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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第九章 6)魔法のシールド
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この最初の戦闘は、私たちの勝利で終わりそうである。アリューシアの魔法の炎に包まれた兵士たちが、このまま死んでいくのは間違いないだろう。
しかしそれはあまりにむごい光景だった。
私は以前、プラーヌスが同じような炎の魔法で人を殺すところを見たことがある。そのときと比べると何か大きく違う。
彼の魔法の威力は凄まじく、炎に包まれた者たちは一瞬にして溶け、灰になって跡形もなく消えた。
存在そのものが消滅したかのように。
しかしアリューシアの魔法の火力は、それと比べると随分と弱かったようである。
焼き殺されるというより、燻り殺されているというほうが正確。死に至る苦しみは引き延ばされ、苦悶の時間は延々と続いた。
音が消えていなければ、我々はその苦しみに立ち会うことは出来なかっただろう。とても長い間、嫌な悲鳴を聞き続けることになっただろうから。
いや、音が消えていても、ゆっくりと焼き殺されていく姿というのは壮絶だった。アリューシアすら目を伏せている。
エドガルとドニに向かって、兵士たちを剣で殺すよう、カルファルが促す。二人は逃げた敵を仕留めて戻ってきたところだ。
彼らもその光景を見ていられなかったのか、すぐに剣を抜いた。兜と鎧の間に剣を突き刺し、次々と処理をしていく。
首を切られ、鉄製の兜が石造りの路面に落ちても、物音一つ聞こえない。カルファルの魔法の凄まじい威力だ。
確かにこの魔法があれば、我々は困難な目標も何とかやり遂げることが出来るかもしれない。
敵たちに気づかれず、闇の中に静かに、アリューシアの両親の遺体を奪回することが。そのような希望を感じさせてくれる力。
アリューシアの魔法は心許ないが、カルファルの魔法の力は本当に凄まじい。
「ぜ、全滅したわ。これであなたも納得したでしょ? これが私たちの魔法の力よ」
アリューシアは強がるように言う。
「ああ、納得した。カルファルの魔法で敵の目をかいくぐって、ひっそりと君の両親を」
「そんなんじゃ足りない。私の怒りは収まらない。ギャラックの連中を殺し尽くすつもりだから!」
「アリューシア、無茶だ」
「役立たずのあなたが決めることではないわ!」
アリューシアは私を無視して、革の袋から宝石を取り出し、何か魔法を使った。
私がいぶかしげ見ていると、彼女は怒りながら言ってくる。
「壊れたからシールドを貼り直したの」
「あ、ああ。さっきのあれか」
アリューシアは槍に突かれたのだ。あの攻撃で致命傷を負っていても不思議ではない。しかし無傷、かすり傷一つ負っていない。
魔法使いならば、魔法のシールドを貼っていることは知っている。しかしその効果のほどを見たのはこれが最初の体験。
「宝石が勿体ないけど、あんたにも貼ってあげるわ。役立たずなあなたでも、死なれると困るからね」
アリューシアは宝石をもう一つ取り出して、私に向かって同じ魔法を使ってくる。
「シールドの魔法はどんな敵の攻撃でも無化出来るのかい? 凄いじゃないか」
「うん、剣でも魔法でも、ある程度の攻撃ならね。だけどさっきみたいに壊れされちゃうこともあるし、別に死ななくなるわけじゃないから。軽い鎧みたいなものよ」
あれ? そんなことを言いながら、アリューシアは首を傾げる「シールドが貼れないんだけど?」
「何だって?」
カルファルが私に興味深そうに近づいてくる。「シールドが貼れないなんて、お前は特殊な体質なのか? それとも」
カルファルはエドガルから剣を借りるや否や、私に向かって振り下ろしてきた。
