ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
514 / 539

第512話 雨月の午前二時 at 1996/3/17

しおりを挟む
「やい、世話好き美少女ゴリラ女――」

『あら、口がお悪くてよ、意気地なしで逃げグセのある張り子のヒーロー(笑)カッコワライさん?』


 思わず僕はコードレスフォンの受話器ごしに、にやりと、した笑みを浮かべてしまっていた。いかんいかん――としかめっ面を何度も繰り返し、なんとか平常心を取り戻すことに成功する。

 僕は少し迷ったが――ええい、いまさらだろ――素直にありのままを報告した。


「純美子と――スミちゃんと仲直りした。ついでに、ホワイトデーのやり直しもしてきて――」

『あーあー! そのへんのおノロケ話ならどこかよそでやって。……よかったじゃん、ケンタ』

「ああ、ありがとな。ホント、ロコには……感謝してるよ」

『そうよ? すっごく、すっっっごく感謝しなさいよね!』


 くす、と受話器の向こう側からロコの忍び笑いが漏れ聞こえた。

 ま、これでとりあえず当初の目的は達成できた。
 いよいよ本題に入るとしよう。


「感謝ついでにもうひとつ言っておくよ、ロコ。僕は……明日、ダメなら明後日……とにかく捕まえられる限り一番早いタイミングで、ツッキーパパ――水無月しょう氏に会いに行くつもりだ」

『「例の絵」について、ね――』


 受話器を持ち換えたのか、ロコのセリフの続きまではしばらく間が空いた。
 再び話しはじめたロコの声は、いくぶん抑えられ、ひそめられていた。


『――これだけは約束してくれない? ツッキーパパは、絶っ対悪い人じゃないと思うの。だって――だってさ? ツッキーのお父さんなんだよ? あんなに仲が良くて、カラダのことだってもちろん誰よりも心配してるのに。ママがいなくなってからもずっとひとりで頑張ってさ』

「わ、わかってるよ、ロコ」


 徐々に湿り気を帯びはじめたロコの声に慌てながら、僕は慰めるように受話器に話しかけた。


「僕だって、笙さんが悪い人だなんて思えないよ。思えないからこそ、直接会ってハナシをしたいんだ。そして、コトセの伝言どおり『例の絵』を完成させないように頼んでみるつもりだ」

『……あたしも行こうか?』


 僕は、ロコなら当然そう言い出すだろうと予想していた。

 けれど、それにどうこたえていいのか、どうこたえるべきか、ずっと決めあぐねていたのだ。僕は一度目を閉じ、それから開くとこう告げた。


「僕ひとりで行く。万が一のことを考えたら、ロコまで巻きこむワケにはいかない」

『ちょっと!? 巻きこむワケもなにも――!』

「わかってる、わかってるさ。落ち着け」


 受話器ごしでもかなりの大音量の抗議の声が静まり返ったキッチンに響き渡った。僕は眉をしかめて一度手のひらでフタをしてしまうと、静かになった頃を見計らってこう付け足した。


「あたしだって当事者なんだから、って言いたいんだろ? でもさ、コトセの例もある。彼に悪意がなくたって、今はそういうことが起こりうる状態ってことなんじゃないか? だったら用心しなきゃ。ここで、このタイミングで『リトライ者』が三人とも捕まるワケにはいかない」

『で、でも……っ!』

「大丈夫、大丈夫だって。僕はケンカなんてできないし、痛いのも痛くするのもキライなんだ」

『はぁ!? べ、別にっ! ケンタの心配なんてしてないしっ!』

「あー、はいはい。そうですよねー。……じゃ、そういうワケだから」

『ちょ――ちょっと!!』


 もう、なんだよ、ツンデレ四〇女。

 さすがにそろそろ親父かお袋が騒がしくて起きてきかねない。
 僕は焦りながらも受話器を持ち直した。


『……約束しなさいよね?』

「はぁ? 何をだよ?」

『一緒に帰るってこと。あの時、あの時間に。絶対に絶っ対だからね?』



 僕は迷うことなくうなずいた。
 そして言う。



「当たり前だろ? そうじゃなきゃ、なんのための『リトライ』なのかわからないからな――」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...