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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第七章 8)可愛い生き物
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アリューシアが身を乗り出すようにして、私に近づいてくる。そのせいで彼女の衣服の一部が私の腕に触れた。
それはやけに柔らかい感触だった。ただ袖口が触れただけなのに、アリューシアの肌に触れたような気がして、私は変にドギマギしてしまい、彼女が近づいた分だけ身体を後ろにのけ反らせる。
「ねえ、本当にプラーヌス様の子供なの?」
そんな私の気も知らずに、アリューシアは私の顔に唾を吐きかけるようにして迫ってくる。
「い、いや、わからない。もしかしたら、そういうこともあるかもしれないってことさ」
私は落ち着いたふりをして言い返す。
プラーヌスが一日の大半、何をして過ごしているかなんてわからない。彼と顔を合わせるのは食事のときくらいだから。
しかし彼に妻や子供がいるとは思えないことも事実だ。ましてや、妻子がこの塔に隠れて暮らしているなんてことはありえないだろう。彼には悲しいくらいに孤独が似合う。
「そうよね」
アリューシアは姿勢を戻す。しかしまだ表情は曇ったままだ。
「おそらく客人の誰かの子供だろうね。最近、この塔には来客が多いからね。そう考えるほうが、はるかに自然だ」
「うん、私もそう思う」
ようやく、アリューシアの表情から雲が晴れたように思える。それを証拠に、泣き出した赤子をあやし始めた。
どうやら、その赤子はすっかり彼女に懐いたようで、アリューシアの注意が自分に向かられたのがわかると、すぐに機嫌が良くなった。
しかし私の表情から雲は晴れていないだろう。客の子供かもしれないと自分で言いながら、こんなところに赤子を連れてやってくる客がいるとは思えないことも事実だった。
塔への旅はかなりタフである。幼子にとって身体に毒。自分の子供を、これほど危険な目に遭わす親なんているだろうか。
もちろん客たちにはそれぞれの事情というものがあるはずである。赤子を連れて旅をせざるを得なかったのかもしれないが。
「でもプラーヌス様の子供ならいいのに」
ニコニコ微笑む赤子の顔を見ながら、アリューシアが驚くべきことを言い出した。
「何だって?」
「だって、こんなに私に懐いているんだから。私、この子のママになら、なれると思う」
「冗談でもそんな言葉を聞いたら、本当の母は怒るだろうけど」
「きっと私のほうが、この子のママにふさわしいわ。だから戦う!」
私がその戦う相手であるかのように、アリューシアはきりっとした視線を私に向けてくる。
「ちょ、ちょっと待てよ。君はあり得ないことを言っている。実の母から赤子を奪ってどうするんだよ! それに多分、プラーヌスの子じゃないぞ」
「そうね、わかってるけど。そうだったらいいのにって、言ってるだけよ」
とてもわかっているとは思えない表情で、アリューシアは私に言い返してくる。
「多分、今頃、母親はこの子を探し回っているだろう」
これ以上、この赤子とアリューシアを一緒に居させないほうがいいかもしれない。更にアリューシアはこの子に情を抱いてしまうだろう。
「さあ、母親を探しに行こう」
私は立ち上がる。
「いやよ」
「アリューシア、君はこのようなことに時間を費やしている場合じゃないはずだ。重要なことを忘れているんじゃないのか。それとも、もう全てを諦めたのか」
「それはそれ。これはこれよ!」
本当ならば、プラーヌスからの課題をクリアーするために、必死で水晶玉の中の魔族と向かい合っていなければいけない時間のはずだ。それなのにアリューシアは可愛い生き物に夢中になっている。
「アリューシア。この子は僕が預かる。君は訓練室に帰って勉強の時間だ!」
「ちょっと、触んないでよ!」
私が赤子に手を伸ばそうとすると、アリューシアは本当に恐ろしい視線を私に向けてきた。
私とこの赤ちゃんを引き離したら、あんたを殺すわよ。そんな視線だ。
私は差し伸ばしかけた手を慌てて引っ込める。
しかし彼女の視線も瞬時に緩んだ。アリューシアだって、現実の何もかも忘れ去ったわけではないようだった。
「わかった。赤ちゃんを返すわ」
アリューシアは大きなため息を吐いて、言った。「だけど、その前に一つだけ、叶えて欲しいことがあるんだけど」
「な、何さ?」
「描いてよ」
「何を?」
「絵に決まっているでしょ。この子と私の絵」
「何だって?」
「この子とと出会った証しに」
それはやけに柔らかい感触だった。ただ袖口が触れただけなのに、アリューシアの肌に触れたような気がして、私は変にドギマギしてしまい、彼女が近づいた分だけ身体を後ろにのけ反らせる。
「ねえ、本当にプラーヌス様の子供なの?」
そんな私の気も知らずに、アリューシアは私の顔に唾を吐きかけるようにして迫ってくる。
「い、いや、わからない。もしかしたら、そういうこともあるかもしれないってことさ」
私は落ち着いたふりをして言い返す。
プラーヌスが一日の大半、何をして過ごしているかなんてわからない。彼と顔を合わせるのは食事のときくらいだから。
しかし彼に妻や子供がいるとは思えないことも事実だ。ましてや、妻子がこの塔に隠れて暮らしているなんてことはありえないだろう。彼には悲しいくらいに孤独が似合う。
「そうよね」
アリューシアは姿勢を戻す。しかしまだ表情は曇ったままだ。
「おそらく客人の誰かの子供だろうね。最近、この塔には来客が多いからね。そう考えるほうが、はるかに自然だ」
「うん、私もそう思う」
ようやく、アリューシアの表情から雲が晴れたように思える。それを証拠に、泣き出した赤子をあやし始めた。
どうやら、その赤子はすっかり彼女に懐いたようで、アリューシアの注意が自分に向かられたのがわかると、すぐに機嫌が良くなった。
しかし私の表情から雲は晴れていないだろう。客の子供かもしれないと自分で言いながら、こんなところに赤子を連れてやってくる客がいるとは思えないことも事実だった。
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もちろん客たちにはそれぞれの事情というものがあるはずである。赤子を連れて旅をせざるを得なかったのかもしれないが。
「でもプラーヌス様の子供ならいいのに」
ニコニコ微笑む赤子の顔を見ながら、アリューシアが驚くべきことを言い出した。
「何だって?」
「だって、こんなに私に懐いているんだから。私、この子のママになら、なれると思う」
「冗談でもそんな言葉を聞いたら、本当の母は怒るだろうけど」
「きっと私のほうが、この子のママにふさわしいわ。だから戦う!」
私がその戦う相手であるかのように、アリューシアはきりっとした視線を私に向けてくる。
「ちょ、ちょっと待てよ。君はあり得ないことを言っている。実の母から赤子を奪ってどうするんだよ! それに多分、プラーヌスの子じゃないぞ」
「そうね、わかってるけど。そうだったらいいのにって、言ってるだけよ」
とてもわかっているとは思えない表情で、アリューシアは私に言い返してくる。
「多分、今頃、母親はこの子を探し回っているだろう」
これ以上、この赤子とアリューシアを一緒に居させないほうがいいかもしれない。更にアリューシアはこの子に情を抱いてしまうだろう。
「さあ、母親を探しに行こう」
私は立ち上がる。
「いやよ」
「アリューシア、君はこのようなことに時間を費やしている場合じゃないはずだ。重要なことを忘れているんじゃないのか。それとも、もう全てを諦めたのか」
「それはそれ。これはこれよ!」
本当ならば、プラーヌスからの課題をクリアーするために、必死で水晶玉の中の魔族と向かい合っていなければいけない時間のはずだ。それなのにアリューシアは可愛い生き物に夢中になっている。
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