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第404話 そんな理想なんて嘘 at 1995/12/23
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「で……このハナシを僕に聞かせて、スミちゃんはどうしたいんだい?」
ひとしきり純美子のハナシが終わった頃、僕は平坦な声でそう告げる。
「ケンタ君はどうしたいと思ってるの?」
「質問に質問で返すのはナシだよ、スミちゃん。僕は、スミちゃんの気持ちを知りたいんだ」
純美子はすぐにはこたえようとしなかった。僕のベッドの上で、隣で、ごろり、と寝返りをうって、天井をぼんやりと見つめている。
やがて、こうつぶやいた。
「そうだなぁ。一番の理想はケンタ君が、ロコちゃんのことなんてスキでもなんでもない、僕はスミちゃんだけが大スキだから、って言って笑って抱きしめてくれること、かな?」
「聞いてくれ、スミちゃん。僕はロコのことなんて――」
「でもね? そんなあたしの理想なんて、嘘なんだよ」
純美子は僕のセリフをさえぎって、やっぱり少しぼんやりとした顔つきでそう言った。
「ありえないことなの。だって、あたしはケンタ君のことなら、なんでもわかるんだもの。どうしてかって言われてもわからない。でもね? あたしはケンタ君がどう考えてるかわかるの」
「スミちゃん……」
「ケンタ君に意地悪してるつもりじゃないんだよ。だけど、自分のココロに嘘をついて欲しくはないの。誰かを『スキ』って気持ちは、いつだって特別だから。特別で大切な気持ちだから」
そこで純美子は、もう一度寝返りをうって、僕の顔を真正面からしっかりと見つめる。
「あたしの今の望みは、ケンタ君がロコちゃんに会いに行って、ロコちゃんの気持ちをちゃんと聞いてくることかな。そして……ケンタ君自身の気持ちも、正直にきちんと伝えてくること」
「そんな無茶な……だいたい、ロコは会ってもくれないよ」
「ううん。そんなことない、絶っ対に」
純美子はまるで我が事のようにきっぱりとした口調で言い放った。
「迷いが残っていて、想いが捨てきれなくて、だからロコちゃんはあたしに嘘をついたの。今夜は室生君とデートだから、って。ロコちゃんちね? 今夜はパパとママ、いないんだって」
「えっ……? 初耳なんだけど?」
「おでかけしていてロコちゃんだけお留守番なのはホントみたい。なんでも、急に親戚に不幸があったんだって。一緒に行くか、って聞かれたけれど、今夜はクリスマスイブだし……って」
もしかすると、親父とお袋であれば、出かける前に何か聞いていたのかもしれない。けれど、僕宛の伝言は何も残っていなかった。僕とは無関係のハナシだから、とでも思ったのだろう。
「ケンタ君は、どうしてロコちゃんは誰とも会わないクリスマスイブを選んだんだと思う?」
「……わからないよ。ムロの誘いもあったのに……」
「きっとね? 待ってるんだよ」
「……誰を?」
「ケンタ君を」
長すぎる沈黙。
「ケンタ君が来てくれるんじゃないかって、そう願ってるんだよ、きっと。あたしにはわかる」
「そんな馬鹿な――」
「ううん、馬鹿でもなんでもなくって、きっとそうなの。あたしなら……きっとそうするから」
「ど、どうして――!?」
「カンタンだよ、ケンタ君。それだけ『スキ』だからだよ」
僕は言うべき言葉を失った。
純美子の大きな瞳の中に、ちっぽけな僕が映っている。
ぱちり――瞬いたその瞳の中で僕はそっと身を起こしてベッドを抜け出していた。急いで着替えを探す――いや、ある物でいい。
「……ごめん。ちょっと行ってくる。そして確かめてくる……ホントに……ごめん」
ばたん――ドアが閉まり、少女はひとりになった。
