ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第503話 カノジョが願ったのは at 1996/3/15

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「わかる理由、教えてあげる。それはあたしの『リトライアイテム』が教えてくれるからよ!」


 僕は、ぽとり、と落ちてきたロコの髪飾りを受け止めながら、しばし茫然としていた。


 この、ロコの『リトライアイテム』の持つチカラは――。
 目の前の相手から自分に向けられている好感度を知らせるモノ、そうじゃなかったのか!?


 僕はのろのろと視線を上げ――顔をくしゃくしゃにして泣き、そして怒っているロコの鋭いまなざしから逃げたくって、ふ、と目をそらす。そうしてから小さくつぶやいた。


「ロ――ロコの『リトライアイテム』の効果って、相手がどれだけスキなのか、知ることができる、そういうヤツなんだろ? 便利だよな。でも、そんなのロコには必要ないなって思った」

「……っ」

「だってさ? なんたってロコは、この学校トップの人気を誇る美少女だもんな。誰にでも好かれるし、実際いいヤツだし。こんな馬鹿でどうしようもない僕にだって優しくできるヤツだ」


 そう口にしながら手の中にある青白い髪飾りを見つめると、見る間に輝きが増してくる。やっぱりそうだ。そうなんだ。





 僕はまだロコがスキだ。





 そして、どうしようもない僕は、ロコなら僕を助けてくれる、優しく抱きしめてくれる――そんなどうしようもなく甘ったるくて腐りきった考えにすがろうとしてるんだ。もしかしたら、僕からそう切り出せば、優しくて優しすぎるロコなら、もう一度僕を選んでくれるのかもしれない――しまいには、そんな思わず吐き気を催すサイテー最悪な考えまで浮かぼうとしていた。


 が――。
 ロコは僕の手の中から青白い蝶の髪飾りをひったくると、右手でしっかりと握り締めて叫んだ。


「よく見なさい。これがあたしの『リトライアイテム』の持つ本当のチカラよ――!」


 すると、さっきまで輝いていた青白い蝶は輝きを失い、見る間に淀んだ水の底のような昏い色を放ちはじめた。い――嫌だ! 違う、僕はそんなこと――! そう叫ぶ前にロコが言った。


「あたし、こう言ったの覚えてる? ココロも透明で、透けて見えちゃえばいいのにな、って」


 そうだった。夏の合宿、ふたりきりの忍野八海でロコはたしかにそう言った。

 でも。
 だったら――?


「だけど、ケンタが言ったのは大間違い」


 そう吐き捨てるようにつぶやいたロコの表情は、けわしく歪んでいた。


「『リトライアイテム』には、持ち主の想いが宿る――忘れちゃったの? あたしはみんなのココロが知りたいなんて、ただの一度も願ったことなんてない。あたしが願ったこと……どうしてもやり直したかったことは、自分のココロに素直になること。自分の気持ちを正直に伝えることだったの。あたしがどうしても言えなかった、伝えられなかった想い……それが、これ」


 ということは――つまり。
 はっ、と気づいたが、もうとっくに手遅れだった。


「……でもね? 今のあんたはサイテー。そんなヤツのことなんて、もうスキじゃない。大っ嫌いよ。なにが『スミのため』? 言ったよね? あたしとスミの間で交わした『秘密の約束』。あたしは勝てなかった。でもスミは勝ったの! だったら、あんたたちふたりは絶っ対に幸せになってくれなかったら困るから! じゃなかったら、あたしが……負けたあたしが馬鹿みたいじゃん!」


 ロコは僕を殴る。
 何度も、何度も。


「困るんだよ! 何日も泣いて泣いて、泣きわめいてようやくあんたのことあきらめたのに! なのにカンタンに別れられたら、あたしただのピエロじゃない! なにが『スミの未来』よ。自分だけ我慢すれば全部うまくいく、なんて平気な顔しちゃって! ケンタなんて大嫌いだ!」





 そして――ついにロコは、こう叫んだのだった。





「これじゃ、なんのためにあたしが必死に願って『リトライ』したのかわからないじゃない!」


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