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第369話 ぼくらの。 at 1995/12/11
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また、
「おはよう、スミちゃん」
「おはよう、ケンタ君!」
新しい週がはじまる。
もう二学期も残すところはあと二週間。特に学校行事もなく、期末試験も無事クリアした僕たちの頭にあるのは冬休みのこと。そして、正月。
そして何より――クリスマスのことだった。
「あー……。あ、あのさ、スミちゃん? き、昨日のハナシ、考えてくれた……かな?」
「えっ………………も、もちろん、だよ? で、でも、もうちょっとだけ……待って?」
はやる僕がさっそく尋ねてみると、純美子は真っ赤になってうつむき、太ももの上に置いた手でスカートのピンと立ったプリーツを、くしゃり、と握り締めながら、小さくつぶやいた。
僕は、昨日の純美子との喫茶店デートで――もちろんお店は行きつけの『珈琲舎ロッセ』だ――クリスマスの日の『二人っきりの』計画について話してみたのだった。
(今年は、父さんと母さんだけで田舎に顔出すから。どうせ行かないんでしょ、あんた?)
金曜の晩、お袋――僕の母さん、古ノ森文枝は、唐突に僕にそう言った。
(今年は向こうも忙しいみたいだからね。年の瀬の挨拶だけ済ませて、正月はウチで過ごすわ)
泰之おじさんに会える――それを楽しみにしていた僕にとっては肩透かしのひとことだったが、その分、この一年間限定の『リトライ』に全力を尽くせるという魅力も確かにあった。
どうにかして泰之おじさんの『運命』を変えたい、そのココロの奥に抱えていた悩みを知りたい。そしてできれば――と思っていたのは事実だ。だが、どうやっても変わらない『運命』もある。
とはいえ、知りたかった。
なぜ、『自死』という道を選んだのか。しまったのか。
どうして、僕を残して、先に行ってしまったのか――。
けれど、これもまたそうなるべくしてそうなった『運命』なのかもしれない。それに、それを知ることで、僕は今よりもっと『この先』に進むことに絶望してしまうのかもしれなかった。
その迷いを断ち切ったのは、ほかならぬ泰之おじさんからの一本の電話だ。
『……やあ。ひさしぶり。元気にしてたかい、健太』
『え……や、泰之おじさん!? ホントに泰之おじさんなの!?』
僕は、あやうく泣き出しそうなところを、ぐぐっ、とこらえて明るくこたえた。
『も、もちろん、元気だよ! そうそう! おじさんにもらったPCが、僕に仲間を作ってくれたんだ! 今さ、学校で「電算論理研究部」って新しい部活を作ってね。それでさ――?』
泰之おじさんは何も言わずに、興奮気味の僕のハナシをうんうんうなずきながら聞いていた。
そして、長い長いハナシのあと、最後にこう言ったのだ。
『やっぱり、僕の目に狂いはなかったな。きっと健太なら、僕よりもっとうまく使えるってね』
『泰之……おじさん……! 僕……僕……っ!』
『大丈夫。これも運命の中のひとつなんだ。そうなるべくしてなったことなんだ。健太はそれを乗り越えて先に進むんだ。迷っちゃダメだ。振り返っちゃダメだよ。気に病むことはないさ』
『で、でも……! おじさんは……!』
『……いいんだ。僕はね? いつでも健太のそばにいるよ。そこからいつも応援してるからね』
もしかすると――泰之おじさんは知っていたのかもしれない。
自らの、そう遠くない未来の『選択』を。
それでも、純粋に僕はうれしかったのだ。
再びココロを通じ合わせることができたことが。
(……やっぱり、会わずにおこう)
それで僕は、この『リトライ』を最高に幸せなものにするために、クリスマス・デートを計画したのだ。
映画を観て、ちょっとしゃれたレストランでディナーを食べて、それから――。
その時、すべてのシーンに欠かせない『主演女優』の純美子は、僕の耳元でこう囁いた。
(ケンタ君、あたし、行くことに決めた。パジャマとお着がえと歯ブラシ……持っていくね?)
