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第499話 ラスト・ラストスパート at 1996/3/6
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「――という状況ですね。ですので、残りは……10パーセントといったところでしょうか」
「ありがとう、ハカセ。助かるよ。……というわけで――」
部室のホワイトボードの両脇に立った僕と五十嵐君が進捗状況の説明を終えると、部員たちの満足げな表情が見返してきた。いやいや、まだ終わってないから安心するのは早いぞ。
「これで、なんとか三学期中に、僕らの作ったプログラムの仕様書を完成させるめどは立った。けれど、ここで油断していると間に合わなくなっちゃうからね。気を引き締めていこう!」
とたんに、うげぇ、と嫌そうな顔をしてみせる部員たち。
でも、ここまで地道に続けてきた自信がもう彼らにはあるようだ。
なかでも、元々コンピュータ―だのプログラムだのとは疎遠だった佐倉君と咲都子の進歩にはめざましいものがあった。もちろん、自分で何かを作るなどという段階にはいまだ至っていなかったものの、少なくともその軽快なキーボードさばきには目をみはるモノがあった。
(ここでの経験が将来役に立つ、だなんて、ふたりとも思ってないんだろうなぁ)
今や、キーボードで文字を打てない、ともなれば、採用を見送る企業もある時代だ。
この頃にはまったく想像もしていなかったことが、未来では現実になる――。
ある意味、僕とロコの未来も似たようなものかもしれない。そうも思える。
(あんな未来が待ってるなんて、この頃僕らは考えもしてなかったんだよな……)
僕らの『リトライ』も、あと三週間もすれば、終わってしまう。
はたして、この一年間で僕らがしてきた行動が、未来になんらかの変化を起こすのだろうか。
ふと、胸元からスマホを取り出して、『DRR』アプリを立ち上げてみる。
――現在の現実乖離率:75パーセント。
ここ最近で、もっとも大きかった現実乖離率の変動は、ついこの前のマルカワ前での一件だった。ただし、あの時にも疑問に思ったように、元々過去になかったはずのイベントだったこともあってか、最大とは言ってもこれ一回での変動値はわずか4パーセントにすぎない。
だが、そうして少しずつ、わずかずつ積み上げてきた結果、今の75パーセントにまで到達してしまったのだった。不思議なことに例のふたりの『代行者』との出会いに関しては、まったく変動もしなければ、そもそもアプリの通知すら来なかった。どうにも仕組みがわからない。
(こんな時、時巫女がいてくれたらなぁ……。コトセ、お前、大丈夫なんだろうな……?)
なにげなくいつもの定位置の、窓際の文机の前に、ぺたん、と座っている水無月さんに視線を向ける――が、もちろん、そこにいるのはカノジョであってカノジョではなかった。
(こんなに高い数値でいいはずがない……でも、低ければ『未来』は何も変わらない……はず)
それについてアドバイスしたり、戒めたりするのは、決まってコトセだった。
(そして……僕とロコは、元の時間への戻り方を知らない……なあ、どうすりゃいいんだよ?)
僕の知りうる限り、『リトライ』の仕組みについて何か知っている可能性があるのはコトセだけなのだ。もちろん、ロコの言っていたとおり、コトセ自身もわかっていない可能性だってあるだろう。それでも、この世界に存在する他の誰よりも『リトライ』のことを知っている。
(やっぱり、直接乗り込んでいって、ツッキーパパと決着をつけた方がいいんだろうか……?)
