私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第九章 7)抵抗している組織

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 緊迫する戦場の闇の中、我々に向かって小石を投げた男。彼はギルドという騎士だった。
 その闇の中、押し殺した声でそう名乗り、アリューシアたちもそれを認めた。ボーアホーブ家に仕える古参の武官だという。
 ボーアホーブ家に仕える家臣たちの多くが戦闘で殺された中、ギルドは生き延び、しかも城から逃げることなく、他の生き残りを集めて組織を形成して、ギャラックに抵抗している。
 もちろんその事実を知るのは、彼と言葉を交わしたあと。彼はまだ、小石を投げた謎の男から、アリューシアたちがよく知る騎士に変わっただけ。

 彼はアリューシアを見て、泣き崩れた。アリューシアはボーアホーブ家の唯一の生き残り。彼らにとっての希望。その涙はとても理解出来る。
 しかしギルドは感動と共に、怒り、そして遣る瀬無さを、その表情にも滲ませる。

 「お嬢様、お帰りなられたのですか? しかしなぜに!」

 「家族を迎えに来たの」

 ドニとエドガルも涙ながらに、ギルドに駆け寄る。三人とも当然、旧知の仲のようだ。そんな中、アリューシアだけは涙を見せない。
 彼女はギルドという騎士の肩に手を置き、彼のこれまでの忠誠を称えた。

 「家族を迎えにきただけじゃない。私たちはギャラックの連中をここから追い出す」

 「追い出す!」

 ギルドはさっきの戦闘を密かに見ていた。すなわち、アリューシアの魔法の力も。
 しかし彼は優れた武官でもあるようだ。冷静に事態を見極めることが出来る知性もある。
 見違えるように成長したアリューシアに驚いていたようであるが、彼女の魔法だけでこの最悪の事態を転覆させることは出来ないことも理解していたようだ。

 「敵はとてつもなく強敵です。それはお嬢様の仕事ではありません。我々にお任せ下さい。・・・それに大変申しにくいことでありますが」

 「知っているわ。パパもママも姉たちも殺されたんでしょ? 生き残ったのは私だけ」

 「はい、お嬢様を危険な目に遭わすわけにはいきません」

 「そんなこと、言っていられる状況じゃないわ。私はギャラックを許さないから」

 「しかしお嬢様!」

 「そもそも、こんなことになったのは、あなたたちが戦いに負けたからでしょ!」

 アリューシアはギルドに向かって、とても辛辣な言葉で責め、自分の言い分を通そうとする。「全てはあなたの責任よ。そんなあなたに、私の行動を制限出来る資格はこれっぽっちもないから」

 このギルドという騎士が戦闘を指揮したわけではないだろう。この敗戦に直接の責任があるわけではないはずだ。
 とはいえ、彼はボーアホーブの武官のトップであったらしい。アリューシアの言葉は間違っていないのかもしれない。
 しかしだからと言って、これは許される言葉ではない。あまりに無慈悲。
 ギルドは二の句を告げることが出来ず、本当に悲しげな表情で黙り込んだ。アリューシアもバツが悪そうに、そっぽを向く。

 アリューシアは傲慢で、きつい性格だ。彼女の我儘さには、これまで私も辟易させられてきた。しかしここまで辛辣なことを言う人間ではなかったはずだ。
 ボーアホーブ家に起きた悲劇が彼女を変えてしまったのかもしれない。あるいは、魔法使いとしての成長したこと、自信が彼女を増長させたのか。

 「なあ、ここで長話しているわけにはいかない。あんたが俺たちに気づいたということは、敵の斥候も俺たちに気づいた可能性があるかもしれない。ボヤボヤしていたら一個大隊がここに押し寄せてくるかもしれないぜ」

 カルファルがその場の空気を取りなすように言った。
 彼の言う通りだ。ギャラックに占領された街で、ギャラックの兵士たちを殺すという目立った行動をとったせいで、私たちは期せずして、抵抗している組織の者と出会うことが出来た。
 しかしその騒動で、ギャラックの他の見回りの兵士だって、私たちの存在を嗅ぎつけたかもしれない。

 「我々のアジトはすぐそこです。そこに案内します」

 アリューシアの心無い言葉に傷ついていたギルドも、気持ちを切り替えたようだ。

 「よし、そのアジトでじっくりと作戦を練ろうぜ。ところで、あんたたちの戦力は?」

 カルファルが尋ねる。何やらこの辺りから、彼が主導権を握り始めた気がする。しかし私は何の不満もない。むしろ、カルファルの存在は頼もしかった。

 「五十ほどです。しかし昨日は三人殺され、今朝、二名が敵に見つかり補足されました。数日前には・・・。その前に見せたいものがあります」

 「見せたいもの?」

 「はい、敵の魔法使いの力についてです」

 「ああ、やはりいるわけか、そういう厄介な敵が」

 「とても惨くて、最悪な死の光景です。しかしそれが敵の魔法の本質。避けるわけにはいかない」

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