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第501話 変えられない過去と at 1996/3/10
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「――どうしてそんなこと言うの!?」
――ばさばさっ。
人気のない閑散とした芹が谷公園に純美子の声はよく響き、驚いた野鳥が慌てて飛び去っていった。まだ木々の春遠く寒々しくて、葉や花の彩りもない。吹く風にも冷たさが残っていた。
「ど、どうしてって――」
僕は純美子の怒りにうろたえてばかりだ。
「せっかくここまでやってきたんだ。それに、小さな役ならもらえるようになったんだー、って喜んでたじゃない。だからさ……だから、もう養成所なんていかない、声優になんて――」
「なれなくたっていい!!」
し……ん、誰もいない公園に、純美子の悲痛な叫びが響いて消える。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
いや――。
ここにいる僕だけにしか聞こえない音だけが、しきりに鳴り響いていた。
(そうか……ここからはじまったんだよな……。そして……そういうワケなのか……)
僕は、ぐ、とこらえて、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「スミちゃんはね? 僕の大事な河東純美子って女の子は、きっとすごい声優になるんだよ」
純美子は――黙ったきり、僕の目をまっすぐに見つめている。思わず、その瞳に、あふれそうな涙に、続く言葉を飲み込んでしまいそうになる。
けれど――。
「だってさ? 僕が君を見つけたんだから。君の夢を見つけたんだから。だから、絶対に――」
「なんでそんなこと言うの!?」
ついに、純美子の目から涙があふれ、頬をゆっくりと滑り降りていく。
「スミ、ケンタ君と別れなさい、って言われたんだよ!? そうすれば、次のオーディションで主役が取れるからって! そんなの……そんなのズルいよ! 絶っ対におかしいよ……!!」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
ああ、そうだったんだな――。
「なら――僕たち、お別れしよう」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
畜生、結局僕は勝てなかったんだな――。
「大丈夫。僕はいつまででも君のことがスキだから。ずっと――そう、十年、二十年経っても」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
でも、勝てなくってもいい。これがきっと僕の大好きな人のためだから――。
「誰にも負けないくらい、とびっきりサイコーな声優になってよ。そしたらさ、誰も文句は言えないじゃん? 誰にも邪魔できないくらいのトップ声優になってさ。スミちゃんならできる」
――ぱしぃん!!
突然の衝撃に歯を食いしばり正面に顔を戻すと、徐々に小さくなっていく後ろ姿が見えた。僕はのろのろとポケットからスマホを取り出して、スクリーンに浮かんだ文字を眺める。
『今回の現実乖離率:0パーセント』
――ばさばさっ。
人気のない閑散とした芹が谷公園に純美子の声はよく響き、驚いた野鳥が慌てて飛び去っていった。まだ木々の春遠く寒々しくて、葉や花の彩りもない。吹く風にも冷たさが残っていた。
「ど、どうしてって――」
僕は純美子の怒りにうろたえてばかりだ。
「せっかくここまでやってきたんだ。それに、小さな役ならもらえるようになったんだー、って喜んでたじゃない。だからさ……だから、もう養成所なんていかない、声優になんて――」
「なれなくたっていい!!」
し……ん、誰もいない公園に、純美子の悲痛な叫びが響いて消える。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
いや――。
ここにいる僕だけにしか聞こえない音だけが、しきりに鳴り響いていた。
(そうか……ここからはじまったんだよな……。そして……そういうワケなのか……)
僕は、ぐ、とこらえて、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「スミちゃんはね? 僕の大事な河東純美子って女の子は、きっとすごい声優になるんだよ」
純美子は――黙ったきり、僕の目をまっすぐに見つめている。思わず、その瞳に、あふれそうな涙に、続く言葉を飲み込んでしまいそうになる。
けれど――。
「だってさ? 僕が君を見つけたんだから。君の夢を見つけたんだから。だから、絶対に――」
「なんでそんなこと言うの!?」
ついに、純美子の目から涙があふれ、頬をゆっくりと滑り降りていく。
「スミ、ケンタ君と別れなさい、って言われたんだよ!? そうすれば、次のオーディションで主役が取れるからって! そんなの……そんなのズルいよ! 絶っ対におかしいよ……!!」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
ああ、そうだったんだな――。
「なら――僕たち、お別れしよう」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
畜生、結局僕は勝てなかったんだな――。
「大丈夫。僕はいつまででも君のことがスキだから。ずっと――そう、十年、二十年経っても」
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
でも、勝てなくってもいい。これがきっと僕の大好きな人のためだから――。
「誰にも負けないくらい、とびっきりサイコーな声優になってよ。そしたらさ、誰も文句は言えないじゃん? 誰にも邪魔できないくらいのトップ声優になってさ。スミちゃんならできる」
――ぱしぃん!!
突然の衝撃に歯を食いしばり正面に顔を戻すと、徐々に小さくなっていく後ろ姿が見えた。僕はのろのろとポケットからスマホを取り出して、スクリーンに浮かんだ文字を眺める。
『今回の現実乖離率:0パーセント』
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