決着、という言い方がはたして正しいのかどうかはわからない。僕が、僕とコトセが感じ取った『違和感』と、そののちにコトセが告げた『あの絵を完成させるな』という謎のメッセージだけが、僕がツッキーパパ――水無月笙氏を危険視して警戒している根拠なのだ。
「――ノ森リーダー? 古ノ森リーダー、聞こえてますか?」
「あ……ごめん。で……なんだっけ?」
「そろそろ学年末テストの勉強会もやらないと、ということです。なので、仕様書の残りは今週すべて完成させてしまいましょう。そうでないと、もう次の週になったら――春休みです」
「ありがとう、ハカセ。助かるよ。……というわけで――」
部室のホワイトボードの両脇に立った僕と五十嵐君が進捗状況の説明を終えると、部員たちの満足げな表情が見返してきた。いやいや、まだ終わってないから安心するのは早いぞ。
「これで、なんとか三学期中に、僕らの作ったプログラムの仕様書を完成させるめどは立った。けれど、ここで油断していると間に合わなくなっちゃうからね。気を引き締めていこう!」
とたんに、うげぇ、と嫌そうな顔をしてみせる部員たち。
でも、ここまで地道に続けてきた自信がもう彼らにはあるようだ。
なかでも、元々コンピュータ―だのプログラムだのとは疎遠だった佐倉君と咲都子の進歩にはめざましいものがあった。もちろん、自分で何かを作るなどという段階にはいまだ至っていなかったものの、少なくともその軽快なキーボードさばきには目をみはるモノがあった。
(ここでの経験が将来役に立つ、だなんて、ふたりとも思ってないんだろうなぁ)
今や、キーボードで文字を打てない、ともなれば、採用を見送る企業もある時代だ。
この頃にはまったく想像もしていなかったことが、未来では現実になる――。
ある意味、僕とロコの未来も似たようなものかもしれない。そうも思える。
(あんな未来が待ってるなんて、この頃僕らは考えもしてなかったんだよな……)
僕らの『リトライ』も、あと三週間もすれば、終わってしまう。
はたして、この一年間で僕らがしてきた行動が、未来になんらかの変化を起こすのだろうか。
ふと、胸元からスマホを取り出して、『DRR』アプリを立ち上げてみる。
――現在の現実乖離率:75パーセント。
ここ最近で、もっとも大きかった現実乖離率の変動は、ついこの前のマルカワ前での一件だった。ただし、あの時にも疑問に思ったように、元々過去になかったはずのイベントだったこともあってか、最大とは言ってもこれ一回での変動値はわずか4パーセントにすぎない。
だが、そうして少しずつ、わずかずつ積み上げてきた結果、今の75パーセントにまで到達してしまったのだった。不思議なことに例のふたりの『代行者』との出会いに関しては、まったく変動もしなければ、そもそもアプリの通知すら来なかった。どうにも仕組みがわからない。
(こんな時、時巫女がいてくれたらなぁ……。コトセ、お前、大丈夫なんだろうな……?)
なにげなくいつもの定位置の、窓際の文机の前に、ぺたん、と座っている水無月さんに視線を向ける――が、もちろん、そこにいるのはカノジョであってカノジョではなかった。
(こんなに高い数値でいいはずがない……でも、低ければ『未来』は何も変わらない……はず)
それについてアドバイスしたり、戒めたりするのは、決まってコトセだった。
(そして……僕とロコは、元の時間への戻り方を知らない……なあ、どうすりゃいいんだよ?)
僕の知りうる限り、『リトライ』の仕組みについて何か知っている可能性があるのはコトセだけなのだ。もちろん、ロコの言っていたとおり、コトセ自身もわかっていない可能性だってあるだろう。それでも、この世界に存在する他の誰よりも『リトライ』のことを知っている。
(やっぱり、直接乗り込んでいって、ツッキーパパと決着をつけた方がいいんだろうか……?)
決着、という言い方がはたして正しいのかどうかはわからない。僕が、僕とコトセが感じ取った『違和感』と、そののちにコトセが告げた『あの絵を完成させるな』という謎のメッセージだけが、僕がツッキーパパ――水無月笙氏を危険視して警戒している根拠なのだ。
「――ノ森リーダー? 古ノ森リーダー、聞こえてますか?」
「あ……ごめん。で……なんだっけ?」
「そろそろ学年末テストの勉強会もやらないと、ということです。なので、仕様書の残りは今週すべて完成させてしまいましょう。そうでないと、もう次の週になったら――春休みです」
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