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チートがほぼ無い冒険
PHASE-259【完全催眠が使える人の台詞じゃねえか!】
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「何をするんですか!」
と、生意気にも怒気を俺にぶつけてきやがった。
それがどれだけ俺の勘気に触れる発言か分かっているのだろうか?
お前が今とらなければならない態度は、徹頭徹尾、謙虚な姿勢なんだよ。
それも分からん大うつけが!
「何をするんですか! ――――だと。お前は何か勘違いをしていないか? それとも虚空の彼方に記憶でも飛ばしたのかな? だとすると、随分と些末な脳のようだ。それともお花畑が満開の頭をしているのか?」
俺の心底で沸々と滾ってくる負の感情。
闇に支配されたかのような、仄暗く、絶望を伝える使者の如き言動。
いままでの語気から対極へと変わったことで、喜んでいたコボルト達は、水を打ったように静まりかえった。
クラックリック達はゴクリと生唾を飲む。しっかりとその音は俺の耳朶にも届いた。
「俺はな、コボルトを討伐するクエストになんて端から参加していない。ましてやトロールなんて倒す予定もなかった……」
「ト、トール?」
「俺は――――お前をしばき倒すために来たんだよ! さあ来い! このクエストにおいて、お前の前に立ちはだかる最後の相手は、ギルド・雷帝の戦槌の会頭にして、勇者であるこの俺だ!」
「お、落ち着いてください。反省してますので!」
「構えろ、まな板。反省なんてのはお前個人の考え。言わば自己解決なだけだ。俺はこの件について、落とし前はしっかりとつけさせてもらう」
「ちょっと、目が本気じゃないですか。座りに座ってますよ」
「メチャクチャにしてやる!」
「冗談ではありませんよ」
あ! 逃げやがった! 何という素早い反転。見習いたいくらいの機動性だな。
だが――――、
「馬鹿めが! この俺から逃げおおせると思うな! いでよティーガーアインス!」
手にしたプレイギアをこの空洞より続く一本道の通路に向ければ、
「はぁぁぁぁぁ!?」
全長8メートルを超える鉄の塊が見事に塞いでくれる。
トロールもこの空洞を使用していれば、高さに隙間が生じたが、コボルト専用の通路となれば、塞ぐことは十分に可能。
落とし前のために、コクリコに逃げられるわけにはいかないからな。
最初は俺を警戒していたが、俺が手を出さないと思ったのか、族長の感謝の言葉を全身で受け止めようとする隙の見せ方はいただけなかったな。
お前の失態は、俺を警戒し、通路付近に待機しながら応対をする事を怠ったことだ。
「コクリコ。誰が――――逃げていいと言った?」
一歩一歩ゆったりとした足運びで、逃げることの出来ないコクリコへと近づいていく。
余裕のある足運びに、コクリコは重圧を受けているご様子。
勝ち気の馬鹿凸が戦いていやがる。
「トール。本当に……止めましょう……。冗談も度が過ぎると、誰も笑ってくれませんよ」
「冗談? なぜ冗談で俺がここまで足を運ばないといけない。ハハハハハ――――おかしな事を言うじゃないか。誰も笑わないが、俺は哄笑してしまったぞ」
「目が笑っていません!」
「ま、笑いはなくても驚きの声はあがっているじゃないかね」
突如として現れた鉄の塊に、クラックリック以外のメンバーと、コボルト達が恐怖の混じった声を上げる。
みんなが謎の存在に慌てふためく中で、クラックリックが得意げに語り出す。
――あの鉄の象は、今回戦ったトロールを容易く一蹴する存在である、岩石の塊からなるゴーレムを容易く破壊し尽くした――。
と、まるで自分の行いのように語れば、ゴーレムが容易いという発言で、更にざわつきが大きくなった。
でもって語る最中に、ティーガーを鉄の象から、魔象と呼称しだすクラックリック。
