私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第一章 4)アリューシアという少女

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 食事の時間、わざわざそれを邪魔してまで何かを報せに来るということは、大きなトラブルが起きたという証拠だ。塔の中をグロテスクに改造された人たちが現れたとき、バルザ殿がまだ門番に就任される前、蛮族が襲来したときもそうだった。

 「何か起きたのかな?」

 私はうんざりしながら立ち上がり、扉を開ける。扉の外には私の助手兼通訳、アビュが立っていた。
 私の半分くらいの年月しか生きていない、まだ子供といってもいいような年齢の女の子だけど、かなり優秀な助手である。

 「あっ、ボス。お食事中なのにご免なさい。でもお客さんがやってきて」

 アビュが言った。

 「お客?」

 「うん、凄い豪華な馬車で、大人数でやってきたから、多分、身分の高い人たちだろうって思って・・・」

 「もう到着したのかな。王の遣いだろう、きっと」

 私はプラーヌスのほうを振り返る。

 「思ったよりも早かったようだね」

 この緊急の報せは悪い報せではないようだった。プラーヌスもナフキンで口を拭きながら、すぐに立ち上がる。

 「でも何かおかしいんだよね」

 しかしアビュの表情は優れなかった。

 「何かって何が?」

 「うん、私と同じ歳くらいの子供が来たんだよ」

 「子供?」

 「一番偉そうにしている人が私と同じ歳くらいの子供で、家来たちを顎で使ってて、何とも感じが悪いんだ」

 王の遣いに子供が来るなんてことはあるのだろうか。王宮の事情について疎いのでよくわからないが、しかし大切な使節に、アビュとさほど変わらない子供を寄こすなんて、やはり無礼だと思う。

 「しかもその子、女の子なのよ」

 アビュが更にそう付け加えた。

 「女の子? で、その女の子たちは何て名乗っている?」

 「えーと、何だっけな・・・、ボーアホーブ家だったけ? そう言えば、この塔の主が聞けばすぐにわかってくれるはずだって」

 私はプラーヌスの表情を伺うように見る。

 「ボーアホーブ家か・・・、どこかで聞いたことのある名前だな」

 「有名な貴族の名前だよね」

 確かではないが、そのような名前をどこかで聞いたことがある。

 「ああ、思い出した。ボーアホーブ、あのボーアホーブ家か」

 しばらく思案げに宙を見つめていたプラーヌスが言った。「彼らは王の遣いではなさそうだ。会う必要はない。すぐに追い返してくれ」

 到着まで2、3日もかかると言っていたのだから、今日の夜に到着するなんてありえないとは思っていたのさ。
 プラーヌスはそう言って食卓に戻ろうとする。

 「でもこの塔まで、はるばるやってきた客を追い返すのはどうかと思うけど。一応、知り合いなんだろ?」

 「食事の邪魔をする客に会う必要はない。何が何でも会いたいというならば、明日改めて来ればいい。今夜は塔の外で野営でも何でも」

 させるのだ。
 プラーヌスがそう言い終えぬうちに、廊下のほうからざわめきが聞こえてきた。
 お嬢様、いけません! そんな男性の声がする。
 でも、きっとこの部屋のはずよ。若い女性の声が間近で響く。

 私たちは一斉に扉の方に目をやった。そこにはアビュと同じくらいの年齢の女の子が立っていた。
 舞踏会にでも出席するかのような美しいドレスを纏っている。金色の髪は内巻きにくるりとカールされ、頭よりも大きな髪飾りをつけていた。

 「あ、ああ! やっと見つけましたわ!」

 少女はドレスの襟口を掴み、その手を震わせながら、込み上げてくる感情が抑えられないといった表情で、そのようなことを口にしていた。
 透き通るような白い肌、一見して気の強そうな眼差し、しかし人形のようにきれいな少女だった。
 その背後には、青年が眉をひそめた表情で立っていた。お嬢様、自重して下さい、彼はそう小声でつぶやいていた。
 しかしそのお嬢様のほうは、その声に耳を貸さず、部屋の中にずかずかと入り込んでくる。

 「お久しぶりです、プラーヌス様!」

 それどころか、その少女はそう言ったかと思うと、プラーヌスに飛びつくようにして抱きついた。
 何て恐れ知らずなことをするんだ! 私とアビュは思わず顔を見合わせた。

 「誰だ、君は?」

 その少女に抱きつかれたまま、プラーヌスは一切、表情を変えずそう言った。

 「アリューシアです、プラーヌス様。あのときの女の子はこんなに大きく成長しました」

 「アリューシア? 知らないね」

 プラーヌスはそう言うと、自分に抱きついているアリューシアの身体をそっと引き剥がし、私たちの前から消えた。
 プラーヌスは本当に掻き消えたのだ。まるで亡霊のように。それは比喩でも何でもない。彼は魔法を使って、私たちの前から瞬間移動した。
 アリューシアと名乗った少女は、呆然と辺りを見渡す。
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