私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第八章 7)アリューシアの章

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 「生き物を殺したのは初めてだわ。勝手に動いて、勝手に鳴いて、切ったら血が出る物をね」

 自分がとてつもなく興奮しているのを、アリューシアは自覚している。そんな自分を、隣にいるシャグランが怯えたように見つめていることもわかっている。

 「もっと殺したい」

 しかしアリューシアは言い放つ。「もっともっと!」

 「な、何を言っているんだ、アリューシア」

 (ついに念願が叶った場所。魔族との契約を果たした地。今、そこには狼たちの死体と血液だけしか残っていない。いずれ、死体は腐って消えてしまうし、血は雨ですぐに流れていく。私の人生の記念の場所なのに、それがどこなのかわからなくなってしまう)

 出来ることならば、ここに、記念碑を建てたいわ! 

 「ボーアホーブ領から帰ったら、この塔の狼駆除係りになってもいいわ。プラーヌス様も喜ぶでしょ?」

 こんなにも命というのは柔なものだったのか。宝石を一つ弾いただけで、狼たちは憐れな鳴き声を上げ、死んでいった。何という弱い弱しい生き物たち。

 (いいえ、違う。私の魔法が凄いんだ。十数匹の狼たちを一瞬で殺せる力)

 狼に囲まれて、震えていた幼いときの自分を、アリューシアは思い出す。今、あのときの自分を救い出した気がする。

 「でも、これからギャラックの連中を殺しまくりに行くから、帰ってきたあとの私は、狼殺しじゃ満足出来なくなっているかもね」

 シャグランは彼女に命を救われたくせに、感謝するどころか、非難するような視線で見つめてくる。それが気に入らなくて、アリューシアは多弁になる。しかし話せば話すほど、彼は遠くに離れていくようだ。

 「何よ! シャグランのくせに!」

 アリューシアは吐き捨てるように言う。「文句があれば、はっきり言えばいいでしょ!」

 シャグランは、生まれ変わったアリューシアを怖がっている。恐れ戦いているのだ。
 彼はプラーヌス様に寵愛を受けていることは事実で、この塔でも地位は高い。これまで、アリューシアのことを自分よりも下の存在だと思っていたのだろう。
 しかし魔法の課題をクリアーして、プラーヌス様の一番弟子になったアリューシアは、彼を脅かす存在に成り上がった。

 (それに対する嫉妬ね)

 「驚いているだけさ。君に救われた。感謝している」

 「そう? 最初からそう言えばいいのよ」

 「ああ、うん、そうだね」

 しかし何かまだ、文句を言いたそうにしている。
 アリューシアはまだまだ苛々した気分が収まらなくて、シャグランに口喧嘩を仕掛けてやろうかと思ったが、塔の正面の扉の前に多くの人が集まっているのが見えてきて、そちらに注意を奪われた。
 サンチーヌやラダ、リーズ、彼女が連れてきた執事や侍女たちがいる。彼らだけじゃない。カルファル、シュショテの姿も見える。

 「ああ、そうさ。皆で君を探していた。太陽が沈んで、捜索を打ち切って、諦めて戻ってきたんだろう。でも本当に心配していた」

 「そ、そうなんだ、うん、・・・それは有り難いわ!」

 皆、雨に濡れているようだ。寒さと諦めの中、打ち沈んだ雰囲気を見せていたようであるが、近づいてくるアリューシアに気づいて、歓声のような声を上げるのが聞こえた。
 ボーアホーブが滅んだ今、もはやサンチーヌたちとアリューシアとの間に主従関係はない。それが両親の死を知った直後、絶望の中で辿り着いたアリューシアの答えだった。いずれ、サンチーヌたちはアリューシアを見捨てるようにして、自分の許から去っていくだろう。

 (でも私は彼らを離しはしない。優秀な魔法使いになった私の力で、彼らを養い、守り続けてあげるから)

 サンチーヌたちの家族だって、ボーアホーブ領に住んでいるのだ。皆、自分たちの家族が心配に違いない。そのためにも、ボーアホーブに戻らなければいけない。

 お嬢様、ご無事でしたか、心配しましたよ。とりあえず、部屋の暖炉で暖まりましょう。そう言いながら駆け寄ってくる侍女たちをぴしゃりと抑ええつけるように、アリューシアは言った。

 「皆、すぐに準備して。ボーアホーブに戻るわ。ギャラックの奴らから、パパとママを取り返す!」

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