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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 32)不穏な噂
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「あ、あんたが魔法使い?」
主人の態度と、私を見つめるその視線の中に、「恐れ」が混ざり始めた。
「いや、僕は違う。その代理人さ」
「証明するものは?」
「ないよ。しかし契約が成立すれば、今日のうちに、その塔に連れて帰るつもりだ。そのとき魔法で帰るから、僕が魔法使いの代理人だということは証明出来るはずだ」
「なるほど、そうか、わかった。いいだろう。どんな傭兵が欲しい?」
さっきとはまるで変った表情と口調で、酒場の主人は私に尋ねてくる。
私のほうも、馴れない交渉のはずなのに、妙に落ち着いた気分だった。私の後ろにはプラーヌスという、とてつもない大魔法使いがいるという安心感が、この自信をもたらしているのかもしれない。
「堅実で誠実で優秀な傭兵が三十人欲しい」
「三十人か、なかなかの大部隊だな。いくら出せるんだ?」
「月に金貨三枚は約束出来るはずだ。その代わり、しばらくこの塔で働き続けて欲しいのだけど」
「三十人の部下を従えている傭兵団なんてここにはいない。混成部隊になるが?」
「別に構わないよ」
むしろ、そっちらのほうが都合は良いはずだ。
三十人の傭兵団を丸々雇ったりなんかしたら、その部隊が一致団結して、隊長であるバルザ殿に抵抗することがあるかもしれない。
少なくとも今の副隊長よりも力を持ってしまうはず。その三十人の部隊が最大勢力になってしまうのだから。
バルザ殿も一つの部隊を丸ごと抱えるのは、面倒に思うことであろう。
「腕の良い傭兵を紹介してやる。しかしすぐに契約を結んだほうがいいぞ。ヘンリー王が暗殺されたという噂があるのさ。噂が本当ならば、またあちこちで小競り合いが始まるだろう。傭兵たちの相場が騰がる。暴騰するぜ」
私を焦らせるための嘘の情報かもしれない。しかし私はヘンリー王という名前に引っかかった。
「ヘンリー王って確か?」
「ああ、キャバル国の王だ。王位についたばかりなのに、暗殺されたのだ。いや、王位に就いたばかりだから、政権は不安定だったのかもしれないな」
確かアリューシアの生家、ボーアホーブ家の領地があるのがキャバル国ではなかったか?
ということはその噂がもし本当ならば、彼女の生活にもいくらかの影響が出るかもしれない。
「それはどのくらい確かな情報なのかな?」
「さあな。いまのところ、あくまで噂というだけさ。しかしキャンバル国で何かあったのは間違いない」
「キャンバル国の貴族に知り合いがいるから、とても心配な情報だ」
「へえ、あんたもなかなか、顔が広いね」
まあ、別にボーアホーブ家の領主が暗殺されたわけではないのだ。
アリューシアやボーアホーブ家に多少の影響があるとしても、それほど大きなものではないのかもしれない。
それよりも私が急がなければいけない仕事は傭兵との契約だ。
「よし、よし、とっておきの傭兵たちを紹介しよう。斡旋料は金貨三枚でいいだろう」
酒場の主人がそう言ってきた。
「え?」
ああ、この主人にも報酬を支払わなければいけないわけか。私は少し迷ったが、その要求を飲むことにした。
「わかった、君を信用して、金貨三枚支払うよ。しかし傭兵の質は保証して欲しい。下手な奴を紹介すれば、僕の主の魔法使いが黙ってはいない」
「おいおい、俺を脅すのか?」
「す、すまない、少しきつい言い方になってしまったけれど・・・」
この私がプラーヌスのような物言いをしてしまった気はする。少し自己嫌悪を感じたが、交渉を成立させるためには仕方のないことだ。
「だけどこれは脅しじゃなくて本気だと思って欲しい」
「俺だってこの商売は長い。この先もここで酒場を続けるつもりだ。魔法使いを敵に回すつもりはない」
「ああ、あなたを信用している」
「では、契約成立だな。しかし月に金貨三枚の報酬で雇えるのは、中の中のレベルだ。それは理解してくれ。その範囲内で良い傭兵を紹介する」