「な、何をするんだよ!」
私は咄嗟に腕を上げて、その剣を防ごうとするが、カルファルの振り落とした剣は私の額に直撃した。
いや、直撃したはずだった。しかし私の身体に当たる前に、鮮やかに跳ね返ったのだ。
「ああ、そういうことだ。誰かがお前にシールドを貼っていたんだ。シールドはいくつも同時に貼ることは出来ないからね。しかしこの反響音。ヤバいぜ・・・」
カルファルは恐ろしいものを見るような目を私に向けてくる。
「どういうことさ?」
「これだけの魔法の力。おそらくプラーヌスだ。あいつ以外に考えられない。奴がお前のためにシールドを貼っていたようだ」
「い、いつからだよ? そんなことされた覚えはないけれど」
「知るかよ。いずれにしろ、お前は滅多なことでは死ぬことはないな。ここの誰よりも無敵だ」
プラーヌスが知らない間に、私に魔法をかけていたのだろうか。いや、後にプラーヌスを問い詰めたのだけど、彼は「知らないね」と恍けるだけで、真相はいまだに謎である。
しかし彼は本当のことを話しはしないのだから、カルファルの推測が真相なのだろう。
「あいつのことだ、他の魔法も、かけているかもしれない。もっとヤバい、もっと厄介な魔法」
「何だよ、それ?」
「あいつは記憶を操る魔法が得意だからな。何か心当たりはないか?」
「心当たり?」
とはいえ、カルファルが本気で私の身を案じている様子はなかった。そんな目に遭っていたら、笑えて仕方がないぜ。そのような表情。
そのような会話を交わしてときである。そのとき、私たちの足元に石が転がってきた。小さな音だったが、私たちは同時にそれに気づいた。
どこからか飛んできた石だ。どうやら何者かの意思が込められた飛翔物。
自然に転がってきたり、偶然に落ちてきたわけではない。二個目の石が飛んできて、私たちは一様にその事実を確信したはずだ。
石が飛んできた方向に目をやると、その暗い影の下、男が一人立っていた。
私たちは身構える。
「我々はボーアホーブに仕える者。突然、ここに現れ、ギャラックの兵士たちを殺したあんたたちは何者だ?」
男が言った。
しかしそれはあまりにむごい光景だった。
私は以前、プラーヌスが同じような炎の魔法で人を殺すところを見たことがある。そのときと比べると何か大きく違う。
彼の魔法の威力は凄まじく、炎に包まれた者たちは一瞬にして溶け、灰になって跡形もなく消えた。
存在そのものが消滅したかのように。
しかしアリューシアの魔法の火力は、それと比べると随分と弱かったようである。
焼き殺されるというより、燻り殺されているというほうが正確。死に至る苦しみは引き延ばされ、苦悶の時間は延々と続いた。
音が消えていなければ、我々はその苦しみに立ち会うことは出来なかっただろう。とても長い間、嫌な悲鳴を聞き続けることになっただろうから。
いや、音が消えていても、ゆっくりと焼き殺されていく姿というのは壮絶だった。アリューシアすら目を伏せている。
エドガルとドニに向かって、兵士たちを剣で殺すよう、カルファルが促す。二人は逃げた敵を仕留めて戻ってきたところだ。
彼らもその光景を見ていられなかったのか、すぐに剣を抜いた。兜と鎧の間に剣を突き刺し、次々と処理をしていく。
首を切られ、鉄製の兜が石造りの路面に落ちても、物音一つ聞こえない。カルファルの魔法の凄まじい威力だ。
確かにこの魔法があれば、我々は困難な目標も何とかやり遂げることが出来るかもしれない。
敵たちに気づかれず、闇の中に静かに、アリューシアの両親の遺体を奪回することが。そのような希望を感じさせてくれる力。
アリューシアの魔法は心許ないが、カルファルの魔法の力は本当に凄まじい。
「ぜ、全滅したわ。これであなたも納得したでしょ? これが私たちの魔法の力よ」
アリューシアは強がるように言う。
