警察の罪

shin

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嘘の自白、そして逮捕

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警察の横暴な取り調べを受けた翌日、母は体が丈夫ではないにもかかわらず、私のために早く起きて朝食を作ってくれました。

「大丈夫。」

母はそう言ってくれました。母に感謝しました。私が出頭する前、今日の晩ご飯は何が食べたいかと尋ねられたので、好物のカレーが食べたいと告げ、そして警察署へと向かいました。


しかし私はその日、家に帰ってカレーを食べることは出来ませんでした。逮捕されてしまったのです。




警察署に到着した私は再び、取り調べ室へ連れてこられました。そして昨日と同じやりとりを繰り返します。

取り調べ官のKとZは

「器物損壊は損害を弁償したら不起訴だぞ。」

「素直に自白した方が心証は良くなるぞ。」

このように私に優しく話すこともあれば

「器物損壊が立件できなくてもストーカー規制法で逮捕してやるからな!」

「被害者家族に、お前は全く反省してませんって伝えておく!お前はめでたく前科持ちだ!」

「お前が犯人だという証拠は揃ってるんだからな!」

などと激しく怒鳴ることもありました。
まさしく飴と鞭を使い分けるような、そのような話し方でした。

こうした取り調べはただの虚仮威こけおどしである、と全てが終わった後になって思います。
しかし当時の私は、突然の連行や差し押さえといったストレスによって何も考えることができませんでした。

やがて私の頭の中は

「潔白を証明したい」

という考え方から

「早く解放されたい、楽になりたい」

という考え方へと変化していきました。


そして私は大きな過ちを犯したのです。


自分がやった、と認める供述をしてしまいました。KとZのしてやったりという顔は今でも忘れることはできません。

それからはただ、警察が私を犯人に仕立て上げるために用意したストーリーに沿って供述調書という名の作文を作成し読み聞かされた後、そこに指印と署名をするという作業になりました。

警察の用意したストーリーによると、私はS氏のストーカーであり、退職後に、関係を持ちたいのに連絡してこないS氏に逆上した私が夜勤中に仕事を抜け出し、職場に保管されていた有機溶剤を車にかけた、ということになっていました。

警察の望む通りの供述をした私はKに尋ねます。

「私はこれからどうなるのですか?」

「ちゃんと供述もしているし、今日は普通に帰ったらいいじゃないか。」

Kは答えます。しかしそれはKの嘘でした。一つ目の調書の作成を終えようとしていた頃、別の刑事がやってきて私に一枚の紙を見せます。


逮捕令状でした。


「お前に逮捕状が発行された。今から器物損壊被疑で執行する。16時45分、逮捕。」

そう言って手錠を取り出しました。私は手首を出すよう指示され手錠をされました。さらに逃亡を防ぐため、縄を巻きつけられました。縄を椅子に結びつけほぼ身動きが取れない状態になりました。取り調べの最中は縄で拘束されているものの手錠は外されました。

ストレスで思考が追いついていない私は現実を直視することができませんでした。辛うじて、以前お世話になったことのある弁護士へ連絡をお願いすることはできました。

逮捕の瞬間、家族や友人、交際女性のことなどが頭をよぎりました。

「みんなにどう言えばいいのだろう。」

ぼんやりとした頭でそんなことを考えていました。

逮捕後、指紋採取やDNA採取、実況見分などが行われました。

カレーを作り私の帰宅を待つ母や私からの連絡を待っている恋人がどんな気持ちでその日を過ごしていたのか考えると、横暴な取り調べを行う警察に対し、また、嘘の自白をした自分の弱さに対し、ひたすらに腹立たしい気持ちになっていました。

後悔、腹立たしさ、不安

こうした感情が何度も自分の頭の中でグルグルしていました。
19時ごろ、留置所がある別の警察署へと移送されました。
これからおよそ10日間、留置所の中で生活しなければならなくなったのです。
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tae1480yui@gmail.com

続きも読みたいので書いてくださいね。

解除

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