初めて耳にした単語だ。
更にそこから継ぎ――、
「この鉄の塊の名は――――、魔象オットー・カリウスだ」
「ちげぇぇぇぇぇよ!」
「あれぇ!?」
とんでもない間違え方だな。
そもそも俺はティーガー1って言ってたし! さっきもティーガーって言ってたし。
俺がゴーレム戦で調子に乗って口走ったけども。
広めるんじゃないぞ間違いを! 軍人リスペクトのゲッコーさんに、俺が怒られるんだからな。
――――と、
「何処へ行こうというのかね?」
必死になってティーガーをよじ登り、通路へと繋がる隙間を探そうとしている。
いかにお前がまな板の貧相なボディであっても、隙間を通る事など不可能なのだよ。
「さあ、潔く折檻されるがいい」
「……はぁ……」
嘆息が一つ返ってきた。
諦めたかのようにティーガーから飛び降りるコクリコ。
――――だが、こちらに向けてくる目には、諦めを宿してはいなかった。
獣のようなぎらつく琥珀の瞳。諦めたのではなく、挑むつもりのようだ。
「仕方ない。ちょっとピリアが使えるからといって、勘違いしている勇者を折檻してあげましょう」
「――カカカッ――――」
「何ですか! その悪道に墜ちたような笑い方は!」
「いやなに。まな板風情が俺に折檻とはな。よもや勝つつもりか?」
以前の俺と思ってほしくないな。
自信をもって歩み寄れば、コクリコは後退り。しかし、ティーガーによって後退を妨げられる。
背中が鉄の塊に触れれば、それ以上は下がれない。
「トールはもう一度、私の拳によってくの字を描いて、体を丸めたいようですね。い、いいでしょう。泣いて縋る姿が見えますよ……」
「おいおい、声が震えているように思えるのだがな。怯えているのかな? この俺に。無理もない。俺はすでにお前を超えた存在だからな」
「あまり強い言葉を使わない方がいいですよ。弱く見えますから」
――………………。
――…………。
――……。
「それは真の強者だけが使っていい台詞だ!」
「ならば身の丈に合った発言だったでしょう!」
と、生意気にも怒気を俺にぶつけてきやがった。
それがどれだけ俺の勘気に触れる発言か分かっているのだろうか?
お前が今とらなければならない態度は、徹頭徹尾、謙虚な姿勢なんだよ。
それも分からん大うつけが!
「何をするんですか! ――――だと。お前は何か勘違いをしていないか? それとも虚空の彼方に記憶でも飛ばしたのかな? だとすると、随分と些末な脳のようだ。それともお花畑が満開の頭をしているのか?」
俺の心底で沸々と滾ってくる負の感情。
闇に支配されたかのような、仄暗く、絶望を伝える使者の如き言動。
いままでの語気から対極へと変わったことで、喜んでいたコボルト達は、水を打ったように静まりかえった。
クラックリック達はゴクリと生唾を飲む。しっかりとその音は俺の耳朶にも届いた。
「俺はな、コボルトを討伐するクエストになんて端から参加していない。ましてやトロールなんて倒す予定もなかった……」
「ト、トール?」
「俺は――――お前をしばき倒すために来たんだよ! さあ来い! このクエストにおいて、お前の前に立ちはだかる最後の相手は、ギルド・雷帝の戦槌の会頭にして、勇者であるこの俺だ!」
「お、落ち着いてください。反省してますので!」
「構えろ、まな板。反省なんてのはお前個人の考え。言わば自己解決なだけだ。俺はこの件について、落とし前はしっかりとつけさせてもらう」
「ちょっと、目が本気じゃないですか。座りに座ってますよ」
「メチャクチャにしてやる!」
「冗談ではありませんよ」
あ! 逃げやがった! 何という素早い反転。見習いたいくらいの機動性だな。
だが――――、
「馬鹿めが! この俺から逃げおおせると思うな! いでよティーガーアインス!」
手にしたプレイギアをこの空洞より続く一本道の通路に向ければ、
