10 / 1,861
俺、異世界に来たんだってよ
PHASE-10【王城に入城】
しおりを挟む
「で、なにがそこまでベルヴェットを不機嫌にさせてんだ?」
呼び捨てが気に入らないのか、キッって睨まれてしまった……。
だが、問いに対しては、目を細めてから、顎をしゃくり上げる。
そちらを見ろと言わんばかりだ。
見ろと指示されなくても、眼前の物だから、嫌でも目に入ってくるけどな。――王城。
立派な鉄の城門に、堀、その前には土塁だ。
土塁の高さは三メートルくらい。土塁というよりちょっとした壁だな。
そこを突破しても堀があり、その先には市井を守る城壁よりも高い、二十メートルはありそうな城壁。不機嫌なのが理解できた。
「国民よりも自分を優先している王は暗君だって事か?」
首肯で返してくれた。求めていた答えだったようだ。この調子で気に入ってもらえれば、俺への忠誠ポイントが上がるかもしれない。
――……ちらりとディスプレイを覗けば、この程度で認めるか! とばかりに、ゼロのままだ……。
1ポイントくらいは上がってくれよ……。
「開門!」
案内してくれる兵長みたいな奴がそう言えば、重厚な音を立てながら、鋼鉄製の門が観音開きで開いていく――――。
「……二重かよ……」
呆れるね。同じタイプの門がさらに奥から現れたよ。一つ目の門より金属が新しい。
きっと王城を守るために、新たに造らせたんだな。本当に自分たち優先だな。
横からも嘆息が漏れたのがしっかりと耳朶に届いた。
――――二つ目も通過。さらに城の中へと続く門が現れ、そこも通過すれば、派手な赤色に金刺繍の入った絨毯の上を歩く。
案内する兵長より、更にワンランク上の装備をした近衛兵が守るドアの前へと到着。
――――開かれれば謁見の間だ。
「近くに」
覇気がね~。
追い込まれてんな。どいつもこいつも目の下にクマがあるぞ。
手招きをする王冠をした存在の前まで近づく。
髪型も整っていないボサボサで艶のない金髪だ。招く手も痩せて骨張ってる。
限界きてんな~。完全に詰んだ国だな……。
「兵達より聞いた。お前たちがオークの軍勢を容易く一蹴したと」
俺たちじゃないけどな。横に立つ赤髪美人が一人でやった事だ。
美人は、俺たちの側面に居並ぶ大臣たちを瞥見。
俺もそれを真似て見れば、玉座に座る奴と同じで、力がないのばかりだ。
一人だけ身ぎれいにして、りりしく立っているのはいる。鎧は綺麗に磨かれているが、そこかしこに戦いの傷が目立つ。
一人だけ生気が漲ってる感じだな。
あと、文官みたいなのにも一人、血色がいいのがいる。凄い出っ歯だけど。
でも、ベルヴェットは全体を目にして、ここの状況を判断し、ふっ――て、鼻で笑っていた。
周囲には聞こえていないみたいだけど、俺の耳朶にはしっかり届く。
瞥見が侮蔑の目に変わっている。俺としては、元の世界に帰りたいからな。ここで人間同士がいがみ合うのはよろしくない。
なので――――、
「そうです。自分たちです」
と、素直に応対する。
「「「「おお!」」」」
興奮と歓喜が混じった声が上がる。
もしかしてだけど、たった二人の存在で、この国が救われるとでも思っているのか?
藁にも縋る思いってのは目の前の状況の事なんだろうな。二人だけで一体なにが出来ると?
考える事をやめてるから、視野が狭くなっているみたいだな。
「貴公らは遠き地にて生を受け、降り立った者たちか?」
王様、玉座からプルプルと弱った足腰で立ち上がり、俺たちに近寄りつつ問うてくる。
やってくるじゃなく、降り立つという表現。
俺の事を知っているって事なんだろうか。
遠き地で生まれた、遠き地ってのは日本だな。で、降り立った、あそこがあの世のどこかは分からんが、地上に降り立ってるから間違いじゃないよな。
「はい、まあ」
「「「「おお!」」」」
なんだ? 周囲のお偉いさんは、RPGで言うところの、【○○の村へようこそ】としか言えない村人みたいに、【おお!】しか言えない要員なのか?
喜んでるのはいいけども、こんなガチガチに守られたところで、住人ほっぽり出して籠もってる連中を信用はしてないからな。
「お告げの通りだ」
「お告げ?」
王様、昨夜、俺の事を夢の中のお告げで聞いたらしい。
昨夜って、俺は今日死んで、すぐにこの世界に降りてきたと思ってたけど、タイムラグがあるのか? それともこの王様の作り話か妄想か?
半信半疑だったけど、王様が次ぎに口にした、漆黒のローブに、銀髪、銀眼の女神がお告げをしたというところで信頼できた……。
セラじゃねえか……。あの死神なにやってんだよ。
お告げでは、降り立つ者は、変わった服装、黒髪で、見るからに平凡な少年――――、とのこと。
その平凡な少年が、近いうちに貴男の目の前に現れる。
平凡な彼がこの世界を救う勇者だと伝えたそうだ――――。
よし! あのデカ乳をいつか心行くまで揉みしだいてやる! もっといい伝え方あるだろう! なんだよ平凡って。その部分は余計だ! 連呼してんじゃねえ!
