16 / 1,861
攻略、リド砦
PHASE-16【とりあえず、装備は整った】
しおりを挟む
「勇者トール殿」
家臣団の中にいた偉丈夫が、数人の近衛を引き連れて俺の元へ。
一緒に来てくれるのかと思ったけども、期待すると裏切られた時の反動が大きいから、期待なんかしてあげない。
「これを――――」
偉丈夫が、近衛の一人が手にする刀剣をその手に取れば、そのまま俺に手にするようにとばかりに、腕を伸ばしてくる。
期待しないでよかったよ。
こいつを手にして戦ってこいってか……。
形状からして刀だ。
受け取れば――――、重い。
竹刀の軽さでも、木刀の重さとも違う、ずっしりとした鉄の重さ。
「現在、王都にある刀の中で、随一と言ってよい業物です」
「魔法の恩恵とかあるんですか?」
「いえ、とくには」
そうですか……。
RPGの城だと、鍵がかかって開かない扉の奥には、伝説の武器とかあったりするんだけど、これは切れ味のよい刀ってだけのようだ。
シャツにカーゴパンツ。マントときて――、刀。ますますアンバランスさに拍車がかかってくる……。
「滑稽だな」
ベルに鼻で笑われてしまった。反論は出来ない。俺もそう思ってるから……。
目の前のモデル体型みたいに、ビシッと決められないのが俺さ。
せめて足が長ければな~。胴の方が長い日本人体型が悔やまれる。
「あの、鎧とかないんすか?」
「なんと! その服装は神聖な物ではないのですか!?」
俺が天から降臨したということから、この服装が、特別なスキル効果を有する物だと勘違いしているようだが、五千円あれば揃えられるんだぜ。
――――なので大至急、準備してもらう。
――……理解した、俺みたいな素人が、金属製の鎧を装備して歩くなんて無理があったんや……。
動けねえよ……。
戦場に出ればただの案山子だ。恰好の的だぜ。瞬きする間に殺される……。
いくつか用意してもらった物から、軽くて頑丈そうな物を選ぶ。
心臓部分を守ることの出来る、鎧皮からなる鎧を選択。
鎖骨から肋骨にかけての黒塗りの鎧だ。
腹や腕を狙われたら終わりだが、肩当てや腹部までの物になると、流石に鎧皮製でも重いので、妥協してのコレ。
白いシャツの上に黒い鎧。色合いとしては悪くない。鏡が欲しいところだけど……、
ベルヴェットの口角の上がり方からして、似合っていないようだ……。
俺の現状の筋力だと、これを装備して動くのが限界なので、下半身はまた今度だ。
つまりはこの装備で生き残らないといけない。
「ベルヴェット――――は、いいのか?」
タイトな軍服。強度は明らかに無いと思われる。
「私にそんな物は必要ない。まず私に当てることが出来れば、敵を褒めてやろう」
さいですか……。
強者しか発言できない言葉をさらりと言ったな。
実際、当たらないんだろうけどさ。
それに、炎を纏えば、あれが鎧の代わりになるんだろうし。
とりあえず試してみたが、呼び捨てにしても睨まれなかったな。
うむ、もっと親密になるためにも、くだけた呼び方をしてもいいかもな。
「じゃあ、行くか」
踏ん切りつけて動くように、自分に言い聞かせるようにして挨拶をする。
怯えて動かなければ、日本に帰れるのが延びるだけだし。とりあえずは攻略だ。
よくあるRPGなんかだと、序盤だから攻略は簡単なはずだが、いかんせんこの世界はどん詰まってるからな。
最初から最高難易度と考えていいだろう。
ベルヴェットの存在が、難易度を極端に下げてくれてるのが救いだな。
出発を伝えれば、ヘルガー峡谷の砦へと続く地図を偉丈夫ことナブル将軍が手渡してくれる。
目を地図に移せば、
「……子供が描いたのかな?」
ここから砦までを一本の線で描いたシンプルな地図。なめきってるぞ!