私が同意すると、酒場の主人が大声で呼び掛けた。
「スザンナ! あんた向きの仕事だ!」
主人の態度と、私を見つめるその視線の中に、「恐れ」が混ざり始めた。
「いや、僕は違う。その代理人さ」
「証明するものは?」
「ないよ。しかし契約が成立すれば、今日のうちに、その塔に連れて帰るつもりだ。そのとき魔法で帰るから、僕が魔法使いの代理人だということは証明出来るはずだ」
「なるほど、そうか、わかった。いいだろう。どんな傭兵が欲しい?」
さっきとはまるで変った表情と口調で、酒場の主人は私に尋ねてくる。
私のほうも、馴れない交渉のはずなのに、妙に落ち着いた気分だった。私の後ろにはプラーヌスという、とてつもない大魔法使いがいるという安心感が、この自信をもたらしているのかもしれない。
「堅実で誠実で優秀な傭兵が三十人欲しい」
「三十人か、なかなかの大部隊だな。いくら出せるんだ?」
「月に金貨三枚は約束出来るはずだ。その代わり、しばらくこの塔で働き続けて欲しいのだけど」
「三十人の部下を従えている傭兵団なんてここにはいない。混成部隊になるが?」
「別に構わないよ」
むしろ、そっちらのほうが都合は良いはずだ。
三十人の傭兵団を丸々雇ったりなんかしたら、その部隊が一致団結して、隊長であるバルザ殿に抵抗することがあるかもしれない。
少なくとも今の副隊長よりも力を持ってしまうはず。その三十人の部隊が最大勢力になってしまうのだから。
バルザ殿も一つの部隊を丸ごと抱えるのは、面倒に思うことであろう。
「腕の良い傭兵を紹介してやる。しかしすぐに契約を結んだほうがいいぞ。ヘンリー王が暗殺されたという噂があるのさ。噂が本当ならば、またあちこちで小競り合いが始まるだろう。傭兵たちの相場が騰がる。暴騰するぜ」
私を焦らせるための嘘の情報かもしれない。しかし私はヘンリー王という名前に引っかかった。
「ヘンリー王って確か?」
「ああ、キャバル国の王だ。王位についたばかりなのに、暗殺されたのだ。いや、王位に就いたばかりだから、政権は不安定だったのかもしれないな」
確かアリューシアの生家、ボーアホーブ家の領地があるのがキャバル国ではなかったか?
ということはその噂がもし本当ならば、彼女の生活にもいくらかの影響が出るかもしれない。
「それはどのくらい確かな情報なのかな?」
「さあな。いまのところ、あくまで噂というだけさ。しかしキャンバル国で何かあったのは間違いない」
「キャンバル国の貴族に知り合いがいるから、とても心配な情報だ」
「へえ、あんたもなかなか、顔が広いね」
まあ、別にボーアホーブ家の領主が暗殺されたわけではないのだ。
アリューシアやボーアホーブ家に多少の影響があるとしても、それほど大きなものではないのかもしれない。
それよりも私が急がなければいけない仕事は傭兵との契約だ。
「よし、よし、とっておきの傭兵たちを紹介しよう。斡旋料は金貨三枚でいいだろう」
酒場の主人がそう言ってきた。
「え?」
ああ、この主人にも報酬を支払わなければいけないわけか。私は少し迷ったが、その要求を飲むことにした。
「わかった、君を信用して、金貨三枚支払うよ。しかし傭兵の質は保証して欲しい。下手な奴を紹介すれば、僕の主の魔法使いが黙ってはいない」
「おいおい、俺を脅すのか?」
「す、すまない、少しきつい言い方になってしまったけれど・・・」
この私がプラーヌスのような物言いをしてしまった気はする。少し自己嫌悪を感じたが、交渉を成立させるためには仕方のないことだ。
「だけどこれは脅しじゃなくて本気だと思って欲しい」
「俺だってこの商売は長い。この先もここで酒場を続けるつもりだ。魔法使いを敵に回すつもりはない」
「ああ、あなたを信用している」
「では、契約成立だな。しかし月に金貨三枚の報酬で雇えるのは、中の中のレベルだ。それは理解してくれ。その範囲内で良い傭兵を紹介する」
私が同意すると、酒場の主人が大声で呼び掛けた。
「スザンナ! あんた向きの仕事だ!」
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