40 / 188
シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第三章 7)三つの仕事
しおりを挟む
「とにかくやらなければいけない仕事は三つです。この塔の主であるプラーヌスは、必要のない召使いのクビを切るつもりで。だからこの塔で働く召使いの数はどれくらいが適切なのか調べなければいけません。それが第一。それに関連して、この塔の正確な見取り図の作成。この塔は本当に巨大で、ちょっとした迷路みたいなものです。どこに何があるのか、誰も把握していません。それを明確にするための地図作り。そして三つ目が、昨日からぞろぞろとやってきている客への対応」
執務室も何とか形になったので、改めてサンチーヌたちを部屋に集める。そして私は語る。「なるほど」とサンチーヌたちは相槌を打って聞いてくれている。
「それ以外にも、女神探しとか、金庫番の問題とか、色々あるんですけど。まずはその三つが優先事項です」
この塔のどこかに女神像があるらしい。頻繁にこの塔に襲撃を掛けてくる蛮族の捕虜が明かした事実だ。
奴らはこの女神像を取り戻すために、この塔を襲撃しているというのだ。この女神像を彼らに返すまで、あの無意味な襲撃は繰り返されるかもしれない。
だから女神像探しも重要な仕であるだ。しかし今、それは完全に暗礁に乗り上げている。彼らに任すべき仕事でもない。
金庫番の問題も、もう少しプラーヌスと相談してから進めよう。
「そういうわけで、エドガルさんとアデライドさんには、この塔の見取り図を作ってもらいたい。ドニさんとラダさんは来客の応対をお願いします。そしてサンチーヌさんと僕で、この塔の召使いの問題を片づけたい」
「わかりました。承りましょう。しかし僭越ながら一つアドバイスしたいことがあります」
サンチーヌが言ってくる。
「はあ、何でしょうか?」
「彼らにもそれぞれ向き不向きがあります。アデライドとラダの役割を変えましょう。ドニとアデライドに客の対応を任せたほうが良いと思います、そしてエドガルとラダに、この塔の見取り図作りを」
彼らも頷いている。私もサンチーヌの意見に同意した。
彼らの能力の向き不向きなど、まるで知らない。サンチーヌのほうがずっと的確に把握しているのは間違いない。彼のアドバイスに従うべきであろう。
まだ、彼らの人となりなど、しっかり把握したわけではないが、簡単に紹介しておこう。
エドガルは長身で逞しい身体つきの付き人である。アリューシアの衛兵的な存在なのだろうか。常に腰に剣をぶら下げていた。
サンチーヌより若いが、私たちよりも少し年上だろう。真面目そうで、落ち着いた雰囲気のある男性だ。
ドニは笑顔が印象的な若者である。侍女たちと何か言って、ケラケラと大声で笑っているのをよく見る。
小柄で敏捷で、よく動き回っているという印象。
アデライドは生真面目そうな女性である。教会の修道女か家庭教師のよう。
年齢はエドガルと同じくらいだろう、アリューシアを何度か叱りつけているのを見たことがある。実際、アリューシアの教育係のような女性らしい。
ラダはかなり若い女性だ。アリューシアより二、三歳年上といった程度。
しかし若いがまるで活き活きとした印象はない。アリューシアに向かって、何かボソリと辛辣な意見を口にしているのを聞く。アリューシアもそれに言い返している。アリューシアとは本当の友人のような関係のよう。
ここにはいないが、リーズという侍女もいる。アリューシアの衣装係、化粧係専門の侍女のようだ。
リーズ自身もかなりお洒落で、パッと人目を惹く美しい女性だった。
簡単だが、以上が私の仕事を手伝ってくれることになったアリューシアの執事や侍女たちの特徴である。
誰も彼も身なりは綺麗で、その佇まいには何と言えない気品のようなものが漂っている。
貴族に仕える執事や侍女だが、彼らも下級の貴族の出に違いない。あのボーアホーブ家に務められるのは、それなりの身分が必要なんだろう。
さて、そういうわけで、午後になって、ようやく仕事が始まった。
執務室も何とか形になったので、改めてサンチーヌたちを部屋に集める。そして私は語る。「なるほど」とサンチーヌたちは相槌を打って聞いてくれている。
「それ以外にも、女神探しとか、金庫番の問題とか、色々あるんですけど。まずはその三つが優先事項です」
この塔のどこかに女神像があるらしい。頻繁にこの塔に襲撃を掛けてくる蛮族の捕虜が明かした事実だ。
奴らはこの女神像を取り戻すために、この塔を襲撃しているというのだ。この女神像を彼らに返すまで、あの無意味な襲撃は繰り返されるかもしれない。
だから女神像探しも重要な仕であるだ。しかし今、それは完全に暗礁に乗り上げている。彼らに任すべき仕事でもない。
金庫番の問題も、もう少しプラーヌスと相談してから進めよう。
「そういうわけで、エドガルさんとアデライドさんには、この塔の見取り図を作ってもらいたい。ドニさんとラダさんは来客の応対をお願いします。そしてサンチーヌさんと僕で、この塔の召使いの問題を片づけたい」
「わかりました。承りましょう。しかし僭越ながら一つアドバイスしたいことがあります」
サンチーヌが言ってくる。
「はあ、何でしょうか?」
「彼らにもそれぞれ向き不向きがあります。アデライドとラダの役割を変えましょう。ドニとアデライドに客の対応を任せたほうが良いと思います、そしてエドガルとラダに、この塔の見取り図作りを」
彼らも頷いている。私もサンチーヌの意見に同意した。
彼らの能力の向き不向きなど、まるで知らない。サンチーヌのほうがずっと的確に把握しているのは間違いない。彼のアドバイスに従うべきであろう。
まだ、彼らの人となりなど、しっかり把握したわけではないが、簡単に紹介しておこう。
エドガルは長身で逞しい身体つきの付き人である。アリューシアの衛兵的な存在なのだろうか。常に腰に剣をぶら下げていた。
サンチーヌより若いが、私たちよりも少し年上だろう。真面目そうで、落ち着いた雰囲気のある男性だ。
ドニは笑顔が印象的な若者である。侍女たちと何か言って、ケラケラと大声で笑っているのをよく見る。
小柄で敏捷で、よく動き回っているという印象。
アデライドは生真面目そうな女性である。教会の修道女か家庭教師のよう。
年齢はエドガルと同じくらいだろう、アリューシアを何度か叱りつけているのを見たことがある。実際、アリューシアの教育係のような女性らしい。
ラダはかなり若い女性だ。アリューシアより二、三歳年上といった程度。
しかし若いがまるで活き活きとした印象はない。アリューシアに向かって、何かボソリと辛辣な意見を口にしているのを聞く。アリューシアもそれに言い返している。アリューシアとは本当の友人のような関係のよう。
ここにはいないが、リーズという侍女もいる。アリューシアの衣装係、化粧係専門の侍女のようだ。
リーズ自身もかなりお洒落で、パッと人目を惹く美しい女性だった。
簡単だが、以上が私の仕事を手伝ってくれることになったアリューシアの執事や侍女たちの特徴である。
誰も彼も身なりは綺麗で、その佇まいには何と言えない気品のようなものが漂っている。
貴族に仕える執事や侍女だが、彼らも下級の貴族の出に違いない。あのボーアホーブ家に務められるのは、それなりの身分が必要なんだろう。
さて、そういうわけで、午後になって、ようやく仕事が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
『悪役令嬢』は始めません!
月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。
突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。
と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。
アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。
ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。
そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。
アデリシアはレンの提案に飛び付いた。
そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。
そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが――
※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
【完結】エレクトラの婚約者
buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー
エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。
父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。
そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。
エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。
もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが……
11万字とちょっと長め。
謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。
タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。
まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる