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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 30)大聖堂の街
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エリュエールの街は活気に溢れていた。この時間、街は最も騒がしい頃なのかもしれない。
水売りや、魚売りやら、毛皮売りやら、果物売りやら、その他の様々な売り子たちが、街路を練り歩き、自分の売り物の喧伝をしている。そしてそれを買い求めようとしている客たちの姿も大勢見られる。
私たちはその群れを巧みに避けながら、先を急ぐ。
アリューシアもシュショテも、このような光景は物珍しくもないようだ。ふーん、エリュエールの街ってこんな感じなのねという表情を見せるだけで、別段、好奇心に瞳を輝かせたりしない。
街路の向こう、浮かぶようにして見える大聖堂を目指して歩いていた私たちは、迷うことなく目的の教会の広場に到着した。
アリューシアとシュショテは、その広場の階段にでも座って、魔法の勉強をするようだ。
エリュエールの街は治安の悪いところではないはずであるが、何が起きるかわからない。
アリューシアの美貌を目にした何者かが、彼女を拉致しようと企てることだってありえるかもしれない。
しかしシュショテは魔法使いだ。
本当に頼りなくて、ケンカも弱そうな男の子ではあるが、その気になれば五人の大人を一瞬で消滅させるくらいの魔法は使えるはず。
私なんかよりもはるかに戦闘能力は上。何も心配することはないだろう。
それよりも彼らが勝手に出歩いて、再会出来ないことが不安である。
「ここから離れるなよ」
はい、わかりましたとシュショテは明朗な返事を返す。
しかしアリューシアのほうは、さあ、どうかしらと曖昧な態度。
「傭兵たちと契約を結ぶのだって、けっこう時間がかかると思う。そんなにスムーズに終わる仕事じゃない。だけど何度か様子を見に帰ってくるから、絶対にここから離れないでくれ、わかったね」
「はいはい。私だって遊びに来たわけじゃないんだから、ウロウロしたりしないわ。でもさ、もし何かあった場合は?」
アリューシアが言ってくる。まるで何か不吉なことが起きることを待ち望んでいるように楽しげな表情で。
「もし何かあって、ここに居られなくなった場合は、僕はどこかの酒場か宿屋にいるはずなんだけど、そこに来られても下手をすると行き違いになってしまうかもしれないからね、どうしよう・・・」
「もし何かあったときは、街中が大混乱するくらい暴れ回ってあげる。そうね、例えばシュショテに、あの大聖堂を壊させるとか」
「やめてくれ、そんなこと!」
確かにそんなことをが起きれば、少々離れた場所にいてもすぐに異常に気づくだろう。しかしあの大聖堂はこの街の名所。何百年も前からある歴史的建造物なのだ。
私は大聖堂を見上げる。
それは石造りの壮大な建物で、他を見下ろすように突き立っている。
我が塔とは比べようもないほどに小さいが、多くの人々の神への畏怖と信仰の証しが、こうやって建物の形を取って存在しているのだ。それはとても尊いこと。
エリューエルの街がこのように栄えているのも、近隣からこの大聖堂を目当てにやってくる参拝者のお陰なのかもしれない。
「壊すなら、その隣の建物にしてくれ」
「わかったわ」
「いやいや、それも冗談だよ。大暴れするなんてはやめてくれ。何か起きてしまって、ここに居られなくなった場合は、さっき入って来た街の門で待ち合わせしよう。何もないことを祈る」
まあ、アリューシアは口で言うほど、度胸があるタイプだとも思えない。
歴史的建造物であろうがなかろうが、大きな建物を壊すような無茶なことが出来る人間ではない気がするのだ。
彼女は貴族。
高慢にして傲慢ではあるが、ところどころに素性の良さが滲み出ている。
アリューシアとプラーヌスは似ているようで、まるで違う。
プラーヌスは貴族的な白皙の容貌で、一見するところ何とも言えない上品さが漂っているように見えるが、彼は世界中の人々から嫌われても、鼻にもかけない男。
でもアリューシアは違う。
あの建物を破壊した場合、もしその中に人が住んでいたら、この人を傷つけてしまうかもしれないわけで、育ちの良い彼女はきっと、その事実に耐えられないはずだ。
「では、しっかりと勉強するんだぞ」
最後にそう言い残して、私は二人と別れて酒場などが多いエリアに足を向ける。
歩きながら何度か後ろを振り返って二人の様子を伺うが、二人はもう私のことに興味などないといった様子で、既に自分たちの世界に入り込みつつあるようだ。
水売りや、魚売りやら、毛皮売りやら、果物売りやら、その他の様々な売り子たちが、街路を練り歩き、自分の売り物の喧伝をしている。そしてそれを買い求めようとしている客たちの姿も大勢見られる。
私たちはその群れを巧みに避けながら、先を急ぐ。
アリューシアもシュショテも、このような光景は物珍しくもないようだ。ふーん、エリュエールの街ってこんな感じなのねという表情を見せるだけで、別段、好奇心に瞳を輝かせたりしない。
街路の向こう、浮かぶようにして見える大聖堂を目指して歩いていた私たちは、迷うことなく目的の教会の広場に到着した。
アリューシアとシュショテは、その広場の階段にでも座って、魔法の勉強をするようだ。
エリュエールの街は治安の悪いところではないはずであるが、何が起きるかわからない。
アリューシアの美貌を目にした何者かが、彼女を拉致しようと企てることだってありえるかもしれない。
しかしシュショテは魔法使いだ。
本当に頼りなくて、ケンカも弱そうな男の子ではあるが、その気になれば五人の大人を一瞬で消滅させるくらいの魔法は使えるはず。
私なんかよりもはるかに戦闘能力は上。何も心配することはないだろう。
それよりも彼らが勝手に出歩いて、再会出来ないことが不安である。
「ここから離れるなよ」
はい、わかりましたとシュショテは明朗な返事を返す。
しかしアリューシアのほうは、さあ、どうかしらと曖昧な態度。
「傭兵たちと契約を結ぶのだって、けっこう時間がかかると思う。そんなにスムーズに終わる仕事じゃない。だけど何度か様子を見に帰ってくるから、絶対にここから離れないでくれ、わかったね」
「はいはい。私だって遊びに来たわけじゃないんだから、ウロウロしたりしないわ。でもさ、もし何かあった場合は?」
アリューシアが言ってくる。まるで何か不吉なことが起きることを待ち望んでいるように楽しげな表情で。
「もし何かあって、ここに居られなくなった場合は、僕はどこかの酒場か宿屋にいるはずなんだけど、そこに来られても下手をすると行き違いになってしまうかもしれないからね、どうしよう・・・」
「もし何かあったときは、街中が大混乱するくらい暴れ回ってあげる。そうね、例えばシュショテに、あの大聖堂を壊させるとか」
「やめてくれ、そんなこと!」
確かにそんなことをが起きれば、少々離れた場所にいてもすぐに異常に気づくだろう。しかしあの大聖堂はこの街の名所。何百年も前からある歴史的建造物なのだ。
私は大聖堂を見上げる。
それは石造りの壮大な建物で、他を見下ろすように突き立っている。
我が塔とは比べようもないほどに小さいが、多くの人々の神への畏怖と信仰の証しが、こうやって建物の形を取って存在しているのだ。それはとても尊いこと。
エリューエルの街がこのように栄えているのも、近隣からこの大聖堂を目当てにやってくる参拝者のお陰なのかもしれない。
「壊すなら、その隣の建物にしてくれ」
「わかったわ」
「いやいや、それも冗談だよ。大暴れするなんてはやめてくれ。何か起きてしまって、ここに居られなくなった場合は、さっき入って来た街の門で待ち合わせしよう。何もないことを祈る」
まあ、アリューシアは口で言うほど、度胸があるタイプだとも思えない。
歴史的建造物であろうがなかろうが、大きな建物を壊すような無茶なことが出来る人間ではない気がするのだ。
彼女は貴族。
高慢にして傲慢ではあるが、ところどころに素性の良さが滲み出ている。
アリューシアとプラーヌスは似ているようで、まるで違う。
プラーヌスは貴族的な白皙の容貌で、一見するところ何とも言えない上品さが漂っているように見えるが、彼は世界中の人々から嫌われても、鼻にもかけない男。
でもアリューシアは違う。
あの建物を破壊した場合、もしその中に人が住んでいたら、この人を傷つけてしまうかもしれないわけで、育ちの良い彼女はきっと、その事実に耐えられないはずだ。
「では、しっかりと勉強するんだぞ」
最後にそう言い残して、私は二人と別れて酒場などが多いエリアに足を向ける。
歩きながら何度か後ろを振り返って二人の様子を伺うが、二人はもう私のことに興味などないといった様子で、既に自分たちの世界に入り込みつつあるようだ。
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