「はぁぁぁぁぁ!?」
全長8メートルを超える鉄の塊が見事に塞いでくれる。
トロールもこの空洞を使用していれば、高さに隙間が生じたが、コボルト専用の通路となれば、塞ぐことは十分に可能。
落とし前のために、コクリコに逃げられるわけにはいかないからな。
最初は俺を警戒していたが、俺が手を出さないと思ったのか、族長の感謝の言葉を全身で受け止めようとする隙の見せ方はいただけなかったな。
お前の失態は、俺を警戒し、通路付近に待機しながら応対をする事を怠ったことだ。
「コクリコ。誰が――――逃げていいと言った?」
一歩一歩ゆったりとした足運びで、逃げることの出来ないコクリコへと近づいていく。
余裕のある足運びに、コクリコは重圧を受けているご様子。
勝ち気の馬鹿凸が戦いていやがる。
「トール。本当に……止めましょう……。冗談も度が過ぎると、誰も笑ってくれませんよ」
「冗談? なぜ冗談で俺がここまで足を運ばないといけない。ハハハハハ――――おかしな事を言うじゃないか。誰も笑わないが、俺は哄笑してしまったぞ」
「目が笑っていません!」
「ま、笑いはなくても驚きの声はあがっているじゃないかね」
突如として現れた鉄の塊に、クラックリック以外のメンバーと、コボルト達が恐怖の混じった声を上げる。
みんなが謎の存在に慌てふためく中で、クラックリックが得意げに語り出す。
――あの鉄の象は、今回戦ったトロールを容易く一蹴する存在である、岩石の塊からなるゴーレムを容易く破壊し尽くした――。
と、まるで自分の行いのように語れば、ゴーレムが容易いという発言で、更にざわつきが大きくなった。
でもって語る最中に、ティーガーを鉄の象から、魔象と呼称しだすクラックリック。
初めて耳にした単語だ。
更にそこから継ぎ――、
「この鉄の塊の名は――――、魔象オットー・カリウスだ」
「ちげぇぇぇぇぇよ!」
「あれぇ!?」
とんでもない間違え方だな。
そもそも俺はティーガー1って言ってたし! さっきもティーガーって言ってたし。
俺がゴーレム戦で調子に乗って口走ったけども。
広めるんじゃないぞ間違いを! 軍人リスペクトのゲッコーさんに、俺が怒られるんだからな。
――――と、
「何処へ行こうというのかね?」
必死になってティーガーをよじ登り、通路へと繋がる隙間を探そうとしている。
いかにお前がまな板の貧相なボディであっても、隙間を通る事など不可能なのだよ。
「さあ、潔く折檻されるがいい」
「……はぁ……」
嘆息が一つ返ってきた。
諦めたかのようにティーガーから飛び降りるコクリコ。
――――だが、こちらに向けてくる目には、諦めを宿してはいなかった。
獣のようなぎらつく琥珀の瞳。諦めたのではなく、挑むつもりのようだ。
「仕方ない。ちょっとピリアが使えるからといって、勘違いしている勇者を折檻してあげましょう」
「――カカカッ――――」
「何ですか! その悪道に墜ちたような笑い方は!」
「いやなに。まな板風情が俺に折檻とはな。よもや勝つつもりか?」
以前の俺と思ってほしくないな。
自信をもって歩み寄れば、コクリコは後退り。しかし、ティーガーによって後退を妨げられる。
背中が鉄の塊に触れれば、それ以上は下がれない。
「トールはもう一度、私の拳によってくの字を描いて、体を丸めたいようですね。い、いいでしょう。泣いて縋る姿が見えますよ……」
「おいおい、声が震えているように思えるのだがな。怯えているのかな? この俺に。無理もない。俺はすでにお前を超えた存在だからな」
「あまり強い言葉を使わない方がいいですよ。弱く見えますから」
――………………。
――…………。
――……。
「それは真の強者だけが使っていい台詞だ!」
「ならば身の丈に合った発言だったでしょう!」
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