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チートがほぼ無い冒険
PHASE-238【俺はこういうのは必要じゃないな……】
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「そろそろこっちの作業に戻ってくれ」
クラックリックが粘液を体に付着させたまま催促すれば、「おお、すまん」と言って、ギムロンは蹲踞からつと立ち上がりクラックリックを手伝う。
――――作業。それはダイヒレンと呼ばれるデカいGの亡骸を引きずり、壁面に立てかけていくという行動。
俺からすれば絶対にやりたくない作業である。
タチアナもその行動に目を向けて、ぶるりと体を震わせていた。
連動するように三つ編みも揺れる。
嬉々として立てかけている二人の姿はホラーだ……。
「かなりいたの~」
「ああ。大収穫だな」
返ってくる発言を受けながら、地面を見渡すギムロン。まだ亡骸が転がっていないかの確認のようだ。
「おっと」
と、粘液の中から触角を拾い上げこれまた隅に置いている。
ギムロンの太い指に粘液が糸を引く。気持ち悪い……。
クラックリックは松明で壁面を照らしつつ、なにが嬉しいのかご満悦の表情。
見たくはないが、灯りに照らされる以上、どうしても目に入ってくるから困ったもんである。
――……ずらりと壁に並べられた頭部の欠損したG。
死しても尚、松明の火に対して黒い光を反射させてくる。
中には胴体部分が欠損したのもいる。俺が銃で撃って倒したGだ。
地面をランタンで照らせば、白い粘液が一面にベッタリ……。正に足の踏み場もないといったところ。ここより先に進みたくないな……。
まあ、このままGの亡骸が転がった道を歩くよりは数段いいが。
「ありがとう。歩きやすくしてくれる為に、わざわざどかしてくれて」
満足げな二人に典雅な一礼と共にお礼を口にする。
「いやいや、そんなんじゃねえよ」
と、ギムロン。
どうやら俺やタチアナの為にした行動ではないようだ。
じゃあ何なんだ? と、疑問符を浮かべれば、
「今は先を急ぐからな」
うん、俺が求めている答えじゃないよドワーフ。
「後で作業をしやすくする為にです」
うん、俺が求めている答えじゃないよハンター。
松明にてGを照らしつつ二人は「これは駄目」「コイツは最高だの~」とか、選定をしている。
「まじで何なの?」
いい加減に答えを聞きたい。
「何じゃ、こういうのは初めてかい?」
初めてだからでっかいGに悲鳴を上げてたわけだけど。初めてじゃなくても悲鳴を上げる自信しかないけどな。
「ダイヒレンの部位を回収するのよ」
おう、ギムロンよ。いま凄いことを言ったな……。
「何の為に?」
本当なら、【何の為にそんな気持ちの悪いことするの?】って発言したかったけども。
「何の為って、決まってんだろう。素材だ」
驚きの発言だよ。あまりの発言内容に俺は後退りだ。
「素材!? だと……?」
「おう、素材よ!」
樽のような体で胸を反らして得意げだが、どうしても腹の方が前に押し出されるギムロンのメタボボディ。
メタボボディが素材の利用法を教えてくれる。
――――ダイヒレンの外骨格からなる上翅からは、とても軽くて頑丈な鎧や、上翅をそのままの状態で加工したカイトシールドなんかが作られるそうだ。
撥水性に富んでいて、天候の悪い中でも行動する冒険者、とくに駆け出しから一皮むけたような冒険者には人気の高い防具らしく、仕立てる者の技量が高ければ、火に耐性のある物にもなるらしい。
駆け出し卒業の冒険者だけでなく、ベテランもダイヒレンの上翅から出来る装備を好んで使う者も多いとか。その場合はやはりピンの物で仕立てるそうだ。
下翅部分は上翅ほどではないが丈夫で、軽さでは勝る素材。
下翅も撥水性に富み、これまた作り手の技量で火に対する耐性が備わる。
主に、金属鎧を風雨から守る為の丈長の上着であるシュールコーになったり、魔法を使用する者たちが好むローブの素材として使用される。
シュールコーにおいては、駆け出しからベテラン冒険者だけでなく、旅をする商人なんかにも人気があり、上翅の防具よりも、下翅の仕立ての方が需要は多いとのこと。
取得難易度の高いモンスターの素材から作られる防具などに比べれば、耐久力や耐性付与は劣るが、何よりも人気の要因は、安くて良質というところ。
費用対効果が高くて愛用者が多いそうだ。
他にもダイヒレンの触角は針金のように細いのに、鋼のように頑丈でしなやかな事から、鞭系の武器の素材に使用され、これまた人気が高いとの事。
冒険者達からはコスパのよさが重宝され、作り手たちからは加工が容易でいて、性能がいいというところで愛されていると語ってくれた。
なるほどね、だから頭部を狙えって事だったわけだ。
触角は頑丈だから、多少は無理してもいいようだけど、触角以上に需要があるのは、上翅と下翅だから無傷で手に入れたいわけだな。
