異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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海賊退治

PHASE-117【二種類のマナ】

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「とにかくだ。俺たちはお前の体を心配してるんだよ。分かってるだろ、この世界の住人なら。瘴気を吸い込めばどうなるか」

「私の積み重ねてきた魔導の力と実力なら、容易くはねのけますよ」

「でた、嘘」

「嘘じゃない!」
 初歩魔法とバカ魔法を使うだけのセンスしか無いのが、瘴気をはねのけるなんて出来るかよ。
 お前が可能なら、他の冒険者たちだって苦労してねえよ!

 まったく、ついてきたけども。こんなのが凶暴化したらたまらんぞ。爆弾を抱えて移動してるようなもんだ。
 いつランページボールが、俺たちに向けられるか分かったもんじゃない。
 
 ――……現状でも俺たちに向けてなくても飛んでくるけどな……。

「そのマスクは絶対に取るなよ! 取った瞬間に海に放り投げるからな! マジだぞ! 俺は口にした事は実行するからな!」
 本気で言えば伝わるのか、「分かりました」と、素直に返ってくる。

「あの鏡ってどこにあります?」
 ――……これあれだ。俺の本気の言葉が伝わったんじゃなくて、コイツ、ガスマスクが気に入っているようだ……。
 
 中二病の琴線に触れたようで、スキップで艦内に入っていった。

「……で、火龍が囚われているという要塞はまだか?」
 コクリコの後ろ姿をあきれた目で追った後に、ベルは俺に顔を向ける。

「この速度なら後二日くらいだって」
 今回の戦いはこれまでとは規模が違うものになるだろう。
 ベルは気合いが入っている。

 現在ミズーリは自動航行である。
 といっても、プレイギアのスティックをホールド状態にしているだけだが。俺としては両手が使えるから便利だ。

 だが暇だ。



 ――――なので、

「魔法のコツを教えてくれよ。ダークサイドはなしで」

「散々バカにしておいて、ここに来られるとは!」
 ガスマスクで表情は分からないが、恥ずかしさで真っ赤なのは分かる。

「頼むよコクリコ。我はダークサイドに傾倒せし存在」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ――艦内に入って、鏡のある場所では、決め台詞とポージングをきめていた中二病コクリコに遭遇。
 
 悦に入っているのか、俺の気配には気付いていなかったので、ゆっくりと三日月笑顔で、鏡にインしてあげると、鏡越しに俺と目があった瞬間、恥ずかしそうに背を丸めて小さくなった。
 
 で、その時に口にしていた台詞を真似たら、大声上げて、俺に躍りかかってきた。
 それを躱して、

「教えてくれよ。コツを」

「はぁ、はぁ……。わ、分かりましたよ。台詞部分は忘れてください」
 適当に首肯で返せば、ほっとしている。
 
 首肯で返しただけで、口約束すらしていないけどね。
 コイツの自伝が出版されたら、即座に暴露本の中でこの部分をでかでかと書いてやろう。

「以前も言いましたが、この世界にはマナが存在します」

「うん。そうだったな」

「そして、マナには二種類あります」
 へ~。
 聞いているよと首肯で示し、続きを促す。

「ピリアとネイコス。この二種類のマナによって、人や人ならざる存在は、力を得ます」
 口を挟まず、ただ聞く体勢。
 
 ピリアと呼ばれるマナは、光を司り、ネイコスは闇を司るそうだ。
 
 聞くだけだと、ネイコスってのが魔族なんかが使用しそうだが、そうではないみたいである。
 
 ピリアは光の力によって、マナをコントロール出来る者に、超人のような力を与えてくれる。
 カイル達が使用していたインクリーズってのがコレの恩恵。
 
 対して闇であるネイコスは、自身が想像する力を具現化させる。
 つまりはそれが魔法。
 
 基本的な魔法は、先達者が想像し、具現化させたもので、それらを後の者たちが模倣する。
 そんな中で、新たな想像で新術を完成させる者たちも現れるそうだ。

「偉大なるロードウィザードのコクリコは、きっと凄い魔法を有してるんだろうな~。なんたってロードだもんな~」
 ――……返事がない。ただの模倣者のようだ。

「い、いずれは新術を作り出しますよ……」
 おう、がんばれや……。
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