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第493話 男たちのバンカー(4) at 1996/3/1
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「ちょ――ちょっと、ダッチ!? どうしてイキナリこんなことになってんのさ!」
「あー……つーか、ハナシの流れ、ってヤツだなー。それよかよ、選ぶの手伝ってくれって!」
僕と室生は思わず顔を見合わせて苦笑するよりない。
本人にそのつもりはまったくなのだろうけれど、結果的に小山田は、若い口上売りに即席の『サクラ』としてまんまと利用されてしまったってワケだ。その事実を聞かされたら怒りそうだが、これで勝負に勝てばいいワケだし、勝てなくってもホワイトデーのお返しは確保できる。
はじめてチョコをもらった子へのお返しが、鑑定書付きのアクセサリーだなんて重くない? とは思ったが、室生曰く『ま、いいんじゃん?』だそうだ。
思えば、小山田と横山さんの付き合いはもうじき三ヶ月が経とうとしていた。おおっぴらにデートこそしていないが、学校での様子や、部活の時のサポート――横山さんはサッカー部のマネージャーになったそうだ――を見る限り、順調にふたりの親密度は上がっていた。横山さんから好意を向けてくれているのだし、本気目のお返しでいいんじゃん? ということらしい。
「……うーん……いろいろありすぎて、逆に難しいね……」
「ぼ、僕はあんまくわしくないからなー。これとかってどう――ん? ダッチ?」
僕たちもプレゼント選びに参戦し頭を悩ませていたのだが――小山田の動きが止まっていた。
「………………俺様は決めたぜ。こいつは偶然じゃねえ、運命だった、そう思えてきたからな」
その手に握られていたのは。
一番最初に手に取った、四葉のクローバーをモチーフにしたペンダントヘッドのネックレス。
「……なるほどね。いいと思う、うん!」
「だね。かわいいし、似合いそうだし!」
正直に言って、他にもステキなモノは数多くあったが、中学生が身につけると考えたら背伸びを通り越して場違いすぎる印象があったのだ。あらためて三人肩を並べて小山田が選んだアクセサリーを覗き込み、満足げな笑みとともにうなずきあった。そして小山田は前を向く。
「よぉ、兄ちゃん! 俺様はこいつに決めたぜ! さあ、早速勝負しようじゃねえか!」
「ほぅ、やっぱり見る目があるねぇ。じゃあ、やりますか? ……さあさ、お立合い!」
――たたん!
まるで昭和のバナナの叩き売りのごとく、若い口上売りは手にしたメガホンで注目を集めた。
「本日最初のお客様であり、最初の挑戦者が現れましたよ! 勇敢な少年に、みなさん拍手!」
――ぱちぱちぱちぱち!
「さあ、ルールのおさらいだ! 少年、君が選んだそのネックレス、もしジャンケンで買ったら、同じモノをもうひとつプレゼントだ! た・だ・し、三本勝負の三戦全勝! いいな!?」
「三戦全勝……だと……!?」
てっきり一回でも勝ったら――そんな淡い幻想を抱いていた小山田はたちまち喰ってかかる。
「て、てめぇ! そんなこと言ってなかったじゃねえか! 後出しでルール追加しやがって!」
「まぁまぁ。そんなに怒りなさんなって。勝てばいいのさ、勝てば。だろ?」
「くっそ……! んなこと、言われるまでもねぇ!」
たしかに見込みが甘かった。だが、向こうも商売だ。タダで配り歩いているワケじゃない。そのくらいの難易度は妥当だという気もしてくる。それ以前に、小山田はやる気満々だった。
「最初はグー……いいな?」
「もちろんですとも、お客様。さてさて……参りましょうか! ショータイムです!」
――最初はグー!
ジャンケン――ポン!
どっ、と喝采が巻き起こる。
「あー……つーか、ハナシの流れ、ってヤツだなー。それよかよ、選ぶの手伝ってくれって!」
僕と室生は思わず顔を見合わせて苦笑するよりない。
本人にそのつもりはまったくなのだろうけれど、結果的に小山田は、若い口上売りに即席の『サクラ』としてまんまと利用されてしまったってワケだ。その事実を聞かされたら怒りそうだが、これで勝負に勝てばいいワケだし、勝てなくってもホワイトデーのお返しは確保できる。
はじめてチョコをもらった子へのお返しが、鑑定書付きのアクセサリーだなんて重くない? とは思ったが、室生曰く『ま、いいんじゃん?』だそうだ。
思えば、小山田と横山さんの付き合いはもうじき三ヶ月が経とうとしていた。おおっぴらにデートこそしていないが、学校での様子や、部活の時のサポート――横山さんはサッカー部のマネージャーになったそうだ――を見る限り、順調にふたりの親密度は上がっていた。横山さんから好意を向けてくれているのだし、本気目のお返しでいいんじゃん? ということらしい。
「……うーん……いろいろありすぎて、逆に難しいね……」
「ぼ、僕はあんまくわしくないからなー。これとかってどう――ん? ダッチ?」
僕たちもプレゼント選びに参戦し頭を悩ませていたのだが――小山田の動きが止まっていた。
「………………俺様は決めたぜ。こいつは偶然じゃねえ、運命だった、そう思えてきたからな」
その手に握られていたのは。
一番最初に手に取った、四葉のクローバーをモチーフにしたペンダントヘッドのネックレス。
「……なるほどね。いいと思う、うん!」
「だね。かわいいし、似合いそうだし!」
正直に言って、他にもステキなモノは数多くあったが、中学生が身につけると考えたら背伸びを通り越して場違いすぎる印象があったのだ。あらためて三人肩を並べて小山田が選んだアクセサリーを覗き込み、満足げな笑みとともにうなずきあった。そして小山田は前を向く。
「よぉ、兄ちゃん! 俺様はこいつに決めたぜ! さあ、早速勝負しようじゃねえか!」
「ほぅ、やっぱり見る目があるねぇ。じゃあ、やりますか? ……さあさ、お立合い!」
――たたん!
まるで昭和のバナナの叩き売りのごとく、若い口上売りは手にしたメガホンで注目を集めた。
「本日最初のお客様であり、最初の挑戦者が現れましたよ! 勇敢な少年に、みなさん拍手!」
――ぱちぱちぱちぱち!
「さあ、ルールのおさらいだ! 少年、君が選んだそのネックレス、もしジャンケンで買ったら、同じモノをもうひとつプレゼントだ! た・だ・し、三本勝負の三戦全勝! いいな!?」
「三戦全勝……だと……!?」
てっきり一回でも勝ったら――そんな淡い幻想を抱いていた小山田はたちまち喰ってかかる。
「て、てめぇ! そんなこと言ってなかったじゃねえか! 後出しでルール追加しやがって!」
「まぁまぁ。そんなに怒りなさんなって。勝てばいいのさ、勝てば。だろ?」
「くっそ……! んなこと、言われるまでもねぇ!」
たしかに見込みが甘かった。だが、向こうも商売だ。タダで配り歩いているワケじゃない。そのくらいの難易度は妥当だという気もしてくる。それ以前に、小山田はやる気満々だった。
「最初はグー……いいな?」
「もちろんですとも、お客様。さてさて……参りましょうか! ショータイムです!」
――最初はグー!
ジャンケン――ポン!
どっ、と喝采が巻き起こる。
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