「ああ、納得した。カルファルの魔法で敵の目をかいくぐって、ひっそりと君の両親を」
「そんなんじゃ足りない。私の怒りは収まらない。ギャラックの連中を殺し尽くすつもりだから!」
「アリューシア、無茶だ」
「役立たずのあなたが決めることではないわ!」
アリューシアは私を無視して、革の袋から宝石を取り出し、何か魔法を使った。
私がいぶかしげ見ていると、彼女は怒りながら言ってくる。
「壊れたからシールドを貼り直したの」
「あ、ああ。さっきのあれか」
アリューシアは槍に突かれたのだ。あの攻撃で致命傷を負っていても不思議ではない。しかし無傷、かすり傷一つ負っていない。
魔法使いならば、魔法のシールドを貼っていることは知っている。しかしその効果のほどを見たのはこれが最初の体験。
「宝石が勿体ないけど、あんたにも貼ってあげるわ。役立たずなあなたでも、死なれると困るからね」
アリューシアは宝石をもう一つ取り出して、私に向かって同じ魔法を使ってくる。
「シールドの魔法はどんな敵の攻撃でも無化出来るのかい? 凄いじゃないか」
「うん、剣でも魔法でも、ある程度の攻撃ならね。だけどさっきみたいに壊れされちゃうこともあるし、別に死ななくなるわけじゃないから。軽い鎧みたいなものよ」
あれ? そんなことを言いながら、アリューシアは首を傾げる「シールドが貼れないんだけど?」
「何だって?」
カルファルが私に興味深そうに近づいてくる。「シールドが貼れないなんて、お前は特殊な体質なのか? それとも」
カルファルはエドガルから剣を借りるや否や、私に向かって振り下ろしてきた。
「な、何をするんだよ!」
私は咄嗟に腕を上げて、その剣を防ごうとするが、カルファルの振り落とした剣は私の額に直撃した。
いや、直撃したはずだった。しかし私の身体に当たる前に、鮮やかに跳ね返ったのだ。
「ああ、そういうことだ。誰かがお前にシールドを貼っていたんだ。シールドはいくつも同時に貼ることは出来ないからね。しかしこの反響音。ヤバいぜ・・・」
カルファルは恐ろしいものを見るような目を私に向けてくる。
「どういうことさ?」
「これだけの魔法の力。おそらくプラーヌスだ。あいつ以外に考えられない。奴がお前のためにシールドを貼っていたようだ」
「い、いつからだよ? そんなことされた覚えはないけれど」
「知るかよ。いずれにしろ、お前は滅多なことでは死ぬことはないな。ここの誰よりも無敵だ」
プラーヌスが知らない間に、私に魔法をかけていたのだろうか。いや、後にプラーヌスを問い詰めたのだけど、彼は「知らないね」と恍けるだけで、真相はいまだに謎である。
しかし彼は本当のことを話しはしないのだから、カルファルの推測が真相なのだろう。
「あいつのことだ、他の魔法も、かけているかもしれない。もっとヤバい、もっと厄介な魔法」
「何だよ、それ?」
「あいつは記憶を操る魔法が得意だからな。何か心当たりはないか?」
「心当たり?」
とはいえ、カルファルが本気で私の身を案じている様子はなかった。そんな目に遭っていたら、笑えて仕方がないぜ。そのような表情。
そのような会話を交わしてときである。そのとき、私たちの足元に石が転がってきた。小さな音だったが、私たちは同時にそれに気づいた。
どこからか飛んできた石だ。どうやら何者かの意思が込められた飛翔物。
自然に転がってきたり、偶然に落ちてきたわけではない。二個目の石が飛んできて、私たちは一様にその事実を確信したはずだ。
石が飛んできた方向に目をやると、その暗い影の下、男が一人立っていた。
私たちは身構える。
「我々はボーアホーブに仕える者。突然、ここに現れ、ギャラックの兵士たちを殺したあんたたちは何者だ?」
男が言った。
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