異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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火龍

PHASE-128【上に立つ器ではない】

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 ベルのフォローがないなら自分で対応しないといけない。
 前回り受け身の要領で、飛び込みながら物陰に隠れて、難を逃れる。

「なんという無様な回避か。本当に勇者か?」

「無様なのは、当てる事が出来なかったお前だろ」

「生意気な!」
 直上タイプめ。
 だがまあ、連続して魔法を使えるのは、やはりやっかいだな。

「サーバント・アイシクル」
 言うと、先ほど回避した氷の柱が粉々に砕ける。
 砕けたサイズはナイフほど。しかも鋭利に砕けている。
 察するに、ろくな事じゃないようだ。

 四本の腕を指揮者のように動かせば、氷の欠片が宙に舞う。
 俺を中心にして螺旋を描けば、ピタリと止まる。

「死ね」
 開いていた四つの手をグッと握ると、氷の欠片が俺に向かってくる。

「オールレンジによる全方位攻撃みたいだな」
 格好いい! 俺はそんなのを使いたいんだ。
 この余裕。俺は構わず突き進む。

 本当に危機に陥れば、ベルは炎を出してくれる。
 ――――はずだ!

 氷の欠片は全て溶ける。
 信じてたよベル。

 歯を軋らせつつマレンティが、次なる魔法を使おうとするが、ゲッコーさんの精密射撃と、コクリコの初期魔法で妨害する。

 器用にゲッコーさんは、同時に周囲の敵も倒してくれる。

「ありがたいね」
 マレンティに向かって更に接近。

「ええい、いけ!」
 配下のサハギンの尻を蹴って俺へと挑ませる。

 先ほどはゴブリンの尻を突いていたが、今度は自分が同じ立場になってしまったな。

 刀よりリーチが長いトライデント。
 ホブゴブリンが使用していたハルバートに比べれば小ぶりだし、重圧も感じないが、その分、素早い刺突が脅威である。

「ギャ!」
 人語を話せるのは一部だけなようで、尻を蹴られた勢いのまま駆けてきたサハギンが、渾身の一撃とばかりにトライデントでの刺突を見舞ってくる。

 顔に向かってくる三叉の矛先。
 海老反りで躱して体勢を整えれば、トライデントを持った諸手を引いて――、もう一度、俺の顔面に向けての刺突。

「パターンだな」
 しゃがんで左脚で足払い。
 剣道にはないが、実戦では何でもありだ。

 イメージは、ベルのローキック。
 
 転倒させたところで、中腰のままタン、タンと、軽く乾いた二発でサハギンの命を奪う。

 足払いと同時に、軸足にしていた右足の足首部分から取り出したスミス&ウェッソンM36 にて命を奪った。
 マテバと比べると、やはり反動も小さくて撃ちやすい。

 俺のような初心者には、やはり小口径がいいようだな。
 センスが歪みすぎてるのが、俺の悪いところだ。
 
 本当は刀で斬るのがいいんだろうが、斬る感覚が伝わってこない銃に逃げてしまった。

「不甲斐ないザコだ。一気に攻め立てろ! 束になればザコでも少しはましだ」
 地団駄を踏んでる。
 魔法は達者だけど、小者感が尋常じゃないな。

 正直、部下に対して高圧的じゃなかったぶん、ホブゴブリンの方が好感は持てる。

 これは以外と楽かもしれない。

 さっきまでは、マレンティの魔法の連続に鼓舞されていたが、それが決定打にならず、矢面に立たされるからか、サハギン達の士気は下がっている様子。
 
 士気の変わりようが早い。
 
 部下の立ち回りから察するに、忠誠心は高くないようだ。
 こいつさえ倒してしまえば、後は壊走するだろう。

 忠誠心が低い証拠として、積極性が無いんだよな。
 最初こそは俺たちに向かってきたけど、相手が強いと知ると、極端に仕掛けてくる攻撃が鈍いからな。

 数も多いと思っていたが、対面してみると、四人からしたら確かに多くはあるが、要塞を守るという意味では、少ないような気がする。

 これだけの規模の要塞なのに、百くらいしかいない。

 この程度の戦力で、本当に火龍を守っているのだろうか? ブラフとかじゃないよな。
 不安が芽生えてくるね。
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