異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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攻略、リド砦

PHASE-16【とりあえず、装備は整った】

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「勇者トール殿」
 家臣団の中にいた偉丈夫が、数人の近衛を引き連れて俺の元へ。
 一緒に来てくれるのかと思ったけども、期待すると裏切られた時の反動が大きいから、期待なんかしてあげない。

「これを――――」
 偉丈夫が、近衛の一人が手にする刀剣をその手に取れば、そのまま俺に手にするようにとばかりに、腕を伸ばしてくる。
 期待しないでよかったよ。
 こいつを手にして戦ってこいってか……。
 形状からして刀だ。
 受け取れば――――、重い。
 竹刀の軽さでも、木刀の重さとも違う、ずっしりとした鉄の重さ。

「現在、王都にある刀の中で、随一と言ってよい業物です」

「魔法の恩恵とかあるんですか?」

「いえ、とくには」
 そうですか……。
 RPGの城だと、鍵がかかって開かない扉の奥には、伝説の武器とかあったりするんだけど、これは切れ味のよい刀ってだけのようだ。
 シャツにカーゴパンツ。マントときて――、刀。ますますアンバランスさに拍車がかかってくる……。

「滑稽だな」
 ベルに鼻で笑われてしまった。反論は出来ない。俺もそう思ってるから……。
 目の前のモデル体型みたいに、ビシッと決められないのが俺さ。
 せめて足が長ければな~。胴の方が長い日本人体型が悔やまれる。

「あの、鎧とかないんすか?」

「なんと! その服装は神聖な物ではないのですか!?」
 俺が天から降臨したということから、この服装が、特別なスキル効果を有する物だと勘違いしているようだが、五千円あれば揃えられるんだぜ。
 ――――なので大至急、準備してもらう。
 ――……理解した、俺みたいな素人が、金属製の鎧を装備して歩くなんて無理があったんや……。
 動けねえよ……。
 戦場に出ればただの案山子だ。恰好の的だぜ。瞬きする間に殺される……。
 いくつか用意してもらった物から、軽くて頑丈そうな物を選ぶ。
 心臓部分を守ることの出来る、鎧皮からなる鎧を選択。
 鎖骨から肋骨にかけての黒塗りの鎧だ。
 腹や腕を狙われたら終わりだが、肩当てや腹部までの物になると、流石に鎧皮製でも重いので、妥協してのコレ。
 白いシャツの上に黒い鎧。色合いとしては悪くない。鏡が欲しいところだけど……、
 ベルヴェットの口角の上がり方からして、似合っていないようだ……。
 俺の現状の筋力だと、これを装備して動くのが限界なので、下半身はまた今度だ。
 つまりはこの装備で生き残らないといけない。

「ベルヴェット――――は、いいのか?」
 タイトな軍服。強度は明らかに無いと思われる。

「私にそんな物は必要ない。まず私に当てることが出来れば、敵を褒めてやろう」
 さいですか……。
 強者しか発言できない言葉をさらりと言ったな。
 実際、当たらないんだろうけどさ。
 それに、炎を纏えば、あれが鎧の代わりになるんだろうし。
 とりあえず試してみたが、呼び捨てにしても睨まれなかったな。
 うむ、もっと親密になるためにも、くだけた呼び方をしてもいいかもな。

「じゃあ、行くか」
 踏ん切りつけて動くように、自分に言い聞かせるようにして挨拶をする。
 怯えて動かなければ、日本に帰れるのが延びるだけだし。とりあえずは攻略だ。
 よくあるRPGなんかだと、序盤だから攻略は簡単なはずだが、いかんせんこの世界はどん詰まってるからな。
 最初から最高難易度と考えていいだろう。
 ベルヴェットの存在が、難易度を極端に下げてくれてるのが救いだな。
 出発を伝えれば、ヘルガー峡谷の砦へと続く地図を偉丈夫ことナブル将軍が手渡してくれる。
 目を地図に移せば、

「……子供が描いたのかな?」
 ここから砦までを一本の線で描いたシンプルな地図。なめきってるぞ!

「申し訳ない。しかし、その地図の通り、峡谷までは一直線です。なので間違ってはいません」
 頭を下げてくるナブル将軍。
 誰が描いたのかと問えば、ミルトンと返ってくる。
 誰だか分からなかったが、将軍の、歯が特徴的という発言で、出っ歯のおっさんだと理解した。
 俺がマントを得た時に渋面だったからな。嫌がらせか? 帰ってきたら、いじめてやろうかな。

「地図はお粗末ですが――――」
 と、ナブル将軍が言えば、それを合図とばかりに、近衛が二頭の馬を引いてくる。
 乗ったことねえよ……。
 困っている俺なんてお構いなしに、早速、馬上の人になる美人従者。
 騎乗時に、タイトな軍用パンツを着こなす長い足が開くところで、俺の心は大きく乱れる。
 もう一回いいかな? と、危うく口から漏れるところだった。
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