そして、誰にともなくつぶやく。
「あーあ……。あたしって、ホントに呆れるほどお人好しなんだなぁ。…………っ」
ひとしきり純美子のハナシが終わった頃、僕は平坦な声でそう告げる。
「ケンタ君はどうしたいと思ってるの?」
「質問に質問で返すのはナシだよ、スミちゃん。僕は、スミちゃんの気持ちを知りたいんだ」
純美子はすぐにはこたえようとしなかった。僕のベッドの上で、隣で、ごろり、と寝返りをうって、天井をぼんやりと見つめている。
やがて、こうつぶやいた。
「そうだなぁ。一番の理想はケンタ君が、ロコちゃんのことなんてスキでもなんでもない、僕はスミちゃんだけが大スキだから、って言って笑って抱きしめてくれること、かな?」
「聞いてくれ、スミちゃん。僕はロコのことなんて――」
「でもね? そんなあたしの理想なんて、嘘なんだよ」
純美子は僕のセリフをさえぎって、やっぱり少しぼんやりとした顔つきでそう言った。
「ありえないことなの。だって、あたしはケンタ君のことなら、なんでもわかるんだもの。どうしてかって言われてもわからない。でもね? あたしはケンタ君がどう考えてるかわかるの」
「スミちゃん……」
「ケンタ君に意地悪してるつもりじゃないんだよ。だけど、自分のココロに嘘をついて欲しくはないの。誰かを『スキ』って気持ちは、いつだって特別だから。特別で大切な気持ちだから」
そこで純美子は、もう一度寝返りをうって、僕の顔を真正面からしっかりと見つめる。
「あたしの今の望みは、ケンタ君がロコちゃんに会いに行って、ロコちゃんの気持ちをちゃんと聞いてくることかな。そして……ケンタ君自身の気持ちも、正直にきちんと伝えてくること」
「そんな無茶な……だいたい、ロコは会ってもくれないよ」
「ううん。そんなことない、絶っ対に」
純美子はまるで我が事のようにきっぱりとした口調で言い放った。
「迷いが残っていて、想いが捨てきれなくて、だからロコちゃんはあたしに嘘をついたの。今夜は室生君とデートだから、って。ロコちゃんちね? 今夜はパパとママ、いないんだって」
「えっ……? 初耳なんだけど?」
「おでかけしていてロコちゃんだけお留守番なのはホントみたい。なんでも、急に親戚に不幸があったんだって。一緒に行くか、って聞かれたけれど、今夜はクリスマスイブだし……って」
もしかすると、親父とお袋であれば、出かける前に何か聞いていたのかもしれない。けれど、僕宛の伝言は何も残っていなかった。僕とは無関係のハナシだから、とでも思ったのだろう。
「ケンタ君は、どうしてロコちゃんは誰とも会わないクリスマスイブを選んだんだと思う?」
「……わからないよ。ムロの誘いもあったのに……」
「きっとね? 待ってるんだよ」
「……誰を?」
「ケンタ君を」
長すぎる沈黙。
「ケンタ君が来てくれるんじゃないかって、そう願ってるんだよ、きっと。あたしにはわかる」
「そんな馬鹿な――」
「ううん、馬鹿でもなんでもなくって、きっとそうなの。あたしなら……きっとそうするから」
「ど、どうして――!?」
「カンタンだよ、ケンタ君。それだけ『スキ』だからだよ」
僕は言うべき言葉を失った。
純美子の大きな瞳の中に、ちっぽけな僕が映っている。
ぱちり――瞬いたその瞳の中で僕はそっと身を起こしてベッドを抜け出していた。急いで着替えを探す――いや、ある物でいい。
「……ごめん。ちょっと行ってくる。そして確かめてくる……ホントに……ごめん」
ばたん――ドアが閉まり、少女はひとりになった。
そして、誰にともなくつぶやく。
「あーあ……。あたしって、ホントに呆れるほどお人好しなんだなぁ。…………っ」
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