「おはよう、スミちゃん」
「おはよう、ケンタ君!」
新しい週がはじまる。
もう二学期も残すところはあと二週間。特に学校行事もなく、期末試験も無事クリアした僕たちの頭にあるのは冬休みのこと。そして、正月。
そして何より――クリスマスのことだった。
「あー……。あ、あのさ、スミちゃん? き、昨日のハナシ、考えてくれた……かな?」
「えっ………………も、もちろん、だよ? で、でも、もうちょっとだけ……待って?」
はやる僕がさっそく尋ねてみると、純美子は真っ赤になってうつむき、太ももの上に置いた手でスカートのピンと立ったプリーツを、くしゃり、と握り締めながら、小さくつぶやいた。
僕は、昨日の純美子との喫茶店デートで――もちろんお店は行きつけの『珈琲舎ロッセ』だ――クリスマスの日の『二人っきりの』計画について話してみたのだった。
(今年は、父さんと母さんだけで田舎に顔出すから。どうせ行かないんでしょ、あんた?)
金曜の晩、お袋――僕の母さん、古ノ森文枝は、唐突に僕にそう言った。
(今年は向こうも忙しいみたいだからね。年の瀬の挨拶だけ済ませて、正月はウチで過ごすわ)
泰之おじさんに会える――それを楽しみにしていた僕にとっては肩透かしのひとことだったが、その分、この一年間限定の『リトライ』に全力を尽くせるという魅力も確かにあった。
どうにかして泰之おじさんの『運命』を変えたい、そのココロの奥に抱えていた悩みを知りたい。そしてできれば――と思っていたのは事実だ。だが、どうやっても変わらない『運命』もある。
とはいえ、知りたかった。
なぜ、『自死』という道を選んだのか。しまったのか。
どうして、僕を残して、先に行ってしまったのか――。
けれど、これもまたそうなるべくしてそうなった『運命』なのかもしれない。それに、それを知ることで、僕は今よりもっと『この先』に進むことに絶望してしまうのかもしれなかった。
その迷いを断ち切ったのは、ほかならぬ泰之おじさんからの一本の電話だ。
『……やあ。ひさしぶり。元気にしてたかい、健太』
『え……や、泰之おじさん!? ホントに泰之おじさんなの!?』
僕は、あやうく泣き出しそうなところを、ぐぐっ、とこらえて明るくこたえた。
『も、もちろん、元気だよ! そうそう! おじさんにもらったPCが、僕に仲間を作ってくれたんだ! 今さ、学校で「電算論理研究部」って新しい部活を作ってね。それでさ――?』
泰之おじさんは何も言わずに、興奮気味の僕のハナシをうんうんうなずきながら聞いていた。
そして、長い長いハナシのあと、最後にこう言ったのだ。
『やっぱり、僕の目に狂いはなかったな。きっと健太なら、僕よりもっとうまく使えるってね』
『泰之……おじさん……! 僕……僕……っ!』
『大丈夫。これも運命の中のひとつなんだ。そうなるべくしてなったことなんだ。健太はそれを乗り越えて先に進むんだ。迷っちゃダメだ。振り返っちゃダメだよ。気に病むことはないさ』
『で、でも……! おじさんは……!』
『……いいんだ。僕はね? いつでも健太のそばにいるよ。そこからいつも応援してるからね』
もしかすると――泰之おじさんは知っていたのかもしれない。
自らの、そう遠くない未来の『選択』を。
それでも、純粋に僕はうれしかったのだ。
再びココロを通じ合わせることができたことが。
(……やっぱり、会わずにおこう)
それで僕は、この『リトライ』を最高に幸せなものにするために、クリスマス・デートを計画したのだ。
映画を観て、ちょっとしゃれたレストランでディナーを食べて、それから――。
その時、すべてのシーンに欠かせない『主演女優』の純美子は、僕の耳元でこう囁いた。
(ケンタ君、あたし、行くことに決めた。パジャマとお着がえと歯ブラシ……持っていくね?)
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