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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第一章 22)嫌いな人間
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さっきから話そうとしていたが、タイミングを計りかねて、なかなか切り出せなかったことについて私は話した。
どうして今夜の料理が遅れているのかその理由だ。
本来ならアリューシアが連れてきた料理人が夕食を作ってくるはずだったこと。
しかしアリューシアが臍を曲げてしまって、直前でそれが駄目になってしまったこと。
今頃、いつもの料理当番が大慌てで料理を作っているだろうってこと。
「なんて心の狭い小娘だ。我が塔にいるだけで不愉快だ。すぐに追い出してやろう」
おそらくアリューシアと同じくらい心の狭いプラーヌスが、私の話を聞いてすぐに怒りをあらわにした。
「確かにアリューシアの態度はどうかと思う。しかしプラーヌス、そもそもは君が彼女の話しを聞いてあげないから、こうなったんじゃないか」
「この塔で誰の話しを聞こうが聞くまいが、それは僕の自由だ」
「とりあえず彼女の話しだけでも聞いてやってくれ。断るにしても、こんなふうに頭ごなしにやっていたら、彼女はいつまでも納得しないだろう」
「随分、彼女の肩を持つんだね、まるで買収でもされたようだ。それとも、侍女の一人を抱かされたのか?」
プラーヌスがさらりとした口調で言ってくる。
「ど、どっちも違うよ! ありえない。アリューシアは悪い子じゃないよ。確かに我儘で、かなり気は強そうだけど」
「彼女の性格など知ったことではない。とにかく二度と会う気はない。それだけさ」
「プラーヌス、もしかして彼女の一族に嫌な思い出でもあるのかい? 君はボーアホーブ家で働いていたことがあるんだろ?」
実は少し前からそんなことを考えていたのだ。プラーヌスがこれほど、アリューシアを毛嫌いする理由。それには何か遠因があるのではないかって。
「何も別に。言われたとおりの仕事をして、その報酬も確実に貰った。ボーアホーブ家との間に何のトラブルもなかったけれど」
君は何を言っているんだ? そんな表情でプラーヌスは私を見てくる。
「じゃあ、どうして?」
「そうだな、あえて理由を言えば、こうだ。僕が嫌いな人間は二種類いる。一人目は貴族。二人目は、僕のことを慕っている女性だ。彼女は二つの条件を満たしている」
「ど、どうして? 自分に好意を寄せている人間が嫌いなんだよ?」
「そういう女性には独特の匂いがする。あれにはうんざりなんだよ」
「な、何だって?」
私はプラーヌスの言葉にただただ呆気に取られた。
「僕のことを慕う女たちに共通するあの態度。あれが本当に嫌なのさ。女性たちにもモテない君にはわからないのかもしれないが」
「た、確かに僕にはわからないけど・・・」
「いずれにしろボーアホーブ家に特別の恨みはない。アリューシアだっけ? 彼女のこともよく覚えていない。ボーアホーブ家には三、四人の娘がいた気がするが」
「彼女は末っ子らしい」
「ふーん」
「君と出会ってからずっと、君に魔法を教わることを夢見てきて魔法の勉強も積んできたようだ。あっ、そうだった!」
私は彼女から預かった羊皮紙の束を手に取った。さっきまで無造作にテーブルの隅に放置していたのだ。「彼女が書いた魔法のプログラムらしい。これを見れば自分の実力をわかってくれるはずだって」
プラーヌスはそれを私から受け取って、パラパラとめくり始めた。
あれだけ彼女への拒否感をあらわにしていたが、このようなことに関してはそれなりに興味があるようだ。同じ魔法使いとして、どれくらいの実力か知りたいのかもしれない。彼は貪るようにそれを読み出した。
しかしプラーヌスはすぐに顔を曇らせた。
「上位の魔法言語だね。だけど駄目だ。話しにならない。平凡過ぎる。個性の欠片も伺えない。つまり、まるでエレガントさがない。とても退屈なコードだ。これでは先が知れている。魔法の勉強をするだけ時間の無駄だ」
プラーヌスはそう言ったかと思うと、その羊皮紙の束を部屋の隅のほうにぽいっと放り投げた。
そして何か言葉をつぶやいた。羊皮紙の束を床に落ちる前に燃え盛り、灰になって消えてしまった。
「プ、プラーヌス!」
私は余りに酷い彼の振る舞いに、しばらく言葉が出てこなかった。
アリューシアはそれをどれだけ大事そうに持っていたのか。その表情を思い出すと、悲しみというよろも、怒りのほうが込み上がってきた。
「な、何も燃やすことないだろ!」
「明日中に塔を出るように申し渡せ。更に、魔法の勉強もこれっきりで辞めるように、忠告してやるといい」
「プ、プラーヌス!」
「もう十分だ、シャグラン。そんなことよりも僕は、いつまで食事を待たなくてはいけないんだ? 君自ら厨房に赴いて、仕事を急かしてきてくれよ」
プラーヌスは何もかもうんざりしたといった表情で私に言ってくる。
私と彼はしばらく睨み合った。
しかし彼が目を逸らしたので、私は仕方なく立ち上がる。彼に命じられたまま、厨房に向かうことにしたのだ。このまま、気まずい空間に居るほうが精神的に疲れる。
