灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)

@taka29

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2 Blue Brain BBomber

#4α

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T駅には往時、ランドマークになっていた雨風を避けるためのドームと、それを支える捻れた鼓のような柱がある。
そしてその柱の間には地下に降りられる長い階段があった。
その地下の暗闇から『それら』は登って来た。
最初クロエはそれを行方不明者の生き残りかと思った。
だが一瞬でそうでない事がわかった。
人影の第一印象は、巨大ビニール風船を持ったヴェネチアカーニバルの仮装、というあつらえだった。
「クロエ、あれ……」
オクショウが指差す先にいるそれは、人だった。ただし正確には人でなかった。
帽子の下の顔は人の配置と同じ二対の目と口があった。但し眼孔は乳白色の薄い模様の入った硬質にみえるカバーに覆われ眼球にあたる部位は見当たらなかった。
「……!」
クロエはその異形を見て、すぐに理解できた。
あいつはわたしの仇だ。
「……オクショウ、この子をお願い」
クロエはオクショウに気を失った男子を預けると外に面する壁の穴から『それ』に向かって飛びかかっていく。纏った建設シートのグレーが風にはためいた。
「ちょ、ちょっとクロエさん!一人で行っちゃダメだってば!」
オクショウの声が遠く聞こえる。
クロエは階段を登りきり駅前広場に出た人影の背後に強引に着地、背中から躊躇なく槍を突き込んだ。
「「うっぐぅ……!!」瞬間クロエは苦悶の声を上げる。
確かに手応えはあった、だが奇妙なことに『それ』の身体を貫いた槍の痛みが
自身を刺し貫いたような感覚を味わった。背から胸を焼けた鉄棒で貫かれたような激痛
(グッ……)
「……■■■?」
槍で貫かれたまま何事かを呟いて『それ』が振り返った。
「!?」
痛みと混乱で頭の中が真っ白になった。クロエは昔から不測の事態に弱いのだ。
「■■マダ」『それ』は再び何事かを呟いてクロエに掴みかかる。
クロエは咄嵯に身を捩って回避したが、腕を捕まれてしまう。
「!?……離せッ!」
クロエは『それ』の手を払のけ何とか距離をとる。が、痛みで思うように体が動かない。地面に膝を突く。
「■■■■マス」
『それ』はクロエの予想に反して引き抜いた槍を投げ捨てると。握っていた
『風船』の紐をを軽く引いた。
(なっ……)
突然の行動にクロエは対応出来ない。
風船はよく見ると人間の脳髄をシンボル化したような異形の風船だった。
風もないのに本体から生えた吹き流しのようなものがゆらゆらと揺れている。
と次の瞬間、その吹き流しが別個の意思をもった生き物のように動きだし四方に伸びた。かと思うと先端のトゲのような部位を青白く発光させる。
「■■、■■■ネ」
その光を見たクロエは直感的にヤバイと感じた。
(立たないと……)
だが動けない。
吹き流しの先端がクロエに照準を合わせた。
(……ッ!!)
閃光、衝撃、破裂音。
「■■!?」
異形の風船から生えた四つの吹き流しの一つが突然破裂した。
同時に、目の前の『それ』も頭を抱えて苦しむ。
「クロエーッ!まだ生きてるー?」
異形の砲から戻った狙撃銃を左肩に下げオクショウがこちらに
駆けてくる。右手には件の男子を引っ張っている。顔面に青アザが見えるが気のせいだろう、きっと。
「エミ……おそい」
「……無事ならいいけどさぁ……いきなり飛び出さないでよ、ビックリするじゃん」
オクショウの手を借りて立ち上がったクロエは瞳に涙を滲ませそのまま彼女を抱きしめた。
「え?あ、ちょっと、クロエさん、ここ駅前だよ……」
オクショウが照れくさそうに顔を赤くして狼狽するがクロエは気にしない。
「恐かった……本気で死ぬ、って思った……」
「あのぉ……もう死んでるし……」
「心配させてごめん……」
「ま、まあいいか……無茶しちゃダメだよ」
オクショウは困ったように微笑むと、クロエの頭をポンと叩いて離れるように促す。
「ところで、アレどうしようか……」
オクショウはクロエの肩越しに『それ』を見た。
「シ……■■■■■ギィ」
『それ』はクロエ達の存在に気づくと再び何事かを呟きながら近寄ってくる。お化け風船も健在だ。
「とりあえず逃げるしかないね……」
エミが試し撃ちとばかりにお化け風船に狙いを定め、引き金を引く。
乾いた発砲音が響き渡り、弾丸は見事命中。だが予想通りびくともしない。
「ダメみたいだねぇ……どうしよっか?」
オクショウが首を傾げる。
「なぁ、さっきのごん太砲はどうやって撃ったんだ?また撃てない?」
クロエが尋ねる。
「あれは……勢いで出したっていうか……あんまり使いたく……ない」
「どうして?」
「だって、反動とか……半端なく疲れるし、それに……」
「うん?」
「なんか、恥ずかしい」
「…………?」
「と、とにかく、今は逃げよう!早く!」
赤面したエミは話を逸らすかのように急かす。
「私たちだけなら多分、逃げ切る分にはどうにかなりそうだけど
……その場合リョウ君は確実に喰われるね、アレに。せっかく命拾いしたのに」
「……そうだな」
クロエは改めて『それ』を見る。
この異形は、先ほどからずっと同じ言葉を呟いている。
おそらく意味のある言葉ではないのだろうが、何かを訴えているような気がする。
「■■■■……カ……エ…サ…ナ……ヨン………」
「……仕方ないか」
エミは覚悟を決めた。
「クロエ」
「ん?」
「私が囮になる」
「はぁ!?」
「クロエはポコを連れて先に行っててくれる?後で必ず追いつくから」
「ちょっ、何言ってんの?」
「大丈夫だって、こんなおしゃれ風船おじさんにやられる程私はヤワくないし、いざとなったら全力で逃げるから」
エミはいつもの調子で言う。クロエは彼女の軽薄な仮面の下の生真面目さが
嫌いではなかったが、こういう時に発揮されると困ってしまう。
「嫌だ。お前を置いてけるわけないだろ」
「私一人の方がやりやすいからさ」
「そんなこと……」
「じゃあ、他に良い案があるの?あるなら聞くけど」
「それは……」
「ほら、無いんでしょ。なら決まり」
「でも……」
「そこまで言うならクロエさんにお願いがありまーす。私が無事に戻れるようにキスのおまじないをかけてくださーい」
「ふざけてるのか……」
「大マジメ。だからさ、ね?」
クロエはため息をつく。こうなった彼女はテコでも動かない。
「……わかった……死ぬなよ、エミ」
「……だからもう死んでるって、アイツの説明聞いてなかった?」
「……うるさい。約束しろ」
「はいはい、約束しますよっと」
「よし、約束……目、閉じて」
「うん」
クロエとエミは向かい合う……スポットライトが舞台の二人を照らすように……ん!?
「こらーッ!!さっきからなに乳操り合っとるかァー!!」
その時二人と『それ』とお化け風船を威嚇するように
巨大なバギーが四つのヘッドライトを煌々と輝かせ猛スピードで突っ込んできた。
「うわっ、なんだこれ!?」
「車……?」
突然の乱入者に、クロエ達は目を丸くする。
「危ねぇぞ、ボケどもがぁ!轢き殺すぞオラァ!」

つづく
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