しすぎて。見れてうれしいというより、背徳感と罪悪感の方が強い。他のものを見ても大体同じようなシーンで、恐らく部活後の女子更衣室での着替え時間に、悪意持つ何者かによって撮影されてしまった写真なのだと思われた。
ただ唯一の救いは、どれも顔に関してはほとんどと言っていいほど写っていないことだった。斜め後ろから撮影されたものだったり、正面からのアングルでも首から下しか写っていなかったりといった具合に、だ。それでも、写っている本人ならどれが自分かはわかるに違いない。
――ただ一枚を除いては。
「こ、これ……きっとそう、だよね? ほとんど目元まで写っちゃってる……。ひどい……!」
純美子が小さな悲鳴を上げて、わななく口元を両手で押さえた。
その写真に写っている女子生徒の名を、僕は確かに知っている。
ああ、間違いない。
カノジョの名は、桃月天音だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる