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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 31)傭兵たちがいる酒場で
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何も心配することはないはずである。
私はそう確信してはいるが、心の端っこのほうで嫌な予感を覚えていることも事実なのである。
その原因は多分あれだ。この街に入る前に、シュショテが漏らした言葉。
彼は何かに怯えていた。
あの姿が私の脳裏から離れないのである。
あれが何かの前触れでなければ、いったい何だというのだ。
いつだって事件が起きる前に、何らかの予兆があるというのは、神話や物語などが教えるところである。
あのときのシュショテの態度というのは、そのような類のものに違いないのだ。
シュショテは本気で何かに怯えていた。今にしても思えば、その怯え方には手慣れた雰囲気すらあったかもしれない。
「いつものが来た」。そのような感じだったのだ。
シュショテはずっと以前から、その何かに悩まされているのかもしれない。
あれは別に神経が過敏な彼が、偶然目にした幻なんてものではなかった。シュショテは本当にヤバいものの来襲を予感していた?
いずにれしろ、彼には何か隠していることがあるのだろう。
そして、もしかしたらそれは、シュショテという少し不思議な少年の謎を解き明かすような何かなのかもしれない。
私はそんなことを考えながら街路を歩いている。シュショテとアリューシアを二人きりにするべきではなかったのかもしれないと今更ながら後悔している。
しかし私はその警告を無視してしまう。
嫌な予感を覚えながらも、義務のほうを優先してしまったわけだ。
最初の酒場はすぐに見つかった。麦酒のジョッキの形をした鉄製の看板が目に入り、私は臆することなくその扉を開ける。
そこはまさに望んでいたような酒場だった。
物騒な武器を持った男たちが、賭け事に興じたり、酒を片手に談笑したりして時間を潰している。とても騒がしくて賑やかだ。
大声で騒いでいる男たちは、明らかに場違いな私のような身なりの客が入ってきても、誰も気に留めなかった。
いや、一瞬だけ空気が張り詰めた気がする。
しかしそれは本当に一瞬で、ちらりと私に目線を送っただけで、すぐにまた喧噪の中に帰っていった。
もしかしたら私が酒場の扉を開けたその一瞬、傭兵たちは思ったのかもしれない。俺に巨万の富をもたらす雇い主が来たのか、と。
しかし彼らの緊張感が瞬時に緩んだということは、私のような男が、そのような特別な仕事を携えているわけがないと判断したに違いない。
私は無礼にならないように意識しながら、酒場にいる傭兵たちをさりげなく観察する。
塔で雇うことになったとしても、彼らと顔を合わすことはほとんどないであろうが、同じ敷地内で生活するのだし、バルザ殿のことを思えば、出来るだけ感じの良い人を選ぶべきであろう。
しかし私の眼には皆、同じような男たちに見える。
年齢もバラバラなら、身に着けている武器も違う。体格も肌の色も様々だ。
中には女性の剣士だっているようだ。
それでも傭兵たちの醸し出している雰囲気は同じ。一言で言えば「乱暴者」。それ以上でもそれ以下でもない。
「何を飲む?」
カウンターに辿り着いても、まだ傭兵たちを観察していた私に向かって、酒場の主人がさっさと何かを注文しろといった感じで尋ねてきた。
「え? あ、えーと、麦酒を」
「何しに来た、あんた?」
目の前にジャッキを乱暴に置き、酒を豪快に注ぎながら主人が聞いてきた。「どっち側だ? 雇う側か、雇われる側か? まあ、雇う側に決まっているか」
主人はかなり不躾な視線で私の姿を観察してくる。着ている衣服は地味な安物。貴金属も身に着けていない。私はおそらく、三流の雇い主だと判断されたに違いない。
「優秀な傭兵を雇いたいと思って、ここに来たんだけど」
「来る店を間違えたようだな。ここの傭兵は、農地を守ったり、馬車のお守りなんてしないぜ。あいつらは命を張った仕事しかしない。すなわち単価が高い。戦争か、ドラゴン退治か、危険な未開の地の探索か」
「実は僕は魔法使いの塔の主の代理人で、その塔を守るための傭兵を雇いたくて、ここに来たんだけど」
嘘をついても仕方ない。正直に魔法使いの手先だと言ったほうが、話しはスムーズに運ぶはずである。
実際、主人の態度は変わったようだ。やはり、このような場所であっても、魔法使いという肩書は効力を発揮する。
私はそう確信してはいるが、心の端っこのほうで嫌な予感を覚えていることも事実なのである。
その原因は多分あれだ。この街に入る前に、シュショテが漏らした言葉。
彼は何かに怯えていた。
あの姿が私の脳裏から離れないのである。
あれが何かの前触れでなければ、いったい何だというのだ。
いつだって事件が起きる前に、何らかの予兆があるというのは、神話や物語などが教えるところである。
あのときのシュショテの態度というのは、そのような類のものに違いないのだ。
シュショテは本気で何かに怯えていた。今にしても思えば、その怯え方には手慣れた雰囲気すらあったかもしれない。
「いつものが来た」。そのような感じだったのだ。
シュショテはずっと以前から、その何かに悩まされているのかもしれない。
あれは別に神経が過敏な彼が、偶然目にした幻なんてものではなかった。シュショテは本当にヤバいものの来襲を予感していた?
いずにれしろ、彼には何か隠していることがあるのだろう。
そして、もしかしたらそれは、シュショテという少し不思議な少年の謎を解き明かすような何かなのかもしれない。
私はそんなことを考えながら街路を歩いている。シュショテとアリューシアを二人きりにするべきではなかったのかもしれないと今更ながら後悔している。
しかし私はその警告を無視してしまう。
嫌な予感を覚えながらも、義務のほうを優先してしまったわけだ。
最初の酒場はすぐに見つかった。麦酒のジョッキの形をした鉄製の看板が目に入り、私は臆することなくその扉を開ける。
そこはまさに望んでいたような酒場だった。
物騒な武器を持った男たちが、賭け事に興じたり、酒を片手に談笑したりして時間を潰している。とても騒がしくて賑やかだ。
大声で騒いでいる男たちは、明らかに場違いな私のような身なりの客が入ってきても、誰も気に留めなかった。
いや、一瞬だけ空気が張り詰めた気がする。
しかしそれは本当に一瞬で、ちらりと私に目線を送っただけで、すぐにまた喧噪の中に帰っていった。
もしかしたら私が酒場の扉を開けたその一瞬、傭兵たちは思ったのかもしれない。俺に巨万の富をもたらす雇い主が来たのか、と。
しかし彼らの緊張感が瞬時に緩んだということは、私のような男が、そのような特別な仕事を携えているわけがないと判断したに違いない。
私は無礼にならないように意識しながら、酒場にいる傭兵たちをさりげなく観察する。
塔で雇うことになったとしても、彼らと顔を合わすことはほとんどないであろうが、同じ敷地内で生活するのだし、バルザ殿のことを思えば、出来るだけ感じの良い人を選ぶべきであろう。
しかし私の眼には皆、同じような男たちに見える。
年齢もバラバラなら、身に着けている武器も違う。体格も肌の色も様々だ。
中には女性の剣士だっているようだ。
それでも傭兵たちの醸し出している雰囲気は同じ。一言で言えば「乱暴者」。それ以上でもそれ以下でもない。
「何を飲む?」
カウンターに辿り着いても、まだ傭兵たちを観察していた私に向かって、酒場の主人がさっさと何かを注文しろといった感じで尋ねてきた。
「え? あ、えーと、麦酒を」
「何しに来た、あんた?」
目の前にジャッキを乱暴に置き、酒を豪快に注ぎながら主人が聞いてきた。「どっち側だ? 雇う側か、雇われる側か? まあ、雇う側に決まっているか」
主人はかなり不躾な視線で私の姿を観察してくる。着ている衣服は地味な安物。貴金属も身に着けていない。私はおそらく、三流の雇い主だと判断されたに違いない。
「優秀な傭兵を雇いたいと思って、ここに来たんだけど」
「来る店を間違えたようだな。ここの傭兵は、農地を守ったり、馬車のお守りなんてしないぜ。あいつらは命を張った仕事しかしない。すなわち単価が高い。戦争か、ドラゴン退治か、危険な未開の地の探索か」
「実は僕は魔法使いの塔の主の代理人で、その塔を守るための傭兵を雇いたくて、ここに来たんだけど」
嘘をついても仕方ない。正直に魔法使いの手先だと言ったほうが、話しはスムーズに運ぶはずである。
実際、主人の態度は変わったようだ。やはり、このような場所であっても、魔法使いという肩書は効力を発揮する。
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