異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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色々と進めていこう

PHASE-211【我、天啓を得たり】

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「インクリーズはともかくとしても、魔法を使用する者は結構タフネスは覚えます」
 分かる気がする。
 
 後衛である魔道師の弱点は、肉体の弱さってのはゲームではお馴染み。
 少しでも物理耐性をつけて生存率を高めることで、前衛の戦闘も楽になるからな。
 それが分かっているなら、馬鹿凸の考えは捨て去ってもらいたいな。

「さあ、イメージしてください。ミスリルだったり、アダマンタイトだったり」
 おう! そんなもんをイメージできると思うなよ! こちとらそんな鉱物がないファンタジーじゃない世界から転生してんだからな。
 
 ――イメージ。俺が知る硬い物となるとダイヤモンド――――。
 
 う~ん……。ダイヤモンドって普段、目にするような代物じゃないからイメージが湧きにくいが、瞑想してからダイヤモンドをイメージしてみる。
 形や煌めき――――。
 ――――よっし!

「タフネス!」
 ――……なんだろう……。出来たという感覚は全くない。
 まっ、最初が大魔法取得のスペシャルな俺でも流石に出来ないか――――。

「せいや!」

「とぅん!?」

「ふむ、出来ていませんね」
 この……、バーティカルボディ! 中々に痛い蹴りを俺の外側広筋に打ち込んで来やがって!

「出来るようになるまで、この様に試しますからね」
 なにこの悪魔的所行。

「ふざけんなよ!」

「これもトールがタフネスを習得する為です。痛いのが嫌ならば、必死になってイメージして習得しましょう」
 ――……絶対に嘘だ! 俺の為とか言ってるが、琥珀色の瞳が澱んでやがる。ガラスのような目玉だ!
 口角だってつり上がってるし。
 間違いない。日頃、俺が馬鹿にしているから、意趣返しがしたいだけだ。

 


 ――――……………………一体どれほどの時間が経過したのだろう……。
 朝から始めたタフネス習得の訓練。
 時の流れが緩やかに感じる……。
 だが今や、頂天から太陽が西に傾いている。
 腹も減った……。

「そい!」

「ぐむん……」
 時間経過が長く感じるのも、全ては目の前のまな板の悪魔に痛めつけられているからだろう。

 タフネスと発すると見舞われる暴力。

 コクリコもこなれてきたのか、タフネスのスの字と同時に俺に暴なる力を振るってくる。
 
 殴る蹴るの暴行。こんな非人道が許されるわけがない。

 勇者で会頭で、大魔法も使えるトールさんにやっていい行為ではない。
 
 人気の無いところでの訓練は、コイツが内弁慶なところと、勇者が初歩を今ごろ覚えるというのを見られない為だってことらしいが、コイツ、俺を痛めつける楽しみを周囲に見られたくないだけだな……。
 止めに入る存在が現れない場所のチョイスだよ!

「さあ、立ってください。イメージです! 私だってトールを痛めつけるのは嫌なんですから!」
 言葉とは正反対に、生き生きしてる……。くそったれ!

 やってて思ったのは、やはり普段から目にしないダイヤじゃダメだということ。
 ここまでの間に、ダイヤに始まり、岩、鉄塊、ティーガー1にミズーリとイメージしてきたが、うんともすんともだ。

「おら! タフネス」

「どっせい」

「ふもっふ!」
 ちょっと……、今、凄くいいレバーブローが入ったんだけど……。
 流石にくの字になってうずくまってしまう。

「おら! タフネス。の、おら! が余計です。集中していない証拠です。それではいつまで経っても私に殴られるだけの運命です」
 それっぽいことを言っているが、そのにやけ面がむかつくんだよ!

「やろ~」

「睨まないで立ちなさい!」

「やってやるよ!」

「よい気迫です。頑張ってください」
 とか言ってるわりに、拳の骨をならしている姿は悪意そのものだよ……。
 
 ――――イメージしろ硬い物を!
 じゃないと、俺を痛めることを楽しんでいるまな板の攻撃を防げな――――ぬ!
 ぬぬぬ!

「ど、どうしたんですか。急に自信ありげな表情で」

「天啓――、我が脳内に降臨せり!」
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