俺が銃で胴体を撃った対象は、その時点で価値無しになるんだな。
クラックリックが粘液を体に付着させたまま催促すれば、「おお、すまん」と言って、ギムロンは蹲踞からつと立ち上がりクラックリックを手伝う。
――――作業。それはダイヒレンと呼ばれるデカいGの亡骸を引きずり、壁面に立てかけていくという行動。
俺からすれば絶対にやりたくない作業である。
タチアナもその行動に目を向けて、ぶるりと体を震わせていた。
連動するように三つ編みも揺れる。
嬉々として立てかけている二人の姿はホラーだ……。
「かなりいたの~」
「ああ。大収穫だな」
返ってくる発言を受けながら、地面を見渡すギムロン。まだ亡骸が転がっていないかの確認のようだ。
「おっと」
と、粘液の中から触角を拾い上げこれまた隅に置いている。
ギムロンの太い指に粘液が糸を引く。気持ち悪い……。
クラックリックは松明で壁面を照らしつつ、なにが嬉しいのかご満悦の表情。
見たくはないが、灯りに照らされる以上、どうしても目に入ってくるから困ったもんである。
――……ずらりと壁に並べられた頭部の欠損したG。
死しても尚、松明の火に対して黒い光を反射させてくる。
中には胴体部分が欠損したのもいる。俺が銃で撃って倒したGだ。
地面をランタンで照らせば、白い粘液が一面にベッタリ……。正に足の踏み場もないといったところ。ここより先に進みたくないな……。
まあ、このままGの亡骸が転がった道を歩くよりは数段いいが。
「ありがとう。歩きやすくしてくれる為に、わざわざどかしてくれて」
満足げな二人に典雅な一礼と共にお礼を口にする。
「いやいや、そんなんじゃねえよ」
と、ギムロン。
どうやら俺やタチアナの為にした行動ではないようだ。
じゃあ何なんだ? と、疑問符を浮かべれば、
「今は先を急ぐからな」
うん、俺が求めている答えじゃないよドワーフ。
「後で作業をしやすくする為にです」
うん、俺が求めている答えじゃないよハンター。
松明にてGを照らしつつ二人は「これは駄目」「コイツは最高だの~」とか、選定をしている。
「まじで何なの?」
いい加減に答えを聞きたい。
「何じゃ、こういうのは初めてかい?」
初めてだからでっかいGに悲鳴を上げてたわけだけど。初めてじゃなくても悲鳴を上げる自信しかないけどな。
「ダイヒレンの部位を回収するのよ」
おう、ギムロンよ。いま凄いことを言ったな……。
「何の為に?」
本当なら、【何の為にそんな気持ちの悪いことするの?】って発言したかったけども。
「何の為って、決まってんだろう。素材だ」
驚きの発言だよ。あまりの発言内容に俺は後退りだ。
「素材!? だと……?」
「おう、素材よ!」
樽のような体で胸を反らして得意げだが、どうしても腹の方が前に押し出されるギムロンのメタボボディ。
メタボボディが素材の利用法を教えてくれる。
――――ダイヒレンの外骨格からなる上翅からは、とても軽くて頑丈な鎧や、上翅をそのままの状態で加工したカイトシールドなんかが作られるそうだ。
撥水性に富んでいて、天候の悪い中でも行動する冒険者、とくに駆け出しから一皮むけたような冒険者には人気の高い防具らしく、仕立てる者の技量が高ければ、火に耐性のある物にもなるらしい。
駆け出し卒業の冒険者だけでなく、ベテランもダイヒレンの上翅から出来る装備を好んで使う者も多いとか。その場合はやはりピンの物で仕立てるそうだ。
下翅部分は上翅ほどではないが丈夫で、軽さでは勝る素材。
下翅も撥水性に富み、これまた作り手の技量で火に対する耐性が備わる。
主に、金属鎧を風雨から守る為の丈長の上着であるシュールコーになったり、魔法を使用する者たちが好むローブの素材として使用される。
シュールコーにおいては、駆け出しからベテラン冒険者だけでなく、旅をする商人なんかにも人気があり、上翅の防具よりも、下翅の仕立ての方が需要は多いとのこと。
取得難易度の高いモンスターの素材から作られる防具などに比べれば、耐久力や耐性付与は劣るが、何よりも人気の要因は、安くて良質というところ。
費用対効果が高くて愛用者が多いそうだ。
他にもダイヒレンの触角は針金のように細いのに、鋼のように頑丈でしなやかな事から、鞭系の武器の素材に使用され、これまた人気が高いとの事。
冒険者達からはコスパのよさが重宝され、作り手たちからは加工が容易でいて、性能がいいというところで愛されていると語ってくれた。
なるほどね、だから頭部を狙えって事だったわけだ。
触角は頑丈だから、多少は無理してもいいようだけど、触角以上に需要があるのは、上翅と下翅だから無傷で手に入れたいわけだな。
俺が銃で胴体を撃った対象は、その時点で価値無しになるんだな。
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