それに実は私の空腹感も限界を超えていた。料理当番を急かしたい気持ちは私も彼と同じ。
私と彼がこれほど苛々しているのだって、その空腹が最大の原因かもしれない。
とはいえ、プラーヌスに命令されて厨房に行くのは癪だ。私は大きな溜息を吐きながら歩く。
どうして今夜の料理が遅れているのかその理由だ。
本来ならアリューシアが連れてきた料理人が夕食を作ってくるはずだったこと。
しかしアリューシアが臍を曲げてしまって、直前でそれが駄目になってしまったこと。
今頃、いつもの料理当番が大慌てで料理を作っているだろうってこと。
「なんて心の狭い小娘だ。我が塔にいるだけで不愉快だ。すぐに追い出してやろう」
おそらくアリューシアと同じくらい心の狭いプラーヌスが、私の話を聞いてすぐに怒りをあらわにした。
「確かにアリューシアの態度はどうかと思う。しかしプラーヌス、そもそもは君が彼女の話しを聞いてあげないから、こうなったんじゃないか」
「この塔で誰の話しを聞こうが聞くまいが、それは僕の自由だ」
「とりあえず彼女の話しだけでも聞いてやってくれ。断るにしても、こんなふうに頭ごなしにやっていたら、彼女はいつまでも納得しないだろう」
「随分、彼女の肩を持つんだね、まるで買収でもされたようだ。それとも、侍女の一人を抱かされたのか?」
プラーヌスがさらりとした口調で言ってくる。
「ど、どっちも違うよ! ありえない。アリューシアは悪い子じゃないよ。確かに我儘で、かなり気は強そうだけど」
「彼女の性格など知ったことではない。とにかく二度と会う気はない。それだけさ」
「プラーヌス、もしかして彼女の一族に嫌な思い出でもあるのかい? 君はボーアホーブ家で働いていたことがあるんだろ?」
実は少し前からそんなことを考えていたのだ。プラーヌスがこれほど、アリューシアを毛嫌いする理由。それには何か遠因があるのではないかって。
「何も別に。言われたとおりの仕事をして、その報酬も確実に貰った。ボーアホーブ家との間に何のトラブルもなかったけれど」
君は何を言っているんだ? そんな表情でプラーヌスは私を見てくる。
「じゃあ、どうして?」
「そうだな、あえて理由を言えば、こうだ。僕が嫌いな人間は二種類いる。一人目は貴族。二人目は、僕のことを慕っている女性だ。彼女は二つの条件を満たしている」
「ど、どうして? 自分に好意を寄せている人間が嫌いなんだよ?」
「そういう女性には独特の匂いがする。あれにはうんざりなんだよ」
「な、何だって?」
私はプラーヌスの言葉にただただ呆気に取られた。
「僕のことを慕う女たちに共通するあの態度。あれが本当に嫌なのさ。女性たちにもモテない君にはわからないのかもしれないが」
「た、確かに僕にはわからないけど・・・」
「いずれにしろボーアホーブ家に特別の恨みはない。アリューシアだっけ? 彼女のこともよく覚えていない。ボーアホーブ家には三、四人の娘がいた気がするが」
「彼女は末っ子らしい」
「ふーん」
「君と出会ってからずっと、君に魔法を教わることを夢見てきて魔法の勉強も積んできたようだ。あっ、そうだった!」
私は彼女から預かった羊皮紙の束を手に取った。さっきまで無造作にテーブルの隅に放置していたのだ。「彼女が書いた魔法のプログラムらしい。これを見れば自分の実力をわかってくれるはずだって」
プラーヌスはそれを私から受け取って、パラパラとめくり始めた。
あれだけ彼女への拒否感をあらわにしていたが、このようなことに関してはそれなりに興味があるようだ。同じ魔法使いとして、どれくらいの実力か知りたいのかもしれない。彼は貪るようにそれを読み出した。
しかしプラーヌスはすぐに顔を曇らせた。
「上位の魔法言語だね。だけど駄目だ。話しにならない。平凡過ぎる。個性の欠片も伺えない。つまり、まるでエレガントさがない。とても退屈なコードだ。これでは先が知れている。魔法の勉強をするだけ時間の無駄だ」
プラーヌスはそう言ったかと思うと、その羊皮紙の束を部屋の隅のほうにぽいっと放り投げた。
そして何か言葉をつぶやいた。羊皮紙の束を床に落ちる前に燃え盛り、灰になって消えてしまった。
「プ、プラーヌス!」
私は余りに酷い彼の振る舞いに、しばらく言葉が出てこなかった。
アリューシアはそれをどれだけ大事そうに持っていたのか。その表情を思い出すと、悲しみというよろも、怒りのほうが込み上がってきた。
「な、何も燃やすことないだろ!」
「明日中に塔を出るように申し渡せ。更に、魔法の勉強もこれっきりで辞めるように、忠告してやるといい」
「プ、プラーヌス!」
「もう十分だ、シャグラン。そんなことよりも僕は、いつまで食事を待たなくてはいけないんだ? 君自ら厨房に赴いて、仕事を急かしてきてくれよ」
プラーヌスは何もかもうんざりしたといった表情で私に言ってくる。
私と彼はしばらく睨み合った。
しかし彼が目を逸らしたので、私は仕方なく立ち上がる。彼に命じられたまま、厨房に向かうことにしたのだ。このまま、気まずい空間に居るほうが精神的に疲れる。
それに実は私の空腹感も限界を超えていた。料理当番を急かしたい気持ちは私も彼と同じ。
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