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出立
PHASE-80【腹黒】
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「はあ、こんなにも温かいお湯がたっぷりと入ったお風呂をいただけるとは――――」
ラセットブラウンな髪がしっとりと濡れている。
艶やかさが増した。
バスローブ姿でソファーに戻ってくれば、冷たいオレンジジュースが前に置かれる。
一気に飲めば、水が主流のこの世界の人間は、体験したことのない味だったようで、
「この甘み……。これは神界の飲み物なのでしょうか!」
興奮気味に御代わりを所望している。
御代わりと一緒に、今度はサンドイッチもついてくる。
完璧超人に隙は無い。
「いただきます」
オレンジジュースでテンションが上がったのか、サンドイッチをモムモムと口に運ぶ姿は小動物のようだ。
侵入してたらふく食べただろうに、更に食べるとは、どんな胃袋してるんだよ。
ハムにチーズ。レタスにトマト。この世界だと高級な存在なんだろうな。だからなのか、コクリコの手と口は止まることを知らない。
見ていて気持ちのいい食べっぷりに、作り手のベルも喜んでいるし、ゲッコーさんもそれを柔和な笑みで眺めていた。
「で、コクリコ。俺たちに会ってどうするんだ? ギルドに入りたいのか?」
「――んぐ」
あ、ちゃんと嚥下してる。口に入れたまま喋るって事はしないんだな。ヤンキーかと思われたが、親のしつけはいいようである。
「ギルドに入ることも考えていますが、私は、私の力で、貴方たちを支えて上げようと思っています」
「「「は?」」」
口の中の残りをオレンジジュースで流し込みながら、随分と上からな言い方をしてきたよ。このちびっ子。
とりあえず、テーブルの上に足をのせるな! 行儀悪い。
前言撤回だ。しつけはよくないな。親はやはりヤンキーだな。頭の中も随分とお花畑が咲き誇っているようだし。
――――歴史に残る偉大な魔法使いになるために、日夜修行に明け暮れているそうだ。
そんな中で、俺たちの活躍を耳にして、修行の成果を見せるために馳せ参じようと行動。
体術にも傾倒した結果が、今回の俺の股間に繋がるわけである。思い出してきたらまたジンジンしてきた。
「しかし、この様な場で勇者一行に出会えるとは、これは運命ですね。私がこのパーティーに入ると天が定めているのです」
「あのさ、歳は?」
「十三です」
俺より三つ下。中1か2くらいだな。そんな歳で、よくもオークの塒と思っていた場所に侵入したもんだな。
この世界の現状が、少女を逞しく育てたんだろう。
「コクリコさん。もう少し修行を――――」
「何ですか! そんな他人行儀に! 目上で勇者なんですから、さっきみたいに呼び捨てでいいですよ」
他人行儀になりたいんだよ。
今回の話は無かったことにって言いたいんだ。
コクリコさんの今後のご活躍に期待しますって、まだ経験していない、面接の駄目な結果バージョンを俺より先に堪能していただきたい。
「私は頼りになりますよ。そちらのお二人に代わって、我がファイヤーボールで敵を蹴散らしてやります!」
堂々と言うけども、なぜに明らかに初歩魔法と思われるネーミングの魔法で、ここに居並ぶ双璧よりヒエラルキーが上だと思っているの? 勘違いも甚だしいよ。
炎でいうと、そこでゆっくりと紅茶を飲んでる美人中佐で補えすぎてるから。
確かに、ここで魔法を使える人物にようやく出会えたから、俺としても師事を仰ぎたくはある。
が、しかし、幼子を戦いの場に出すのは気が引ける。
「お願いします。後に私が自伝を出す時に、箔が付くような状況が必要なんです。勇者一行を利用させてくださいよ。伝説になりたいんです。踏み台になってください」
こいつ……。なんて真っ直ぐな目をして、純粋な思いで、腹黒いことを言い切るんだ。
流石に、俺の側にいる二人も苦笑いだ。
この世界の幼子は、本当に逞しい。
「私はどうやっても付いていきますから!」
「間に合ってるから」
「ここまで私は、一人でオークやゴブリンを倒してきたんですよ」
「スゴイデスネ~」
「感情がこもっていませんよ!」
お子様がパーティーにいると弱点になりそうでさ。まあ、俺は弱点になりそうな子にワンパンで倒されたんだけども……。
俺自身が足枷要員なのに、無敵二人のアキレス腱をわざわざ増やすのは愚策だ。
「私がここからの道案内をしてあげます。ここまでに色々と情報も得てますので。これ以外の選択肢は貴男にはありません。私に大いなる名声を!」
