警察の罪

shin

文字の大きさ
2 / 3
2

事情聴取

しおりを挟む
任意同行

任意同行とは、警察等の捜査機関が、犯罪の疑いがある人に対して、取り調べることを目的として、警察署に出頭させること、または警察官が同行すること



S署に連れて行かれた私はまず

「今の私はどういう立場なのですか?」

と質問しました。するとKの部下であるZ巡査部長が

「これは任意同行や。」

と答えたのです。それを聞いた私は任意のはずなのに強制的に連行されたことに疑問を抱きました。帰りたいと告げるもその願いは無視されたのです。

取り調べの最初にKが私に一枚の紙を渡しました。それはポリグラフ検査に応じることの同意することへの署名を求める用紙でした。


ポリグラフ検査

一般的には聞き慣れない検査です。嘘発見機、というと想像しやすいでしょうか。

捜査機関が用いているポリグラフ検査は、両手足首に機械をつけ、質問に答えた時の呼吸状態、心拍数、皮膚電気活動を測定し反応を見るというものでした。

同意書に署名しました。
装置をつけられた私に対し、事件にかかわる質問をされる前にまずテストが行われました。

検査官が

「私たちが顔をうつ伏せている間に目の前に置かれた紙に3~7の数字を一つ選んで記入し、見えないように横に置いてある箱に入れてください。」

と私に指示しました。

私は、7を書き箱の中に入れました。

「あなたが書いたのは3ですか?」

「あなたが書いたのは4ですか?」

こうした質問が何度も繰り返されすべて「いいえ。」と答えるのです。

テストの結果、自分が書いた数字は見事に当てられました。

その後、事件にかかわる質問を検査官がしてきます。

「あなたはS氏の車を一度傷つけましたか?」

「いいえ。」

「あなたはS氏の車を二度傷つけましたか?」

「いいえ。」

「あなたはS氏の車を三度傷つけましたか?」

その時です。曇りガラスになっている覗き窓からこちらを見ている刑事が大きな声で

「あいつの逮捕状はでたか?」

と私に聞こえるように同僚に話したのです。という言葉を聞いた私の心臓がドキッとするのがわかりました。「いいえ。」と答える私の声が詰まるのも無理はありません。その後は心拍数が早くなり、呼吸も荒くなったように思います。

検査を終えると再び取り調べ室に戻されました。Kは検査の結果を私に教えました。

「ドンピシャだったな~。」

と言われました。


ここから事情聴取が始まりました。

事件があったのは半年前の中旬だと警察は話します。半年前のある特定の一日のことを詳細に覚えている、と言う人がこの世にどれほどいるでしょうか。
少なくとも私はそこまで記憶力が良くありません。

Kは私に向かって

「○月○日の午前2時!どこで何をしてたんだ!」

と怒鳴るように問い詰めます。

「覚えていません。」

と答えます。

私が勤務していた職場はシフト制で固定の休みというものはありません。また二交代制の仕事で日勤と夜勤という勤務があり、決まった曜日に決まった時間を勤務する、という働き方ではありませんでした。
その日が仕事だったか、休みだったか、仕事だとしたら日勤だったか夜勤だったか、など全く覚えていませんでした。

「自分が犯罪したことも覚えてないのか!思い出せ!」

とKは怒鳴ります。

私が思い出すためにKの視線から目を逸らし考えていると、突然Kがバンッ!!と机を叩き

「俺の目を見ろ!なめとんか!自分のしたことを反省しないやつはいずれ人殺しもするぞ!」

と激しく責め立ててきました。


取り調べ中の暴言、恫喝は実際は違法です。

「特別公務員暴行陵虐罪」(刑法第195条1項)という犯罪行為なのです。

今の警察の取り調べはこうした言動が常態化しているのです。取り調べ室の可視化が義務付けられているはずですが、その実施は現状まったく進んでいないのです。

「本当に覚えていません。スマホの中にスケジュール帳を入れてあるので確認してください。」

と私は答えました。

「そんなものは信用できんだろ!答えられないのはやましいことしてるからなんだろ!」

とKの隣にいたZが怒鳴りつけてきます。


しかし警察は職場に当日の私の勤務を確認していたらしく、事件のあった日は夜勤であることがわかりました。
不運なことに、夜勤は1人での勤務のためアリバイの証明ができません。とはいえ、仕事を放り出してその場を離れることなど、もっとできません。
しかし、警察は私が夜勤中に抜け出し、職場の車で被害者宅に行き、車に剥離剤をかけた、と言うのです。

さらに私にとって不利な事実があります。私の両親は別居しており、父が被害者S氏宅から徒歩10分圏内の家で生活しています。私は、父の飼っている犬の散歩によく行っていました。確かにS氏の家の近くを通ることはありましたが、家の前まで行ったことは一度もありません。

警察は私が犬の散歩を名目に、今回の犯行の下調べをしていたのではないかと問い詰めてきたのです。

夜勤と犬の散歩のどちらも、アリバイを証明することはできず、ただただ怒鳴られ続けることしかできませんでした。

そのようなが、朝の8時から夕方の5時にまでかけて行われました。終わるまで帰ることも許されず、自分の人格を否定されるような言葉を聞かされ続け、私の自尊心は打ち砕かれました。


5時ごろ、私は任意同行(ほぼ強制連行)の際に乗ってきたミニバンに乗せられ、住んでいるアパートではなく母の住む実家へと連れてこられました。そこでもやはり捜索差し押さえ令状を見せられ実家の部屋全て、倉庫や棚を物色し始めました。

探しているのは恐らく、犯行の際に使われた剥離剤のことだとわかりました。

「明日の10時からまた取り調べするから出頭しろ。」

Kは私にそう告げます。

実家にいた母に事情が説明され、母に身元引き受け人となる用紙に署名をするよう求めました。


警察が帰った後、私は母に事情を説明します。ありがたいことに母は私のことを信じる、と言ってくれました。その言葉に少し安心感を覚えましたが、すでに私の心は壊れかけていました。

その夜は何もする気が起きず、母にアパートへ連れて行ってもらい必要な荷物だけを取り出して、実家で休むことにしました。


明日が、私や家族とって悲劇の日となることはまだ知る由もありませんでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...