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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第一章 23)食事の準備
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仕方なく厨房に向かおうと、椅子から立ち上がり歩き出したときだ。
そのとき部屋の扉がノックされた。
いったい何者がやってきたのかと首を傾げながらも、扉の前にいた私はそのまま扉を開ける。
扉の前に、料理人の衣装を着た男が立っていた。
アリューシアのところの料理人のミリューだった。
「少し遅れましたが、食事の用意が出来ました」
彼が言ってきた。
「え? だって?」
「お嬢様はお怒りですが、我々の判断でお料理を提供させていただくことになりました。ご不満でしたら、取り下げますが」
「不満なんて滅相もありません」
彼はワゴンに一杯の料理を載せてきていた。私はそれに目を落として、すぐに扉を大きく開ける。
その奥にはもう一人の料理人もいた。料理人というよりも、山賊のような髭を生やした強面の大男だ。あのアバンドンという料理人もワゴンに料理を運んできたようだ。
「何事だ、シャグラン?」
プラーヌスが私に声を掛けてきた。
「料理の用意が出来たようだよ、プラーヌス!」
私はさっきまでの苛々も忘れて、興奮した声を上げる。
「料理だって?」
プラーヌスも驚いたように返事を返してきた。
部屋に入ってきたミリューはプラーヌスに深くお辞儀すると、ワゴンの上の皿を私たちの前に並べ始めた。
「では、まずはスープをお召し上がり下さい。これは私が担当させていただきました。オニオンとインゲンの野菜スープです。このスープで、一日の栄養が全て摂取可能」
「栄養?」
私も料理と共にテーブルにつく。そして首を傾げながら、プラーヌスを視線を合わせる。栄養だって? 何だ、それは?
「はい、食材には人間が健康に生活するために必要な様々な栄養素が含まれているのです。私はそれを専門に研究している料理家です。この一杯のスープで血行の流れ、肌の調子、全てが快調に向かうはず」
「薬みたいなものなのですか?」
「いいえ、これが料理なのです。料理というのは、ただ空腹を満たすだけでのものではありません。味だけを重視するのではなく、身体のことも考えて作られるべきものなのです」
何だか理屈っぽい料理人である。言っていることもイマイチ理解出来ない。しかしプラーヌスが先に食べるように私を促すから、私は毒見感覚でそのスープを口に運ぶ。
「美味しいよ、プラーヌス!」
私は思わず感嘆の声を上げた。これまでに出会ったことのない味では決してない。母が作ってくれたスープに似ているのかもしれない。
しかし何かレベルが違う。味のコクというのだろうか、深みというのだろうか、舌にずしりと乗っかってくるような味の塊、それがずっと口の中に留まり続けるのだ。
プラーヌスもそのスープを飲んで、眉がピクリと上がった。
「美味しいね。何が入ってるんだって?」
「インゲンとオニオン、その他にも様々な野菜を細かく切り刻んで、じっくりと煮込んでいます」
「優しい味だよ、そして、とても美味しい」
プラーヌスもかなり満足したようだ。彼は不味いものは不味いと、作った本人に向かっても言うタイプだ。だからその料理は本当に美味しかったのだろう。
「では次は魚料理です。どうぞお召し上がり下さい」
何の魚かわからないが、白身がすりつぶされ、丸く固められている。その横に数種類のソースが添えられている料理。もちろん、これも絶品だった。
プラーヌスの好きな海老の料理も出た。
プラーヌスは海老を偏愛しているので、ここの食料庫には海老のストックが多い。だから海老の料理が出たのかもしれない。しかしその偶然は、更に彼らの料理を好印象にしたはずだ。
今まで食べたどんな海老料理よりも美味しかった。カラリと油で揚げられていて、ピリリと辛いトマトベースのソースであえられていた。