「申し訳ない。しかし、その地図の通り、峡谷までは一直線です。なので間違ってはいません」
頭を下げてくるナブル将軍。
誰が描いたのかと問えば、ミルトンと返ってくる。
誰だか分からなかったが、将軍の、歯が特徴的という発言で、出っ歯のおっさんだと理解した。
俺がマントを得た時に渋面だったからな。嫌がらせか? 帰ってきたら、いじめてやろうかな。
「地図はお粗末ですが――――」
と、ナブル将軍が言えば、それを合図とばかりに、近衛が二頭の馬を引いてくる。
乗ったことねえよ……。
困っている俺なんてお構いなしに、早速、馬上の人になる美人従者。
騎乗時に、タイトな軍用パンツを着こなす長い足が開くところで、俺の心は大きく乱れる。
もう一回いいかな? と、危うく口から漏れるところだった。
家臣団の中にいた偉丈夫が、数人の近衛を引き連れて俺の元へ。
一緒に来てくれるのかと思ったけども、期待すると裏切られた時の反動が大きいから、期待なんかしてあげない。
「これを――――」
偉丈夫が、近衛の一人が手にする刀剣をその手に取れば、そのまま俺に手にするようにとばかりに、腕を伸ばしてくる。
期待しないでよかったよ。
こいつを手にして戦ってこいってか……。
形状からして刀だ。
受け取れば――――、重い。
竹刀の軽さでも、木刀の重さとも違う、ずっしりとした鉄の重さ。
「現在、王都にある刀の中で、随一と言ってよい業物です」
「魔法の恩恵とかあるんですか?」
「いえ、とくには」
そうですか……。
RPGの城だと、鍵がかかって開かない扉の奥には、伝説の武器とかあったりするんだけど、これは切れ味のよい刀ってだけのようだ。
シャツにカーゴパンツ。マントときて――、刀。ますますアンバランスさに拍車がかかってくる……。
「滑稽だな」
ベルに鼻で笑われてしまった。反論は出来ない。俺もそう思ってるから……。
目の前のモデル体型みたいに、ビシッと決められないのが俺さ。
せめて足が長ければな~。胴の方が長い日本人体型が悔やまれる。
「あの、鎧とかないんすか?」
「なんと! その服装は神聖な物ではないのですか!?」
俺が天から降臨したということから、この服装が、特別なスキル効果を有する物だと勘違いしているようだが、五千円あれば揃えられるんだぜ。
――――なので大至急、準備してもらう。
――……理解した、俺みたいな素人が、金属製の鎧を装備して歩くなんて無理があったんや……。
動けねえよ……。
戦場に出ればただの案山子だ。恰好の的だぜ。瞬きする間に殺される……。
いくつか用意してもらった物から、軽くて頑丈そうな物を選ぶ。
心臓部分を守ることの出来る、鎧皮からなる鎧を選択。
鎖骨から肋骨にかけての黒塗りの鎧だ。
腹や腕を狙われたら終わりだが、肩当てや腹部までの物になると、流石に鎧皮製でも重いので、妥協してのコレ。
白いシャツの上に黒い鎧。色合いとしては悪くない。鏡が欲しいところだけど……、
ベルヴェットの口角の上がり方からして、似合っていないようだ……。
俺の現状の筋力だと、これを装備して動くのが限界なので、下半身はまた今度だ。
つまりはこの装備で生き残らないといけない。
「ベルヴェット――――は、いいのか?」
タイトな軍服。強度は明らかに無いと思われる。
「私にそんな物は必要ない。まず私に当てることが出来れば、敵を褒めてやろう」
さいですか……。
強者しか発言できない言葉をさらりと言ったな。
実際、当たらないんだろうけどさ。
それに、炎を纏えば、あれが鎧の代わりになるんだろうし。
とりあえず試してみたが、呼び捨てにしても睨まれなかったな。
うむ、もっと親密になるためにも、くだけた呼び方をしてもいいかもな。
「じゃあ、行くか」
踏ん切りつけて動くように、自分に言い聞かせるようにして挨拶をする。
怯えて動かなければ、日本に帰れるのが延びるだけだし。とりあえずは攻略だ。
よくあるRPGなんかだと、序盤だから攻略は簡単なはずだが、いかんせんこの世界はどん詰まってるからな。
最初から最高難易度と考えていいだろう。
ベルヴェットの存在が、難易度を極端に下げてくれてるのが救いだな。
出発を伝えれば、ヘルガー峡谷の砦へと続く地図を偉丈夫ことナブル将軍が手渡してくれる。
目を地図に移せば、
「……子供が描いたのかな?」
ここから砦までを一本の線で描いたシンプルな地図。なめきってるぞ!
「申し訳ない。しかし、その地図の通り、峡谷までは一直線です。なので間違ってはいません」
頭を下げてくるナブル将軍。
誰が描いたのかと問えば、ミルトンと返ってくる。
誰だか分からなかったが、将軍の、歯が特徴的という発言で、出っ歯のおっさんだと理解した。
俺がマントを得た時に渋面だったからな。嫌がらせか? 帰ってきたら、いじめてやろうかな。
「地図はお粗末ですが――――」
と、ナブル将軍が言えば、それを合図とばかりに、近衛が二頭の馬を引いてくる。
乗ったことねえよ……。
困っている俺なんてお構いなしに、早速、馬上の人になる美人従者。
騎乗時に、タイトな軍用パンツを着こなす長い足が開くところで、俺の心は大きく乱れる。
もう一回いいかな? と、危うく口から漏れるところだった。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる