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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第三章 28)静寂のために
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「何だか無駄に塔が騒がしいね。以前の静寂が懐かしい」
プラーヌスがスープを口に運びながら静かに微笑む。「追い出すべき者は追い出す必要があるかもしれない。とはいえ」
この料理の味は格別だ。アリューシアという少女の面倒を、しばらく看ざるをえないね。
そのスープの味がかなり気に入ったのか、そんなことを口にしつつ、プラーヌスは何度も頷く。
今日の夕食から、本格的に塔の料理係りが変わった。アリューシアが連れて来た料理人、ミリューとアバンドンが担当することになったのである。
それがアリューシアとの約束だったのである。アリューシアに魔法の指導をする代わりに、その二人が塔の料理係りを勤めること。
プラーヌスは自分の料理だけを、その二人の料理人に作らせるつもりであったようだが、二人の料理人のほうから、塔に住んでいる全ての住人の料理を担当したいと言い出した。
もちろん二人が直接作ることが出来る量は限られるだろうが、全ての食材と味付けの責任を二人が負うらしい。
それなりに料理の経験のある召使いが、彼らの手伝いをすることになったのである。
その体制になったのは今日のことだから、どこまで順調に運んでいるのかはわからないが、今のところ厨房に大きな混乱はないようだ。
「この味なら、一生食べ続けても厭きることないだろう。僕たちは永遠の料理家に出会ったのかもしれない」
プラーヌスは言う。私もその言葉に深く同意する。本当に心の底から幸せ感を得られる料理なのだ。
「アリューシアを追い出すとしても、まずその前に、その二人の料理人が塔に残って、僕の料理を作り続けるという約束を取り付ける必要がある。しかし脅迫なんてしてはいけない。二人が本当に心の底から僕に心酔して、ここで仕事をし続けたくなる動機付けが必要だ」
どういう方法が良いだろうか? アリューシアが死んで、ボーアホーブ家も滅んで、仕える先を失えば、二人はここで働かざるをえなくなるよね。もちろん、彼らが料理をしやすくするための環境は全て整えてやる。どの宮殿で働くよりも、ここで働いたほうが働き甲斐があると思わせる。
プラーヌスは本気でその計画を検討しているのか、いつになく真剣な表情になる。
「な、何を言っているんだよ、プラーヌス。そんな悪辣なことをする必要はない。とても簡単だよ、君がアリューシアの面倒を看続ければいいんだ。彼女はここに残りたがっている。アリューシアがいる限り、二人の料理人も彼女から離れないはずだ」
アリューシアの死とか、ボーアホーブ家の滅亡だとか、そんなものはきっと悪い冗談なのだろうけど、プラーヌスならば、やりかねなくもない。
私は少し強めの口調で彼に釘を刺しておく。
「そうだね。確かに簡単だ。しかし僕はアリューシアを追い出したいんだ。まずそれが大前提さ。いつまでも彼女を置いておくつもりはない」
「でもアリューシアよりもカルファルは? 奴こそ、この騒がしい騒音の出所かもしれない」
「奴の扱いこそ簡単だよ。カルファルに関して、何も気を遣う必要はないからね。殺してしまえば、それで全て解決だ。今すぐにでも実行可能だよ」
わかっている。それだってきっと冗談だろう。
しかし私はとりあえず、カルファルの命を助けることにする。
「彼はすぐに旅立つ予定らしい。ただ旅の途中に立ち寄っただけなんだから・・・」
「ならば殺すまでもないかな。奴のことが本当に嫌いだけど、彼が死ねば悲しむ人がいるかもしれない。出来ることならば手に掛けたくはない。この羊とは違うんだ」
プラーヌスはそう言いながら、今夜のメインディッシュ、その噂の羊の肉を美味しそうに頬張る。
「当然だよ、殺すのはありえない。それに彼には妻のような女性が七人いるらしい。その女たちが君を恨むに違いない」
「七人だって? 何という男だ。本当に呆れるね。君はその女たちに逢ったのかい?」
「ああ、少しだけ、チラリとね」
さっきの光景が脳裏に蘇って、一瞬だけ食欲を失う。格別に美味しい料理といえども、女性たちが漂わせる色気には叶わないのかもしれない。
「その女たちの中に、お気に入りでも見つけたのかい?」
「まさか! 本当当にすれ違った程度さ」
「まあ、面倒になるのならば、その女性たちだって殺してやるけど」
「冗談だろ、プラーヌス!」
もう彼のこのような口ぶりに付き合っていられなかった。私は彼を責めるように声を上げる。
「もちろん冗談だよ、優しいシャグラン。いいだろう。死にたくなければ、さっさと出て行くよう、君からあの男に伝えておいてくれ。彼の命運を握るのは君次第だな」
「わかった。数日中には確実に追い出す」
何が何でもカルファルの命を救いたいわけでもない。まあ、女性たちが嘆くのは見たくはないけれど。
それより何より、誰かが簡単に死んだり殺されたりするような世界が嫌なのだ。
ましてや、自分の住んでいる塔でそのようなことが起こるのは耐えられない。そしてその首謀者がプラーヌスなんて。
プラーヌスがスープを口に運びながら静かに微笑む。「追い出すべき者は追い出す必要があるかもしれない。とはいえ」
この料理の味は格別だ。アリューシアという少女の面倒を、しばらく看ざるをえないね。
そのスープの味がかなり気に入ったのか、そんなことを口にしつつ、プラーヌスは何度も頷く。
今日の夕食から、本格的に塔の料理係りが変わった。アリューシアが連れて来た料理人、ミリューとアバンドンが担当することになったのである。
それがアリューシアとの約束だったのである。アリューシアに魔法の指導をする代わりに、その二人が塔の料理係りを勤めること。
プラーヌスは自分の料理だけを、その二人の料理人に作らせるつもりであったようだが、二人の料理人のほうから、塔に住んでいる全ての住人の料理を担当したいと言い出した。
もちろん二人が直接作ることが出来る量は限られるだろうが、全ての食材と味付けの責任を二人が負うらしい。
それなりに料理の経験のある召使いが、彼らの手伝いをすることになったのである。
その体制になったのは今日のことだから、どこまで順調に運んでいるのかはわからないが、今のところ厨房に大きな混乱はないようだ。
「この味なら、一生食べ続けても厭きることないだろう。僕たちは永遠の料理家に出会ったのかもしれない」
プラーヌスは言う。私もその言葉に深く同意する。本当に心の底から幸せ感を得られる料理なのだ。
「アリューシアを追い出すとしても、まずその前に、その二人の料理人が塔に残って、僕の料理を作り続けるという約束を取り付ける必要がある。しかし脅迫なんてしてはいけない。二人が本当に心の底から僕に心酔して、ここで仕事をし続けたくなる動機付けが必要だ」
どういう方法が良いだろうか? アリューシアが死んで、ボーアホーブ家も滅んで、仕える先を失えば、二人はここで働かざるをえなくなるよね。もちろん、彼らが料理をしやすくするための環境は全て整えてやる。どの宮殿で働くよりも、ここで働いたほうが働き甲斐があると思わせる。
プラーヌスは本気でその計画を検討しているのか、いつになく真剣な表情になる。
「な、何を言っているんだよ、プラーヌス。そんな悪辣なことをする必要はない。とても簡単だよ、君がアリューシアの面倒を看続ければいいんだ。彼女はここに残りたがっている。アリューシアがいる限り、二人の料理人も彼女から離れないはずだ」
アリューシアの死とか、ボーアホーブ家の滅亡だとか、そんなものはきっと悪い冗談なのだろうけど、プラーヌスならば、やりかねなくもない。
私は少し強めの口調で彼に釘を刺しておく。
「そうだね。確かに簡単だ。しかし僕はアリューシアを追い出したいんだ。まずそれが大前提さ。いつまでも彼女を置いておくつもりはない」
「でもアリューシアよりもカルファルは? 奴こそ、この騒がしい騒音の出所かもしれない」
「奴の扱いこそ簡単だよ。カルファルに関して、何も気を遣う必要はないからね。殺してしまえば、それで全て解決だ。今すぐにでも実行可能だよ」
わかっている。それだってきっと冗談だろう。
しかし私はとりあえず、カルファルの命を助けることにする。
「彼はすぐに旅立つ予定らしい。ただ旅の途中に立ち寄っただけなんだから・・・」
「ならば殺すまでもないかな。奴のことが本当に嫌いだけど、彼が死ねば悲しむ人がいるかもしれない。出来ることならば手に掛けたくはない。この羊とは違うんだ」
プラーヌスはそう言いながら、今夜のメインディッシュ、その噂の羊の肉を美味しそうに頬張る。
「当然だよ、殺すのはありえない。それに彼には妻のような女性が七人いるらしい。その女たちが君を恨むに違いない」
「七人だって? 何という男だ。本当に呆れるね。君はその女たちに逢ったのかい?」
「ああ、少しだけ、チラリとね」
さっきの光景が脳裏に蘇って、一瞬だけ食欲を失う。格別に美味しい料理といえども、女性たちが漂わせる色気には叶わないのかもしれない。
「その女たちの中に、お気に入りでも見つけたのかい?」
「まさか! 本当当にすれ違った程度さ」
「まあ、面倒になるのならば、その女性たちだって殺してやるけど」
「冗談だろ、プラーヌス!」
もう彼のこのような口ぶりに付き合っていられなかった。私は彼を責めるように声を上げる。
「もちろん冗談だよ、優しいシャグラン。いいだろう。死にたくなければ、さっさと出て行くよう、君からあの男に伝えておいてくれ。彼の命運を握るのは君次第だな」
「わかった。数日中には確実に追い出す」
何が何でもカルファルの命を救いたいわけでもない。まあ、女性たちが嘆くのは見たくはないけれど。
それより何より、誰かが簡単に死んだり殺されたりするような世界が嫌なのだ。
ましてや、自分の住んでいる塔でそのようなことが起こるのは耐えられない。そしてその首謀者がプラーヌスなんて。
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