「驚きだ、言葉も出ないよ、シャグラン」
プラーヌスは手短にそう言うと、次から次にへと料理を口に運ぶ。そしてそれをあっという間に平らげていく。
そのとき部屋の扉がノックされた。
いったい何者がやってきたのかと首を傾げながらも、扉の前にいた私はそのまま扉を開ける。
扉の前に、料理人の衣装を着た男が立っていた。
アリューシアのところの料理人のミリューだった。
「少し遅れましたが、食事の用意が出来ました」
彼が言ってきた。
「え? だって?」
「お嬢様はお怒りですが、我々の判断でお料理を提供させていただくことになりました。ご不満でしたら、取り下げますが」
「不満なんて滅相もありません」
彼はワゴンに一杯の料理を載せてきていた。私はそれに目を落として、すぐに扉を大きく開ける。
その奥にはもう一人の料理人もいた。料理人というよりも、山賊のような髭を生やした強面の大男だ。あのアバンドンという料理人もワゴンに料理を運んできたようだ。
「何事だ、シャグラン?」
プラーヌスが私に声を掛けてきた。
「料理の用意が出来たようだよ、プラーヌス!」
私はさっきまでの苛々も忘れて、興奮した声を上げる。
「料理だって?」
プラーヌスも驚いたように返事を返してきた。
部屋に入ってきたミリューはプラーヌスに深くお辞儀すると、ワゴンの上の皿を私たちの前に並べ始めた。
「では、まずはスープをお召し上がり下さい。これは私が担当させていただきました。オニオンとインゲンの野菜スープです。このスープで、一日の栄養が全て摂取可能」
「栄養?」
私も料理と共にテーブルにつく。そして首を傾げながら、プラーヌスを視線を合わせる。栄養だって? 何だ、それは?
「はい、食材には人間が健康に生活するために必要な様々な栄養素が含まれているのです。私はそれを専門に研究している料理家です。この一杯のスープで血行の流れ、肌の調子、全てが快調に向かうはず」
「薬みたいなものなのですか?」
「いいえ、これが料理なのです。料理というのは、ただ空腹を満たすだけでのものではありません。味だけを重視するのではなく、身体のことも考えて作られるべきものなのです」
何だか理屈っぽい料理人である。言っていることもイマイチ理解出来ない。しかしプラーヌスが先に食べるように私を促すから、私は毒見感覚でそのスープを口に運ぶ。
「美味しいよ、プラーヌス!」
私は思わず感嘆の声を上げた。これまでに出会ったことのない味では決してない。母が作ってくれたスープに似ているのかもしれない。
しかし何かレベルが違う。味のコクというのだろうか、深みというのだろうか、舌にずしりと乗っかってくるような味の塊、それがずっと口の中に留まり続けるのだ。
プラーヌスもそのスープを飲んで、眉がピクリと上がった。
「美味しいね。何が入ってるんだって?」
「インゲンとオニオン、その他にも様々な野菜を細かく切り刻んで、じっくりと煮込んでいます」
「優しい味だよ、そして、とても美味しい」
プラーヌスもかなり満足したようだ。彼は不味いものは不味いと、作った本人に向かっても言うタイプだ。だからその料理は本当に美味しかったのだろう。
「では次は魚料理です。どうぞお召し上がり下さい」
何の魚かわからないが、白身がすりつぶされ、丸く固められている。その横に数種類のソースが添えられている料理。もちろん、これも絶品だった。
プラーヌスの好きな海老の料理も出た。
プラーヌスは海老を偏愛しているので、ここの食料庫には海老のストックが多い。だから海老の料理が出たのかもしれない。しかしその偶然は、更に彼らの料理を好印象にしたはずだ。
今まで食べたどんな海老料理よりも美味しかった。カラリと油で揚げられていて、ピリリと辛いトマトベースのソースであえられていた。
「驚きだ、言葉も出ないよ、シャグラン」
プラーヌスは手短にそう言うと、次から次にへと料理を口に運ぶ。そしてそれをあっという間に平らげていく。
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