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第365話 考えうる中でも最悪の事態 at 1995/12/4
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また新しい週のはじまりだ。
我が『西町田中学校』の制服事情はさほど厳しくはなく、とっくに冬服のシーズンだが、あんなだっさいブレザーなんて着ない! という連中は、ワイシャツの上に紺色のⅤネックセーターなんぞを重ね着したりしている。割と評判が悪いのだ、ウチのブレザーは。
女子の足元事情は、黒で無地であり、華美なものでなければストッキングでもタイツでもいいらしい。華美なもの? どんなだよ? と疑問は湧くものの、要するにセンセイ方がお気に召すものであれば、ということなのだろう。
問題はもっと寒さが増してきた頃の話なのだけれど、上着を着るなら、学校指定の薄手の黄色いレインコート以外は禁止、というところが難点だろうか。コートがないので、必然的にブレザーとセーターとマフラーでなんとかしのぐしかない。もう、もっこもこなのである。
さて。
(しかし……アレは一体なんだ? なんだったんだ……?)
僕は、金曜の晩に水無月家で見た描きかけの絵のことが妙に気になっていた。
コトセの語るところによると、ツッキーパパ――笙さんがアレを描きはじめたのは、十月中旬だそうだ。だがしかし、毎回の『リトライ』ごとに、アレを描きはじめる時期が違うらしい。
(原則的に、過去の出来事、歴史は同じタイミングで繰り返されるはず。なのに、なぜ……?)
何か他の要因によって、着手する時期に変動が生じるのだろうか。もし仮にそうだとしたら、この世界においての変動要素は、僕とロコ、そして水無月さんだ。
(つまり――『リトライ者』の行動によって起こった現実乖離率の変化が変動要因、だな……)
それにしても――僕はさらに考えを巡らせる。
(『リトライ者』にだけ影響を及ぼす、っていうのが気になるな……ハカセは大丈夫だった)
正直に言って、あれほどの不快感と圧迫感、違和感を浴びせられても平気な顔をしていた、というハナシが信じられないくらいだった。僕はあの時、その重圧に耐えきれず、思わずその場で膝をつき、ひょっとしたら嘔吐してしまったかもしれない、そのくらいのものだった。
(となれば……あれも一種の『リトライアイテム』だってことなのか? そうすると――)
誰の所有物なのか、という疑問が生じてくる。
順当に考えたら、作者である水無月笙氏ということになるのだろうが、たった一度きりの印象とはいえ、僕にはどうしても笙さんが『リトライ者』だとは思えなかった。
なぜなら僕は、彼の目の前でスマホを取り出してみせたからだ。
僕は初対面の人間の前で、必ず一度はなんの脈絡もなくスマホを取り出してみせるというパフォーマンスじみた行動を続けている。これは、相手が『リトライ者』かどうか見極めるためだ。虚をついてイキナリ見たこともないシロモノを見せられれば、必ず相手はなんらかの反応をし、表情に出るはずだからである。
この『リトライ者テスト』ができるのは、『この世界に本来存在していてはいけないもの』である僕の『リトライアイテム』だけの特権でもあった。
(誰が? なんのために? あれは、どんなチカラを発揮する『リトライアイテム』なんだ?)
