異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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チートがほぼ無い冒険

PHASE-268【穀倉地帯構想】

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「会頭」
 ここでリオスで頑張るギルドメンバーのリュミットが一歩、俺の方に足を進める。

「お、なんだい」
 返せば俺に手が届く位置まで接近。
 俺に不遜がないように、俺が呼応したら接近するシステムかな?
 うちは王族とかじゃなくて、ギルドだからかたっ苦しいのはいいんだよ。最初から急接近でOKだ。
 そもそもが荒くれ冒険者のはずなのにな~。ギムロンのような無遠慮さはどうにかしてほしいところもあるが、冒険者らしくもっとフランクでいいんだぞ。
 先生の指導が行き届きすぎてるよ。

「これを副会頭にお渡しいただけますか」
 俺の前に出されるのは、巻かれた羊皮紙が三巻き。
 リュミット達がここに派遣された仕事内容の一つが、完了された事が書かれているらしい。
 
 リオスの復興以上に重要な調査報告だそうだ。
 
 ――――内容は、広大な湿地帯を利用した大穀倉地帯構想。

 流域の整理を行い、湿地の開拓から米などの主食の生産をと先生は考えているようだ。
 広大な湿地帯を利用し、王都と周辺の人々が十分に食料を得、兵糧の備蓄も可能とするために、リオスにはクランベリーだけでなく、穀倉地帯の発展にも着手してもらいたいと構想している。

 クランベリーを生産する場所を除いても、あまりある広大な湿地の土地を有するリオスには、王都以上の穀物生産が可能だと王様にも進言しているようで、二つ返事で王様からの認可を得た先生は、リュミット達に作物生産が安全に行えることが可能な土地なのかを検分させていたそうだ。

 カリナ代表も穀倉地帯構想には賛同しており、地元民との軋轢も生じないという交渉も済んでいるそうだ。
 むしろ食料が増えることはありがたいとの事だ。
 ここまでの流れは先生がすでに推測していたそうで、後はこの羊皮紙を先生に渡せば、すでに準備が整っている開拓勢が行動することになっているらしい。

 ギルドメンバーだけでなく、王都の兵士に、元流民からなる開拓者たちの大規模移動が行われるそうだ。
 その為の食料も随時、王都より運搬される。
 あれ? じゃあ、南から連れてこられたコボルト達もここに残って良いんじゃないか? とも思ったが、王都の働き手が減少するわけだから、結果としてはいいのかな。

「分かった。これは直ぐにでも実行するように先生に言っておく」

「よろしくお願いします」
 柔和な笑みを見せると、「では」と言って、リュミットはそそくさと仕事に戻っていく。
 出来た人物である。無駄がない。先生がリオスのギルド責任者にしたのも頷ける。




「くぁ~」
 言葉尻を伸ばして、体も伸ばす。
 コキコキと背中からいつものように小気味のいい音が耳朶に届く。
 リオスにて一泊。
 戦闘による徹夜明けに加えて、祝勝会と言って、ギムロンの酒をクランベリージュースに混ぜて飲んだもんだから、ぐっすりだった。
 おかげで昼前だ。

「おう早いね~」
 寝惚け眼で宿の二階から一階の食堂に移動。こういう建物の造りってのは大小問わず似たようなもんだな。
 うちのギルドハウスの小さいバージョンだ。

「よく眠られたようですね」
 可愛い笑顔を見せてくれるタチアナが、栗毛の三つ編みを揺らしながら頭を下げてくる。
 他の面々は? と、問えば、皆して洞窟に戻ったとの事。
 湿地に足を踏み入れなくてもいいルートを見つけたことから、空が白む前くらいには出発したそうだ。
 目的はもちろんG……。
 持ってこなくていいのに……。
 俺の表情を読み取ったのか、タチアナも同じような表情だ。
 
 ノリノリのギムロンとクラックリックに、楽しみだとライ。クオンはテンションが低く、そしてコクリコも人足として駆り出されている。
 皆、しこたま食って飲んだってのに、早起きで元気だね~。
 
 俺たちが使用していた二頭立ての馬車は、G回収のためにギムロンが使用。
 それを聞いて更にテンションが下がる……。王都まで亡骸を運ぶ気だな……。
 当然といえば当然だが、帰りまで一緒か……。
 
 よかったよ。俺には頼れる名馬、ダイフクがいてくれて。
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