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第525話 ホワイト・サイレント・ナイト・アゲイン at 1996/3/30
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『ターゲットからの通信を受け取ったメンバー、おりましたらハカセまで報告願います――』
夕方から降りはじめた雪はわずかずつながら積もりゆき、作戦参加メンバーの足元からじくじくと冷気が這い上る。とても初春とは思えない天候の変化に行き交う人々もとまどっていた。
と――。
『……ア、アルファおよびブラボーより受信報告ありました! 早急に位置割り出します――』
らしくもなく声のトーンをはね上げたハカセの声。次々と入れ替わり立ち代わり、メンバーたちも喜びの声をあげる。しかし、僕は不思議なほど平静で、落ち着き払っていた。
(すべては計算どおり、ってことなのか……)
今ごろ五十嵐君は、アルファ――小山田機とブラボー――室生機の配置から二〇〇メートル円を地図上にそれぞれ書き込み、重なる部分に限定してめぼしい建物をピックアップしているはずだ。どちらからも受信できたのなら、水無月さんは重複するエリアにいるはずである。
『ジジッ……ここは……? 鹿島神社……あ、あれ? どうして未捜索だったのでしょうか?』
――そういう……ことか!
五十嵐君の狼狽したような声音で、ようやく僕も、あっ、と思い出したくらいだ。いや――きっと、何者かに『意図的に』存在を隠されていた、と考えるべきなのかもしれない。ロコも今頃同じような思いを胸に、何かに突き動かされるように走り出しているに違いなかった。
「こちら、モリケン。こちら、モリケン。ツッキーは鹿島神社だ。間違いない!」
『ジジッ……こちら、ロコ。あたしもそう思う! 急いでそっちに向かうわ!』
「馬鹿! おい、ロコ! 雪が降ってるんだぞ! ヤツが……アイツは来るはずだ! おい!」
何度も呼びかけるが――おそらくロコはスイッチを切ってしまったのだろう。応答がない。
「頼む! 誰かロコを守ってくれ! アイツが来るんだ……大月大輔が! 誰か頼む――!」
『ジジッ……こちら、ブラボー。まかせて』
『ジジッ……こ、こちら、デルタ。行きます!』
即座に応答が返る。
ブラボーは室生だったけれど、デルタって……でも、今の声はたしか――?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
走る――。
(そうだよ! あの場所からはじまったんだもん! どうして気づかなかったんだろう!?)
徐々にイキオイを増してくる雪を避けるように顔の前に左腕をかざして、広子は走る。
(きっと……! きっと、ケンタもここに来るはず! 急がなくちゃ……!!)
きゅっ、とスニーカーの底を思いきり踏み込んで、カーブを曲がった瞬間だった。
――ざん!
「ああ……! やっと会えたね……!! 僕の大事な人……誰よりも愛しいヒロコ……!!」
薄い笑みを貼りつけた、薄紫色で血の気の感じられない唇が平坦に告げる。忘れもしないその優しくて優しすぎる微笑み。白く、何もかもが白い、穢れのない無邪気なまでの邪悪の象徴。
「あ……あああ……! やめて……もうやめて……! あたしに……あたしに近付かないで!」
広子のココロはたちまちあの頃に戻っていた。
ありとあらゆる恐怖が蘇り、カラダの自由が利かなくなる。もう逆らことも、逃げ出すこともできない。彼の言葉の鎖が縛り付けていく。
もう――終わりなんだ、ここで――その瞬間。
「……安心して、ロコ。君を守る王子様ならここにいる。僕はもう、二度と誰にも負けない!」
夕方から降りはじめた雪はわずかずつながら積もりゆき、作戦参加メンバーの足元からじくじくと冷気が這い上る。とても初春とは思えない天候の変化に行き交う人々もとまどっていた。
と――。
『……ア、アルファおよびブラボーより受信報告ありました! 早急に位置割り出します――』
らしくもなく声のトーンをはね上げたハカセの声。次々と入れ替わり立ち代わり、メンバーたちも喜びの声をあげる。しかし、僕は不思議なほど平静で、落ち着き払っていた。
(すべては計算どおり、ってことなのか……)
今ごろ五十嵐君は、アルファ――小山田機とブラボー――室生機の配置から二〇〇メートル円を地図上にそれぞれ書き込み、重なる部分に限定してめぼしい建物をピックアップしているはずだ。どちらからも受信できたのなら、水無月さんは重複するエリアにいるはずである。
『ジジッ……ここは……? 鹿島神社……あ、あれ? どうして未捜索だったのでしょうか?』
――そういう……ことか!
五十嵐君の狼狽したような声音で、ようやく僕も、あっ、と思い出したくらいだ。いや――きっと、何者かに『意図的に』存在を隠されていた、と考えるべきなのかもしれない。ロコも今頃同じような思いを胸に、何かに突き動かされるように走り出しているに違いなかった。
「こちら、モリケン。こちら、モリケン。ツッキーは鹿島神社だ。間違いない!」
『ジジッ……こちら、ロコ。あたしもそう思う! 急いでそっちに向かうわ!』
「馬鹿! おい、ロコ! 雪が降ってるんだぞ! ヤツが……アイツは来るはずだ! おい!」
何度も呼びかけるが――おそらくロコはスイッチを切ってしまったのだろう。応答がない。
「頼む! 誰かロコを守ってくれ! アイツが来るんだ……大月大輔が! 誰か頼む――!」
『ジジッ……こちら、ブラボー。まかせて』
『ジジッ……こ、こちら、デルタ。行きます!』
即座に応答が返る。
ブラボーは室生だったけれど、デルタって……でも、今の声はたしか――?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
走る――。
(そうだよ! あの場所からはじまったんだもん! どうして気づかなかったんだろう!?)
徐々にイキオイを増してくる雪を避けるように顔の前に左腕をかざして、広子は走る。
(きっと……! きっと、ケンタもここに来るはず! 急がなくちゃ……!!)
きゅっ、とスニーカーの底を思いきり踏み込んで、カーブを曲がった瞬間だった。
――ざん!
「ああ……! やっと会えたね……!! 僕の大事な人……誰よりも愛しいヒロコ……!!」
薄い笑みを貼りつけた、薄紫色で血の気の感じられない唇が平坦に告げる。忘れもしないその優しくて優しすぎる微笑み。白く、何もかもが白い、穢れのない無邪気なまでの邪悪の象徴。
「あ……あああ……! やめて……もうやめて……! あたしに……あたしに近付かないで!」
広子のココロはたちまちあの頃に戻っていた。
ありとあらゆる恐怖が蘇り、カラダの自由が利かなくなる。もう逆らことも、逃げ出すこともできない。彼の言葉の鎖が縛り付けていく。
もう――終わりなんだ、ここで――その瞬間。
「……安心して、ロコ。君を守る王子様ならここにいる。僕はもう、二度と誰にも負けない!」
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