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チートがほぼ無い冒険
PHASE-257【別に濁となじゃないから!】
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{登録はよはよ!}
がっつくなよ死神……。
ここでおもしろ半分に精神世界を攻撃したら、取り返しのつかない事になりそうだから――――、
{俺のIDに送ってこいよ}
ここでも上からな文面を送れば、
ファーン♪
おっと、ピコーンやピローン♪ でも、テッテレー♪ でもない第三の音――――。
「だから早えよ!」
弓なりになって咆哮すれば周囲から響めき。
嘘くさい咳払いで誤魔化しつつ、ディスプレイに目を向ける。
どんだけ飢えてんだよ……。
性格に難がありそうだけど、スタイルのいい美人だし、上手くすれば俺でも攻略できるんじゃないかと思えるくらいにちょろそうだな。
可哀想なボッチ美人死神のフレンド登録をOKにしてあげれば、長々とした感謝のメールが送られてきた……。
感謝の文を目にすれば、やはりボッチの病んでる系だというのがよく理解でき、俺は対照的に短い適当な返信をしてやり取りを終えた。というか、さっさと終えたかったので無理矢理に終えた。
「ふぅ……」
小さく嘆息を一つ吐いてから天井を眺める。
セラが嘘をついていないなら、この世界に転生したのは俺一人だけか。なんか寂しいが、それ以上に虚しくもある。
どん底の世界に投げ出されたんだからな。
十六の童貞がこの世界を救うとか本来ならあり得ないことだから。
むしろ童貞が世界を救っていいのか? と、皆に問いたいよ……。
だがよかったよ。俺の周りは有能な人材が多くて。
本当なら俺だけが転生された選ばれし者! とかって感じで、優越感と独占欲がわき出てきてもいいんだろうけど……。
さっきのメール内容に目を通した時点で、二つの感情は虚空に消え去ったからな……。
「勇者殿」
プルプルと震えながら立ち上がる族長。
こちらに歩き出そうとしたから、急いでこちらから近づけば、好意として受け取ってくれたのか頭を下げてくる。
そこから継ぐように、
「我々はどうしたらいいのでしょうか」
「ここでの問題は解決。誤解を解くために町に戻ればいいんじゃないかな。俺たちが説明するし」
問題なんて起こらないだろう。
「それは有りがたいのですが……」
チラリと全体を見渡す族長。
元々、町に住んでいたのは四十ほど。だが今では、南からトロールたち魔王軍によって連れてこられた者たちも含めれば百を超える。
そこそこ大きな町ではあるが、現在は食糧難でもある。
そんな中で、いままでの倍以上のコボルトが町に住むとなれば、逼迫となるのは火を見るよりも明らか。
飢えから新たな怨嗟が生み出されるのはよくない。
ミズーリから食料を出すのもいいかもしれないが、あんまりポンポン提供すれば自立心が失われる。
食糧難とはいえ、今は生産も順調。出来る限り、この世界の物で対応したいとも考えている。
う~ん……。考えどころだな。提供しなきゃいけない時は提供も必要と考えるべきか――――。
もう一度、見渡せば、俺に向けて今後の展望に不安を抱いた瞳が向けられ、小さなコボルト達も怯えているような、縋るような目で俺を見る。
「勇者なんですから、どうにかしてください」
俺たちより先にこの状況に対面したコクリコが発せば、同じ先発であるライとクオンもコボルト達に負けないくらいの目で俺を見てくる。
「まったく。この俺を誰だと思っている」
ここで格好付けたくなるのが、中二病が抜けきれていない証拠だろう。
皆に背を向けてから肩越しに振り返る所なんて、ナルシストもいいところ。
あえてマントを大げさに翻す所作なんてとくにナルシストだね。
男前でもないのにね。
「奇跡の人。遠坂 亨さんだぞ。勇者にしてギルド会頭。覗き魔で夜の帝王のトールさんだぞ」
と、継ぐ。
「後半二つはいりません」
うるさいぞコクリコ。俺には必要なんだよ。エロも含めて俺という存在が形成されているんだ。
「清濁含めて受け入れるのがギルド会頭だぜ。なあクラックリック」
「濁の部分が俺ですね。分かります……」
「……いや……、そんなつもりで言ったんじゃないよ。たまたまメンバーで目に入ったから言っただけだよ」
いい歳したおっさんがヘコまないでくれ。哀愁が半端ないって!
窓際に追いやられたおっさんみたいだぞクラックリック。
このままだと日がな一日を公園で弁当食って時間を過ごす、元サラリーマンルート待ったなしじゃないか。
「今回は大いに助かった。俺たちは後発だし、コボルト退治のクエスト報酬もないのについてきてくれたからな。王都に戻ったら功績を皆に伝えるさ」
きっとクラックリックと一緒に参加したハンター職たちも、肩身が狭い中で頑張っているにちがいない。
「今回の活躍を俺が伝えるから。これからも大いに頼らせてもらうよ」
「信任を得られる立場になれるよう励みます」
「うん。期待するから」
どんだけ普段から後ろ指をさされているんだろう……。
クラックリックには功績に対する焦りが見える。ギルド内での不協和音に繋がらないように、今回の功績を大々的に喧伝させてもらおう。
がっつくなよ死神……。
ここでおもしろ半分に精神世界を攻撃したら、取り返しのつかない事になりそうだから――――、
{俺のIDに送ってこいよ}
ここでも上からな文面を送れば、
ファーン♪
おっと、ピコーンやピローン♪ でも、テッテレー♪ でもない第三の音――――。
「だから早えよ!」
弓なりになって咆哮すれば周囲から響めき。
嘘くさい咳払いで誤魔化しつつ、ディスプレイに目を向ける。
どんだけ飢えてんだよ……。
性格に難がありそうだけど、スタイルのいい美人だし、上手くすれば俺でも攻略できるんじゃないかと思えるくらいにちょろそうだな。
可哀想なボッチ美人死神のフレンド登録をOKにしてあげれば、長々とした感謝のメールが送られてきた……。
感謝の文を目にすれば、やはりボッチの病んでる系だというのがよく理解でき、俺は対照的に短い適当な返信をしてやり取りを終えた。というか、さっさと終えたかったので無理矢理に終えた。
「ふぅ……」
小さく嘆息を一つ吐いてから天井を眺める。
セラが嘘をついていないなら、この世界に転生したのは俺一人だけか。なんか寂しいが、それ以上に虚しくもある。
どん底の世界に投げ出されたんだからな。
十六の童貞がこの世界を救うとか本来ならあり得ないことだから。
むしろ童貞が世界を救っていいのか? と、皆に問いたいよ……。
だがよかったよ。俺の周りは有能な人材が多くて。
本当なら俺だけが転生された選ばれし者! とかって感じで、優越感と独占欲がわき出てきてもいいんだろうけど……。
さっきのメール内容に目を通した時点で、二つの感情は虚空に消え去ったからな……。
「勇者殿」
プルプルと震えながら立ち上がる族長。
こちらに歩き出そうとしたから、急いでこちらから近づけば、好意として受け取ってくれたのか頭を下げてくる。
そこから継ぐように、
「我々はどうしたらいいのでしょうか」
「ここでの問題は解決。誤解を解くために町に戻ればいいんじゃないかな。俺たちが説明するし」
問題なんて起こらないだろう。
「それは有りがたいのですが……」
チラリと全体を見渡す族長。
元々、町に住んでいたのは四十ほど。だが今では、南からトロールたち魔王軍によって連れてこられた者たちも含めれば百を超える。
そこそこ大きな町ではあるが、現在は食糧難でもある。
そんな中で、いままでの倍以上のコボルトが町に住むとなれば、逼迫となるのは火を見るよりも明らか。
飢えから新たな怨嗟が生み出されるのはよくない。
ミズーリから食料を出すのもいいかもしれないが、あんまりポンポン提供すれば自立心が失われる。
食糧難とはいえ、今は生産も順調。出来る限り、この世界の物で対応したいとも考えている。
う~ん……。考えどころだな。提供しなきゃいけない時は提供も必要と考えるべきか――――。
もう一度、見渡せば、俺に向けて今後の展望に不安を抱いた瞳が向けられ、小さなコボルト達も怯えているような、縋るような目で俺を見る。
「勇者なんですから、どうにかしてください」
俺たちより先にこの状況に対面したコクリコが発せば、同じ先発であるライとクオンもコボルト達に負けないくらいの目で俺を見てくる。
「まったく。この俺を誰だと思っている」
ここで格好付けたくなるのが、中二病が抜けきれていない証拠だろう。
皆に背を向けてから肩越しに振り返る所なんて、ナルシストもいいところ。
あえてマントを大げさに翻す所作なんてとくにナルシストだね。
男前でもないのにね。
「奇跡の人。遠坂 亨さんだぞ。勇者にしてギルド会頭。覗き魔で夜の帝王のトールさんだぞ」
と、継ぐ。
「後半二つはいりません」
うるさいぞコクリコ。俺には必要なんだよ。エロも含めて俺という存在が形成されているんだ。
「清濁含めて受け入れるのがギルド会頭だぜ。なあクラックリック」
「濁の部分が俺ですね。分かります……」
「……いや……、そんなつもりで言ったんじゃないよ。たまたまメンバーで目に入ったから言っただけだよ」
いい歳したおっさんがヘコまないでくれ。哀愁が半端ないって!
窓際に追いやられたおっさんみたいだぞクラックリック。
このままだと日がな一日を公園で弁当食って時間を過ごす、元サラリーマンルート待ったなしじゃないか。
「今回は大いに助かった。俺たちは後発だし、コボルト退治のクエスト報酬もないのについてきてくれたからな。王都に戻ったら功績を皆に伝えるさ」
きっとクラックリックと一緒に参加したハンター職たちも、肩身が狭い中で頑張っているにちがいない。
「今回の活躍を俺が伝えるから。これからも大いに頼らせてもらうよ」
「信任を得られる立場になれるよう励みます」
「うん。期待するから」
どんだけ普段から後ろ指をさされているんだろう……。
クラックリックには功績に対する焦りが見える。ギルド内での不協和音に繋がらないように、今回の功績を大々的に喧伝させてもらおう。
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