呼び捨てが気に入らないのか、キッって睨まれてしまった……。
だが、問いに対しては、目を細めてから、顎をしゃくり上げる。
そちらを見ろと言わんばかりだ。
見ろと指示されなくても、眼前の物だから、嫌でも目に入ってくるけどな。――王城。
立派な鉄の城門に、堀、その前には土塁だ。
土塁の高さは三メートルくらい。土塁というよりちょっとした壁だな。
そこを突破しても堀があり、その先には市井を守る城壁よりも高い、二十メートルはありそうな城壁。不機嫌なのが理解できた。
「国民よりも自分を優先している王は暗君だって事か?」
首肯で返してくれた。求めていた答えだったようだ。この調子で気に入ってもらえれば、俺への忠誠ポイントが上がるかもしれない。
――……ちらりとディスプレイを覗けば、この程度で認めるか! とばかりに、ゼロのままだ……。
1ポイントくらいは上がってくれよ……。
「開門!」
案内してくれる兵長みたいな奴がそう言えば、重厚な音を立てながら、鋼鉄製の門が観音開きで開いていく――――。
「……二重かよ……」
呆れるね。同じタイプの門がさらに奥から現れたよ。一つ目の門より金属が新しい。
きっと王城を守るために、新たに造らせたんだな。本当に自分たち優先だな。
横からも嘆息が漏れたのがしっかりと耳朶に届いた。
――――二つ目も通過。さらに城の中へと続く門が現れ、そこも通過すれば、派手な赤色に金刺繍の入った絨毯の上を歩く。
案内する兵長より、更にワンランク上の装備をした近衛兵が守るドアの前へと到着。
――――開かれれば謁見の間だ。
「近くに」
覇気がね~。
追い込まれてんな。どいつもこいつも目の下にクマがあるぞ。
手招きをする王冠をした存在の前まで近づく。
髪型も整っていないボサボサで艶のない金髪だ。招く手も痩せて骨張ってる。
限界きてんな~。完全に詰んだ国だな……。
「兵達より聞いた。お前たちがオークの軍勢を容易く一蹴したと」
俺たちじゃないけどな。横に立つ赤髪美人が一人でやった事だ。
美人は、俺たちの側面に居並ぶ大臣たちを瞥見。
俺もそれを真似て見れば、玉座に座る奴と同じで、力がないのばかりだ。
一人だけ身ぎれいにして、りりしく立っているのはいる。鎧は綺麗に磨かれているが、そこかしこに戦いの傷が目立つ。
一人だけ生気が漲ってる感じだな。
あと、文官みたいなのにも一人、血色がいいのがいる。凄い出っ歯だけど。
でも、ベルヴェットは全体を目にして、ここの状況を判断し、ふっ――て、鼻で笑っていた。
周囲には聞こえていないみたいだけど、俺の耳朶にはしっかり届く。
瞥見が侮蔑の目に変わっている。俺としては、元の世界に帰りたいからな。ここで人間同士がいがみ合うのはよろしくない。
なので――――、
「そうです。自分たちです」
と、素直に応対する。
「「「「おお!」」」」
興奮と歓喜が混じった声が上がる。
もしかしてだけど、たった二人の存在で、この国が救われるとでも思っているのか?
藁にも縋る思いってのは目の前の状況の事なんだろうな。二人だけで一体なにが出来ると?
考える事をやめてるから、視野が狭くなっているみたいだな。
「貴公らは遠き地にて生を受け、降り立った者たちか?」
王様、玉座からプルプルと弱った足腰で立ち上がり、俺たちに近寄りつつ問うてくる。
やってくるじゃなく、降り立つという表現。
俺の事を知っているって事なんだろうか。
遠き地で生まれた、遠き地ってのは日本だな。で、降り立った、あそこがあの世のどこかは分からんが、地上に降り立ってるから間違いじゃないよな。
「はい、まあ」
「「「「おお!」」」」
なんだ? 周囲のお偉いさんは、RPGで言うところの、【○○の村へようこそ】としか言えない村人みたいに、【おお!】しか言えない要員なのか?
喜んでるのはいいけども、こんなガチガチに守られたところで、住人ほっぽり出して籠もってる連中を信用はしてないからな。
「お告げの通りだ」
「お告げ?」
王様、昨夜、俺の事を夢の中のお告げで聞いたらしい。
昨夜って、俺は今日死んで、すぐにこの世界に降りてきたと思ってたけど、タイムラグがあるのか? それともこの王様の作り話か妄想か?
半信半疑だったけど、王様が次ぎに口にした、漆黒のローブに、銀髪、銀眼の女神がお告げをしたというところで信頼できた……。
セラじゃねえか……。あの死神なにやってんだよ。
お告げでは、降り立つ者は、変わった服装、黒髪で、見るからに平凡な少年――――、とのこと。
その平凡な少年が、近いうちに貴男の目の前に現れる。
平凡な彼がこの世界を救う勇者だと伝えたそうだ――――。
よし! あのデカ乳をいつか心行くまで揉みしだいてやる! もっといい伝え方あるだろう! なんだよ平凡って。その部分は余計だ! 連呼してんじゃねえ!
3
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる