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第357話 ガールズ・オン・フィルム at 1995/11/29
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「それじゃ、とりあえず書き出してみたけれど、抜けや漏れがないかチェックして欲しいんだ」
その日のひさびさの部活で、部室に集まった『電算論理研究部』の部員たちは、僕の書いた文字が並ぶホワイトボードに視線を集めた。
・これを撮影したのは一体誰なのか?
・一体なんの目的で撮影された写真なのか?
・これらの写真から読み取れる事実とは?
悲しいかな、手持ちの情報が少なすぎて、書き出せたのはこの三つだけだ。
そこではじめに口を開いたのは渋田だ。
「その、誰が? ってのは、もう決まってるじゃん、モリケン? 体操部員の誰か、でしょ?」
「だろうね、きっと。でも、なにを使って撮ったんだ? 他の部員たちに気づかれずに?」
「てったって、他にないでしょ? 『写ルンです』とかじゃない?」
「あー! 懐かしっ! あったあった!」
「は? 懐かしい?」
「……あ。い、いやいやいや! 『夏だし!』って言ったんだよ!」
危ない危ない。
そうだ、そうだった。まだカメラ付き携帯電話どころか、携帯電話そのものがない時代なんだ。ましてや、高画質カメラを備えたスマホなんて影もカタチもないんだったっけ。
『写ルンです』は、富士フイルムが一九八六年より販売開始したレンズ付きフィルムの商品名で、同ジャンルのパイオニア的製品だ。その手ごろさと携帯性の良さから世界的にも人気を得て、二〇二一年現在もなお、ごく一部のラインナップに縮小されてはいるものの販売中である。
となれば、撮影後は取扱いのあるいずれかの店舗に持ち込んで『現像』してもらう必要があるわけだ。このあたりだと、スーパー『大丸ピーコック』か『三徳』内の専用カウンターか、商店街にある本屋『けやき書房』か、もしくは近隣のコンビニエンスストアあたりになるだろう。
しかし、どこも本格的な写真店ではないから自前での現像はできず、ルート周回している出入りの業者に丸投げすることになる。つまり、中身に関してはまったく知らないということだ。
「じゃあ、現像を依頼された店側も中身を見てない可能性が高いから、誰が持ち込んだかまでは調べようがないな。手がかりになるかと思ったんだけど……。じゃあ次のは、どう?」
そこでおずおずと手を挙げたのは、佐倉君だった。
「は、犯人の目的って、やっぱりウワサどおり『脅しのため』ってことなんですよね……?」
「決めつけるのは早いかなって。だから改めて別の可能性も考えてみたいんだよ、佐倉君」
「で、でもですよ? や、やっぱりこんな写真を学校中にばらまくぞ! って言われたら……」
ぶるり、と身を震わせて両腕で、ひし、とカラダを抱きしめる。
あ、気持ちとしては当然被害者サイドなんだね。
「やりたければ、やればいい――そういった考えの方はいなかったのですか?」
「いないとは言い切れないね、ハカセ。だけどポイントは、被写体が一人じゃないってことさ」
「……ふむ、なるほど。自分はよくても、受け入れられない方がいれば無視はできない、か……。頭が良い」
二つめも、やはり大した推理もできないまま。
みんなでうつむき、うなるしかなかった。
――が。
そこで突然、すっ、と手を挙げてみせたのは咲都子だった。
「いい? モリケン?」
「もちろん。で……誰か? ってこと? なんのために? ってこと?」
「どっちでもない。あたしが気になるのは、三番目の『写真から読み取れること』って奴よ」
そうして咲都子は、ちゃぶ台の上に雑多に並べられた写真を掻き集めると、すばやくそろえた写真の一枚一枚をじっくりと、食い入るように見つめていった。
やがて、最後の一枚になり、ちゃぶ台の中心に置かれたひとかたまりの一番上に、そっ、とそれを載せた。
溜息をひとつ。
「この写真ってさ……? 一見すると、どれも同じようで、無作為に隠し撮りされたもののように見えるんだけどさ……? 違うんじゃないかな、って思えるんだよ、このあたしにはね」
「………………どういうことだ、それ?」
「気のせいかもしれない。でもね? これだけ、他のとは違うの。撮られたくて、見て欲しくって撮られてるのよ」
そこで咲都子は。
迷うことなく僕らに、一枚の写真を掲げてみせたのだった。
その日のひさびさの部活で、部室に集まった『電算論理研究部』の部員たちは、僕の書いた文字が並ぶホワイトボードに視線を集めた。
・これを撮影したのは一体誰なのか?
・一体なんの目的で撮影された写真なのか?
・これらの写真から読み取れる事実とは?
悲しいかな、手持ちの情報が少なすぎて、書き出せたのはこの三つだけだ。
そこではじめに口を開いたのは渋田だ。
「その、誰が? ってのは、もう決まってるじゃん、モリケン? 体操部員の誰か、でしょ?」
「だろうね、きっと。でも、なにを使って撮ったんだ? 他の部員たちに気づかれずに?」
「てったって、他にないでしょ? 『写ルンです』とかじゃない?」
「あー! 懐かしっ! あったあった!」
「は? 懐かしい?」
「……あ。い、いやいやいや! 『夏だし!』って言ったんだよ!」
危ない危ない。
そうだ、そうだった。まだカメラ付き携帯電話どころか、携帯電話そのものがない時代なんだ。ましてや、高画質カメラを備えたスマホなんて影もカタチもないんだったっけ。
『写ルンです』は、富士フイルムが一九八六年より販売開始したレンズ付きフィルムの商品名で、同ジャンルのパイオニア的製品だ。その手ごろさと携帯性の良さから世界的にも人気を得て、二〇二一年現在もなお、ごく一部のラインナップに縮小されてはいるものの販売中である。
となれば、撮影後は取扱いのあるいずれかの店舗に持ち込んで『現像』してもらう必要があるわけだ。このあたりだと、スーパー『大丸ピーコック』か『三徳』内の専用カウンターか、商店街にある本屋『けやき書房』か、もしくは近隣のコンビニエンスストアあたりになるだろう。
しかし、どこも本格的な写真店ではないから自前での現像はできず、ルート周回している出入りの業者に丸投げすることになる。つまり、中身に関してはまったく知らないということだ。
「じゃあ、現像を依頼された店側も中身を見てない可能性が高いから、誰が持ち込んだかまでは調べようがないな。手がかりになるかと思ったんだけど……。じゃあ次のは、どう?」
そこでおずおずと手を挙げたのは、佐倉君だった。
「は、犯人の目的って、やっぱりウワサどおり『脅しのため』ってことなんですよね……?」
「決めつけるのは早いかなって。だから改めて別の可能性も考えてみたいんだよ、佐倉君」
「で、でもですよ? や、やっぱりこんな写真を学校中にばらまくぞ! って言われたら……」
ぶるり、と身を震わせて両腕で、ひし、とカラダを抱きしめる。
あ、気持ちとしては当然被害者サイドなんだね。
「やりたければ、やればいい――そういった考えの方はいなかったのですか?」
「いないとは言い切れないね、ハカセ。だけどポイントは、被写体が一人じゃないってことさ」
「……ふむ、なるほど。自分はよくても、受け入れられない方がいれば無視はできない、か……。頭が良い」
二つめも、やはり大した推理もできないまま。
みんなでうつむき、うなるしかなかった。
――が。
そこで突然、すっ、と手を挙げてみせたのは咲都子だった。
「いい? モリケン?」
「もちろん。で……誰か? ってこと? なんのために? ってこと?」
「どっちでもない。あたしが気になるのは、三番目の『写真から読み取れること』って奴よ」
そうして咲都子は、ちゃぶ台の上に雑多に並べられた写真を掻き集めると、すばやくそろえた写真の一枚一枚をじっくりと、食い入るように見つめていった。
やがて、最後の一枚になり、ちゃぶ台の中心に置かれたひとかたまりの一番上に、そっ、とそれを載せた。
溜息をひとつ。
「この写真ってさ……? 一見すると、どれも同じようで、無作為に隠し撮りされたもののように見えるんだけどさ……? 違うんじゃないかな、って思えるんだよ、このあたしにはね」
「………………どういうことだ、それ?」
「気のせいかもしれない。でもね? これだけ、他のとは違うの。撮られたくて、見て欲しくって撮られてるのよ」
そこで咲都子は。
迷うことなく僕らに、一枚の写真を掲げてみせたのだった。
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