異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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PHASE-1816【即採用】

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 ――頼れる表情だけでなく、

「皆、良い装備だな」
 これからの大戦に備えて、各地の領主たちは最高の装備を準備したと見える。
 兵達の生存率を高めるってのもあるんだろうけど、日和見を決め込んでいた面々もいるからね。
 ここぞとばかりに、自分こそが王に最も忠誠を誓っているというアピールでもあったりするんだろう。
 
 ――各領地の装備で割り振られているようで、兵達が要塞に設けられた宿所へと別々に入っていく。
 
 個々の装備を纏った者達もいる。
 隊列を組まず、自由気ままな歩き方。
 各地から冒険者も集まってきてくれている。

「まだまだ増えていきますよ」
 と、壁上へと続く階段をのぼってきた人物から一言。

「それは心強い限りです」
 先生が要塞を再び訪れてくれた。
 ツッカーヴァッテのお陰で王都から要塞までの距離は有って無いようなもの。
 正直、凄く有り難い。先生がいてくれると新技の習得が速くなるからな。
 願っていたら来てくれたって感じで嬉しい。
 先生がいる間に修練場で鍛えまくってやる!

「ロイル領からも来てくれているそうです」

「早いですね」
 もしかしてロイル商人達か? と思ったけど、キャラバンが王都ではなくトールハンマーまで来るにはまだ日数を必要とするだろう。

「公爵様」

「おお!」
 来てくれると思っていたよ。早い再会は嬉しい。
 灰色からなる空飛ぶ生物の手綱を引く人物ともう一人。
 ワイバーンと呼ぶにはおこがましい大蛇と吸血大コウモリの合成獣からなるレッサーワイバーンと名付けられた生物が胸壁部分に器用に着地をすれば跨がっていた二人が着地。

「よく来てくれたね」

「俺は俺の正義の下に行動しますからね」
 先生には敵わないが中高な人物が笑顔で応じてくれる。
 ロイル領で俺と協力しながらも敵対――からの協力者となってくれた元騎鳥隊隊長であるソドンバアム。
 
 で――、

「貴男も参加してくれるんですね。有り難うございます」

「よしてくださいよ公爵様……」
 恭しく典雅な一礼をすれば困惑するモーリスのおっさん。
 新人冒険者と思っていた俺の事を小馬鹿にしつつも心配もしてくれていた製造所の門番。
 楽な仕事で給金がいいという事だったが、アローンガット戦では逃げることなくお偉方を守っていた気骨ある人物である。
 他の私兵を上手く纏めていたことも記憶している。

「安定した所で給金を得た方がいいのでは?」

「それもそうなんですがね。結局の所、元を絶たないと得たとしても使える場所がなくなってしまうでしょう」
 とのこと。
 少しでも役に立てるならとソドンバアムの呼びかけに参加したそうな。
 自分たちは知らなかったとはいえ、守っていた場所でおぞましい研究が行われていたとなれば、罪が無いとしても白い目で見られることにもなる。
 そういった居心地の悪さもあって、ロイル領から離れたかったそうな。
 大事になった時にはお偉いさんを守り、俺たちにも協力してくれた頼れるおっさんの参加は有り難い。
 
 ――先発としてソドンバアムとモーリスのおっさんが来てくれたという。
 後々、製造所で私兵をしていた者達も参加してくれるということだった。

「これからは公爵様の側で励みたいと思っております」

「俺もそう願っていたからね」

「それは喜ばしい!」
 自分なりの正義を持っているソドンバアムは即座に参加を受け入れてくれたことに大喜び。
 俺としても有能な人材が参加してくれることは大助かり。
 
 しかも――、

「タイミングも良い」

「大将!」
 心の友の所で待機していたラルゴ達も要塞へと到着。
 以前に話していた内容も同時に済ませることが出来そうだ。

「ラルゴ、ちょうど良かったよ。というか最高のタイミングだな」

「なにがだ? ここでも美味いもんをご馳走してくれるのか?」

「前線だから限られるけども、俺の権限の範囲内でやってやるよ」
 そいつは最高だ! と、私兵の面々が大喜び。

「今回は懇談会ってやつだな」

「なんだ? 懇談会って?」

「打ち解け合って、親しくなるってことだよ」

「んなこた学のねえ俺でも分かるっての。誰とのだ?」

「ラルゴ達とこちらのお二人だ」
 言えばソドンバアムとモーリスのおっさんへと目を向ける。

「こりゃあれだな。強えな」
 直ぐさま只者じゃないと判断する早さはこれまでの訓練の積み重ねによって培われた慧眼ってところか。

「そう言ってもらえるのは嬉しい限り。でもお宅等もかなり強いようだな」

「分かってるじゃねえか」
 呵々大笑なラルゴと面々。

「ラルゴ、ちょっと前に話した内容を覚えているか?」

「覚えてるよ。で、理解もした」
 早くて助かる。

「要はこのソドンバアムってのが俺たちの隊長になるって事だな」

「ん? 隊長?」
 初対面の人間にいきなり隊長と呼ばれ、首を傾げるソドンバアム。
 自分の事を強いと判断してくれたのは嬉しいが、いきなり自分の事を隊長と呼ばれれば困惑しているご様子。
 
 俺に助けを求めるかのように目を向けてくるので、

「その通り。このソドンバアムが俺の私兵であるラルゴ達の隊長となる人物だ」

「ええっ!?」
 なんの前情報も耳にしていないソドンバアムは100点のリアクションを見せてくれる。

「公爵様。いくらなんでもそれは急な話ですよ」

「まあね。今話したからね」

「いやいや……」
 これはいくらなんでも大役が過ぎると躊躇が見える。
 元騎鳥隊隊長という肩書き。
 製造所では私兵達のまとめ役。
 人間性も問題なし。
 十分すぎる経歴。内の会社は即採用ですよ。
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