私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第五章 33)女性の傭兵

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 酒場に居る傭兵たちのほとんどが、酒を飲み、仲間たちと語らいながらも、それとなく耳をそばだてて、私と主人の話しを伺っていたのではないだろうか。
 自分たちに仕事が回ってくるかもしれないのだ。当然、気になるものであろう。
 しかし主人が一人の傭兵の名前が呼んで、その緊張が一気に緩む。

 スザンナ、いったいどのような男だろうか、私は椅子から立ち上がった男に視線をやる。
 小柄で細身の男性だった。
 誰も彼も私の体重の二倍はありそうな連中ばかりが揃っている中、その人物はあきらかに小さくて貧弱な体格。
 体格が大きければいいというものでもないが、何か粗悪品をあてがわれたような気分にもなる。

 やはりこの酒場の主人を信用するべきではなかったのだろうか。私の脳裏にそんな不安が過った。
 とは言っても、まだ彼に謝礼を払ったわけではないのだから、いくらでも拒否することは出来るわけであるが。

 「私を呼んだか?」

 私はその声を聴いて、更に驚いた。女性の声だった。
 腰に剣をぶら下げて、肩当てなど軽装備の防具を身に着けている。他の傭兵たちと変わらぬ出で立ちではあるが、その声と小柄な体格、そしてわずかに垣間見える胸の膨らみ、この人物は間違いなく女性。

 「あんた向きの仕事だ。この雇い主さんはあんたが連れている仲間も全員雇いたいらしい。何人いたっけ?」

 「いますぐ動けるのは八人だ。三人ほど違う仕事に出ているが、数日後には帰ってくるだろう」

 私よりも若いかもしれない。
 女性の剣士や傭兵など、少なくない世の中であるが、そういう女性たちは男性に劣らない体格の者が多いはず。
 それを思うと彼女は小柄な部類。顔立ちにも厳つさがない。
 しかしその眼差しは、腰のぶら下げている剣と同じくらい鋭い。日に焼けた浅黒い肌も精悍な印象で、引き締まった身体も敏捷そうだ。

 彼女はその鋭い眼差しで私を見返してくる。
 今にも舌打ちをしてきそうな苛立ちの表情。私のことが気に入らないのかもしれない。あるいは彼女を値踏みするような私の視線が気に入らないのだろうか。

 「スザンナだ、女だが剣の腕も立つ。部隊の統率も取れている。『バングルス』という傭兵団を先代から引き継いだ。心配するな、彼女以外は全員男の傭兵だ、そうだったよな?」

 「いや、私を含めて女性は三人。男は八人だ」

 「そうだったか? どっちにしてもお勧めの傭兵団だ、どうだ?」

 仲介者である酒場の主人は自信満々な表情で言ってくる。
 私が気に入ることを確信しているのだろうか、それとも異質な女性傭兵を薦めている不安の裏返しなのだろうか。いずれにしろ、その自信に溢れる態度は演技がかってはいた。

 「おっと、忘れていた、彼は魔法使いの塔の主の代理人だ」

 主人は私の紹介も始めた。「塔を守る仕事をして欲しいということだ」

 「魔法使いだって? 魔法使いの手先になるわけか、この者に雇われることになれば」

 「ああ、うん。出来るだけ長い期間、塔で仕事をして欲しい。一年とか二年とか。塔を守る部隊長が君たちを気に入れば、更にもっと長く」

 私は報酬についての詳しい話しと、衣食住は保証するという約束。敵は未開の蛮族で、それほど恐ろしい相手ではないことを説明する。
 決して致死率は高くない仕事だということを、それとなく匂わせておいた。

 スザンナという傭兵を特に気に入ったわけではないのだけど、こちらには選り好みしている時間がない。
 彼女の傭兵団を雇うことが出来たとしても、まだ八人だけ。彼女たち以外に、他に傭兵を探さなければいけない。
 この酒場の主人から三十人の傭兵を斡旋されるよりも、別の酒場を見て回ったほうがいい気がする。
 彼を信頼しないわけではないが、この主人だけを頼るのは危ない。

 他の酒場を回らなければいけないとすれば、更に時間が掛かる。
 長い間、アリューシアたちを放っておくわけにはいかないのだ。本当に急がなければいけない。

 「馬鹿にしないでくれと言いたいね! そんな仕事ならば老兵に頼みな。それとも私たちの部隊は、あんたにはそんなふうに見えていたのか?」

 しかしスザンナは何やら不満を感じているようだった。

 彼女は声を荒げている。私を相手にではなくて、酒場の主人にだ。
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