私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第五章 34)遠くからの合図

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 「どうして私たちが、塔の防備なんて仕事をしなければいけないのだ! しかも数年もの間!」

 「気に入らないのか? あんたたちの部隊に打ってつけの仕事だと思うけど」

 「何だって?」

 スザンナがカウンターを叩いた。私のジョッキがぐらついて、酒がこぼれ出る。
 別に酒など惜しくはないが、スザンナという傭兵がこの仕事に対して、これほどの嫌悪感を示していることに戸惑ってしまう。

 「どうしてだ、スザンナ? 先代から、あんたの傭兵団のことを知っている。血に飢えた部隊じゃない。むしろ他の傭兵団に比べると大人しい部類。その代わり正規軍並みに統率が取れている。俺はそこを評価している。このような仕事に向いていると思うんだ」

 酒場の主人が諭すような口調で言い返した。
 彼はどうやらスザンナがそのような反応を示すかもしれないことを予測していたのかもしれない。待っていましたとばかりに用意していた言葉を返していく。

 「私は父のそのようなやり方が気に入らなかった。バングルスをもっと大きな傭兵団にするつもりなのさ!」

 「バングルスはそんな傭兵団じゃない」

 「バングルスがどのような傭兵団になるかは、リーダーの私が決める。あんたが口出しすることじゃない」

 この仕事を引き受ける気はない。スザンナはそんな眼差しを送ってきた。そしてクルッと背を向け、拒否の意思をはっきりと示すよう、彼女は出口に向かって歩き出す。

 「よし、ならばデイにも相談しよう。彼を呼んでくれ。彼は私の提案に賛成するはずだ」

 酒場の主人が彼女の背中に向かって大声で言う。

 「デイだって? バングルスは彼の部隊じゃない。私の部隊だ。仕事を引き受けるかどうかは私が決める!」

 スザンナはその言葉にカッとしたようで、わざわざ身を翻し、酒場の主人に詰め寄っていく。「いつまでも子供扱いしやがって!」

 「大人ならば、この仕事を引き受けると思うぜ。とにかく俺はデイと話す」

 「バングルスは私の部隊だ。何度も同じことを言わせるんじゃない!」

 私は二人の熱い激論を、ただただ戸惑いながら見つめていた。
 スザンナはこの仕事を引き受ける気がないようだ。塔の防備などという地味な仕事になど、面白みがないというのが彼女の意見。
 一方、酒場の主人のほうはこの仕事を熱心に薦めている。私から受け取る高額な斡旋料が目当てなのかもしれないが、この仕事は彼女の傭兵団に向いていると本気で思っている様子。

 更に二人の話しから判断する限り、酒場の主人はスザンナの父の知り合いで、スザンナのことも子供のときから知っているようである。
 彼は何やら、スザンナの身を案じている。危険ではあるが、もっと実入りのいい仕事を引き受けて、傭兵団を大きくさせたいという彼女の野望を牽制しているのだ。

 二人のそのような関係性が、交渉を複雑にしているような気がする。私は何やら妙な情誼の流れに巻き込まれてしまったようだ。
 こちらには時間がないのに。それなのに二人は、同じ話しをぐるぐると循環している。
 私もさすがに苛々してきた。話し合いは二人に任せて、その間、他の酒場も当たってみよう。結論だけを教えてくれ。
 私はそう思って、酒場の主人に一言断りを入れようとしたときだった。

 そのとき、酒場の扉が揺れた。いや、扉だけじゃない。窓も揺れた。大地そのものが揺れたのかもしれない。
 酒場に居る客や傭兵たちが、何が起きたのかと顔を見合わせる。酒場の主人とスザンナも、そちらに気を取られた。
 もちろん、私もどういうことなのかと混乱する。

 数人の者が酒場を出て行った。外の様子を伺いに出たのだ。私たちはとにかく、男たちが返ってくるのを待つ。
 彼らが戻ってくるまで、どれくらいの時間が経ったであろうか。その間、私たちはもう交渉の話しなどせずに、無言で酒だけを飲んでいた。

 「おい! 大聖堂が崩れたらしいぞ」

 やがて、血相を変え、一人の男が戻ってきた。

 何だって? 大聖堂が崩れただって? 

 地震か。他国の侵略か。酒場に居る傭兵たちは口々にそんなことを口走る。そんな中、私はすぐにそれはシュショテとアリューシアの仕業だということに思い至った。
 何か起きたときは、あの大聖堂を壊して合図するから。別れ際、そのような言葉をアリューシアが言っていた。私はそれを確かに記憶している。

 しかし本当にそんなことを実行するなんて! 
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