まだまだ僕らが知らないことは多いらしい。
ふと、溜息をもらした、そんな時だった。
「うっひゃあぁあああ! マジか、これぇえええ!」
「すすすすっげー! 超コーフンする!」
「おい! 俺にも見せろって! 押すなよ!」
唐突に廊下が騒がしくなる。男子生徒数人の興奮気味な叫び声にはじまり、それに惹かれるようにどんどん騒ぎが大きくなっていく。あっという間に大騒ぎになってしまったようだ。
「なんだろうね? 何かあったのかな? ねえ、ケンタ君?」
「……かもしれない。もしも僕の想像どおりなら……最悪のことが起こっちまったんだ……!」
僕は頼れる『電算論理研究部』の部員たちに合図を送り、騒動の中心へと駆けだすのだった。
我が『西町田中学校』の制服事情はさほど厳しくはなく、とっくに冬服のシーズンだが、あんなだっさいブレザーなんて着ない! という連中は、ワイシャツの上に紺色のⅤネックセーターなんぞを重ね着したりしている。割と評判が悪いのだ、ウチのブレザーは。
女子の足元事情は、黒で無地であり、華美なものでなければストッキングでもタイツでもいいらしい。華美なもの? どんなだよ? と疑問は湧くものの、要するにセンセイ方がお気に召すものであれば、ということなのだろう。
問題はもっと寒さが増してきた頃の話なのだけれど、上着を着るなら、学校指定の薄手の黄色いレインコート以外は禁止、というところが難点だろうか。コートがないので、必然的にブレザーとセーターとマフラーでなんとかしのぐしかない。もう、もっこもこなのである。
さて。
(しかし……アレは一体なんだ? なんだったんだ……?)
僕は、金曜の晩に水無月家で見た描きかけの絵のことが妙に気になっていた。
コトセの語るところによると、ツッキーパパ――笙さんがアレを描きはじめたのは、十月中旬だそうだ。だがしかし、毎回の『リトライ』ごとに、アレを描きはじめる時期が違うらしい。
(原則的に、過去の出来事、歴史は同じタイミングで繰り返されるはず。なのに、なぜ……?)
何か他の要因によって、着手する時期に変動が生じるのだろうか。もし仮にそうだとしたら、この世界においての変動要素は、僕とロコ、そして水無月さんだ。
(つまり――『リトライ者』の行動によって起こった現実乖離率の変化が変動要因、だな……)
それにしても――僕はさらに考えを巡らせる。
(『リトライ者』にだけ影響を及ぼす、っていうのが気になるな……ハカセは大丈夫だった)
正直に言って、あれほどの不快感と圧迫感、違和感を浴びせられても平気な顔をしていた、というハナシが信じられないくらいだった。僕はあの時、その重圧に耐えきれず、思わずその場で膝をつき、ひょっとしたら嘔吐してしまったかもしれない、そのくらいのものだった。
(となれば……あれも一種の『リトライアイテム』だってことなのか? そうすると――)
誰の所有物なのか、という疑問が生じてくる。
順当に考えたら、作者である水無月笙氏ということになるのだろうが、たった一度きりの印象とはいえ、僕にはどうしても笙さんが『リトライ者』だとは思えなかった。
なぜなら僕は、彼の目の前でスマホを取り出してみせたからだ。
僕は初対面の人間の前で、必ず一度はなんの脈絡もなくスマホを取り出してみせるというパフォーマンスじみた行動を続けている。これは、相手が『リトライ者』かどうか見極めるためだ。虚をついてイキナリ見たこともないシロモノを見せられれば、必ず相手はなんらかの反応をし、表情に出るはずだからである。
この『リトライ者テスト』ができるのは、『この世界に本来存在していてはいけないもの』である僕の『リトライアイテム』だけの特権でもあった。
(誰が? なんのために? あれは、どんなチカラを発揮する『リトライアイテム』なんだ?)
まだまだ僕らが知らないことは多いらしい。
ふと、溜息をもらした、そんな時だった。
「うっひゃあぁあああ! マジか、これぇえええ!」
「すすすすっげー! 超コーフンする!」
「おい! 俺にも見せろって! 押すなよ!」
唐突に廊下が騒がしくなる。男子生徒数人の興奮気味な叫び声にはじまり、それに惹かれるようにどんどん騒ぎが大きくなっていく。あっという間に大騒ぎになってしまったようだ。
「なんだろうね? 何かあったのかな? ねえ、ケンタ君?」
「……かもしれない。もしも僕の想像どおりなら……最悪のことが起こっちまったんだ……!」
僕は頼れる『電算論理研究部』の部員たちに合図を送り、騒動の中心へと駆けだすのだった。
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