異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
227 / 1,861
チートがほぼ無い冒険

PHASE-227【急造パーティー、戦闘開始】

しおりを挟む
「うへ~……」
 襞が波打つ姿は、形容できない気持ち悪さ……。小さい姿なら我慢も出来るが、六、七メートルありそうな体長に、胴回りは大木サイズ。そんのが動くとなれば、不気味であり脅威だ。

 目があるのかは分からないが、こちらを向き、先端がぽっかりと開く。
 口だというのは直ぐに理解できた。
 円形からなる口には、口内に沿うようにギザギザの弧を描いたような歯がびっしりと何列にもなって生えている。
 歯舌しぜつを禍々しくしたような感じだ。
 
 歯の先端は体内の方を向いていて、噛まれてしまえば、何列もあるギザギザの歯に捕らえられ、引き抜くことは不可能というのが分かる。あの口に捕まれば、生きたままゆっくりと丸呑みのバッドエンドルートに突入するわけだな。

「でもクラーケンと比べるとデカくはない」

「比べる相手が違いすぎます。あんな最強格のモンスターと比べる相手ではないです。ですが力はありますし、水中では我々より俊敏です」
 最強格か。ベルの青い炎でえらいことになってたけどな。クラーケン。

 クラックリックの言では、地の利は向こう側にある。
 だがこっちは四人。クラックリックは俺へと語ると同時に、矢をウォーターサイドに向けてから、

「インクリーズ」
 ほほう。当たり前のように使えるんだな……。
 やはり王道漫画ですかね?
 主人公が使えるようになったら、周囲も使えて当然みたいな流れですよ……。

 これが俺TUEEEE作品なら、周りが出来ない事を主人公だけが平然とやってのけるんだろう。周囲はそこにシビれる憧れるゥ! な、わけだ。
 俺がそんな作品の主人公になったら、強さに過信して、調子に乗って痛い目に遭うこと間違いなしだな。
 なので、地道に強くなっていきます――――、

「よっと!」
 なんて思いながらも、ズドン! と、マテバから一発。オーバーテクノロジーの武器に頼るスタイル。

「「「おお!」」」
 と、三人が声を合わせ、

「これが勇者である会頭と、従者が使用する魔法の筒かい」
 と、ギムロンが驚く二人を置いて、一人、継ぐ。

 ホルスターから取り出し、しっかりと両手でグリップを固定したから見事に命中だ。余裕を持って待ち構えられたから出来たことだ。

 弾丸を受けたワームの赤黒い体表からは、緑色の体液が流れ出してくる。

「キュルルルルルル――――」
 甲高い鳴き声。例えるなら、車のファンベルトが劣化したような音。
 ダメージは負っているみたいだけど、動きは止まらない。
 纏っていた泥が周囲に飛び散り、はっきりと体表が出現する。
 赤黒い巨大ミミズ。泥に隠されていたものが露わとなる。
 ちょっとだけ体表を覗かせているだけでも気持ち悪かったのに、全体の襞が波打つ姿はそれ以上。総毛立ってしまう。
 タチアナなんかは両手で自分の腕をさする仕草。
 仕草をするためにスタッフを泥濘に突き立てる余裕はある模様。

「シッ!」
 気合いと共にクラックリックが矢を放つ。
 ズブリとが半分ほど埋没する。

 水中でも速く動ける事から、全体が筋肉と考えられるけど、インクリーズを使用しての矢の威力は流石だ。深く突き刺さっている。

 威力はウォーターサイドの甲高い鳴き声を聞けば分かる。
 .357マグナム弾が当たった以上の鳴き声だった。
 悶えるように体を震わせながらも、蛇が鎌首を上げるかのような姿勢になる。

「来るぞい。当たればただではすまんぞ」
 焦りが混じるギムロンの声音。
 でっかいワームが鎌首を弓なりに反らす。
 明らかに口からなにかを吐き出そうとしている所作である。
 
 はたして正にで、ぽっかりと空いた歯舌の見える口腔より、粘度の高い液体が吐き出される。

「きたね!」
 足場の悪い中で何とか回避に成功。

「……げっ」
 粘液が着弾したのは浮き草の一帯。
 ジュュュュュュュュュュュ――っと、音を立てて煙を上げ浮き草が溶ける。

「毒か!」

「と言うより、強力な胃酸です」
 クラックリックが次の矢を番えつつ教えてくれる。

「触れたり煙も吸わないように」
 継いで警告。
 さわりはしないが、呼吸は注意しないとな。

「ギュィィィィィィィ」
 次の一手とばかりに、酸を吐き出した反動のまま上半身でこちらに体当たり。
 バシャャャャャン! 大きな衝撃。

 沈殿していた湿地の泥が、強大なワームが動き回ることで攪拌かくはんされ、泥水となって茶色い水柱を上げる。

「くぅ……」
 クラックリックが苦痛の声を上げる。

「大丈夫か!」
 俺はすかさずクラックリックの前に立つ。

「ありがとうございます。衝撃を受けただけです」
 衝撃だけでも歪んだ表情。直撃は当然よろしくないわけだな。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...