「屈託のない笑顔で、自分本位な事を清々しく言い切ったな……」
とんでもなく上昇志向の強い十三歳だ。
ラセットブラウンな髪がしっとりと濡れている。
艶やかさが増した。
バスローブ姿でソファーに戻ってくれば、冷たいオレンジジュースが前に置かれる。
一気に飲めば、水が主流のこの世界の人間は、体験したことのない味だったようで、
「この甘み……。これは神界の飲み物なのでしょうか!」
興奮気味に御代わりを所望している。
御代わりと一緒に、今度はサンドイッチもついてくる。
完璧超人に隙は無い。
「いただきます」
オレンジジュースでテンションが上がったのか、サンドイッチをモムモムと口に運ぶ姿は小動物のようだ。
侵入してたらふく食べただろうに、更に食べるとは、どんな胃袋してるんだよ。
ハムにチーズ。レタスにトマト。この世界だと高級な存在なんだろうな。だからなのか、コクリコの手と口は止まることを知らない。
見ていて気持ちのいい食べっぷりに、作り手のベルも喜んでいるし、ゲッコーさんもそれを柔和な笑みで眺めていた。
「で、コクリコ。俺たちに会ってどうするんだ? ギルドに入りたいのか?」
「――んぐ」
あ、ちゃんと嚥下してる。口に入れたまま喋るって事はしないんだな。ヤンキーかと思われたが、親のしつけはいいようである。
「ギルドに入ることも考えていますが、私は、私の力で、貴方たちを支えて上げようと思っています」
「「「は?」」」
口の中の残りをオレンジジュースで流し込みながら、随分と上からな言い方をしてきたよ。このちびっ子。
とりあえず、テーブルの上に足をのせるな! 行儀悪い。
前言撤回だ。しつけはよくないな。親はやはりヤンキーだな。頭の中も随分とお花畑が咲き誇っているようだし。
――――歴史に残る偉大な魔法使いになるために、日夜修行に明け暮れているそうだ。
そんな中で、俺たちの活躍を耳にして、修行の成果を見せるために馳せ参じようと行動。
体術にも傾倒した結果が、今回の俺の股間に繋がるわけである。思い出してきたらまたジンジンしてきた。
「しかし、この様な場で勇者一行に出会えるとは、これは運命ですね。私がこのパーティーに入ると天が定めているのです」
「あのさ、歳は?」
「十三です」
俺より三つ下。中1か2くらいだな。そんな歳で、よくもオークの塒と思っていた場所に侵入したもんだな。
この世界の現状が、少女を逞しく育てたんだろう。
「コクリコさん。もう少し修行を――――」
「何ですか! そんな他人行儀に! 目上で勇者なんですから、さっきみたいに呼び捨てでいいですよ」
他人行儀になりたいんだよ。
今回の話は無かったことにって言いたいんだ。
コクリコさんの今後のご活躍に期待しますって、まだ経験していない、面接の駄目な結果バージョンを俺より先に堪能していただきたい。
「私は頼りになりますよ。そちらのお二人に代わって、我がファイヤーボールで敵を蹴散らしてやります!」
堂々と言うけども、なぜに明らかに初歩魔法と思われるネーミングの魔法で、ここに居並ぶ双璧よりヒエラルキーが上だと思っているの? 勘違いも甚だしいよ。
炎でいうと、そこでゆっくりと紅茶を飲んでる美人中佐で補えすぎてるから。
確かに、ここで魔法を使える人物にようやく出会えたから、俺としても師事を仰ぎたくはある。
が、しかし、幼子を戦いの場に出すのは気が引ける。
「お願いします。後に私が自伝を出す時に、箔が付くような状況が必要なんです。勇者一行を利用させてくださいよ。伝説になりたいんです。踏み台になってください」
こいつ……。なんて真っ直ぐな目をして、純粋な思いで、腹黒いことを言い切るんだ。
流石に、俺の側にいる二人も苦笑いだ。
この世界の幼子は、本当に逞しい。
「私はどうやっても付いていきますから!」
「間に合ってるから」
「ここまで私は、一人でオークやゴブリンを倒してきたんですよ」
「スゴイデスネ~」
「感情がこもっていませんよ!」
お子様がパーティーにいると弱点になりそうでさ。まあ、俺は弱点になりそうな子にワンパンで倒されたんだけども……。
俺自身が足枷要員なのに、無敵二人のアキレス腱をわざわざ増やすのは愚策だ。
「私がここからの道案内をしてあげます。ここまでに色々と情報も得てますので。これ以外の選択肢は貴男にはありません。私に大いなる名声を!」
「屈託のない笑顔で、自分本位な事を清々しく言い切ったな……」
とんでもなく上昇志向の強い十三歳だ。
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