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極東
PHASE-428【それボスのポジション】
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メイドさん達が詠唱を耳にして慌てふためく中、俺は余裕だ。
ゲッコーさんがこの場にいない。つまりは――――、
「――――数多なる破壊の曲線を天よりえがけゅ!?」
「長ったらしいな。トールみたいに一言発するだけで、ぽんっと出せないものなのか。その大魔法ってのは?」
見えないがゲッコーさんの声がしっかりと聞こえる。
声を耳にして俺はガッツポーズ。
如何に高位の魔族であるヴァンパイアだろうとも、伝説の兵士が気配を消し、且つ光学迷彩を使用したなら、それは最早この場に存在しないのと一緒。
存在しない者を捕捉することなど出来ないのだ。
感知能力が高いベルだって、温泉ではしっかりと見られているわけだしな!
体を硬直させているようにしか見えないゼノだが、硬直の原因が光学迷彩を解き、姿を現す。
高らかに上げていた右手は無理矢理に下ろされ、関節を極められている。
首は隆起した筋肉からなる腕によって締め上げられていた。
まるで大蛇が巻き付いているかのようなイメージを見る者に与えてくる。
急な締め付けに襲われたからか、吸気でしっかりと酸素を体に取り込む事が出来なかったようで、息苦しそうに口は半開き。粘度のある涎をだらしなく垂らしている。
「アンデッドでも呼吸は大事なんだな。それにしても汚いじゃないか」
酷薄な声は、この場に戦慄を走らせる。
涎が腕に付着したのが嫌だったのか、ゲッコーさんは更に締め付けを強くする。
ジタバタと暴れたいだろうが、それをさせてくれないのがゲッコーさんの拘束だ。
ああなってしまえば、並の膂力じゃ逃げられないだろう。
もしゲッコーさんより力のある存在だったとしても、関節を極められて、呼吸もままならない状態なら、抜け出すことは不可能。
膂力の面でも、ゼノはゲッコーさんに勝てないようだし。
「汚いのはよくない」
立て続けに汚いって単語を使用したけど。涎じゃなくて、戦い方か。それとも両方かな?
ともかく、あのヴァンパイアは怒らせてはいけない人達を怒らせるのが得意なようだ。
白蝋じみた肌から更に血色が奪われているように見えるのは、いままで経験したことのない恐怖に襲われているからだろう。
このまま首の骨をへし折られるのか、それとも首に刃物を突き立てられるか。
ゼノは様々な恐怖を頭の中で巡らせているのだろう。
でも、あいつはアンデッドだろうから、首を折られたところで死にはしないのかな?
「くおぉぉぉぉぉぉりゅぃぃぃぃぃ……」
声にならない声を発しつつ、抵抗しようとすればするほど、容赦のない締め付けがゼノを襲う。
今にも黄色い目が白目になりそうだ。
影達も動きがピタリととまる。
先ほどもだったが、術者にアクシデントが生じると、機能停止となるようだ。
完全自立型が、この魔法の完成形と俺は見る。
つまりゼノのは不完全魔法だな。
「まったく、トールが大魔法を使用しないのは、ここいらの事を考えてだ。お前も少しは考えろ。じゃないと――――殺す」
キーンってやつだ。
擬音で例えるならソレだ。
語末の発言で、一瞬にして、一帯が氷の世界に変わったかのような錯覚に陥ってしまう……。
本気の殺意を見せるゲッコーさんには、流石のベルも緊張してしまったようで、コクリと生唾を飲んでいるご様子。
ベルでそれだ。俺だけでなく、コクリコにシャルナ。イリーにメイドさん達が、ゲッコーさんの殺意を感じ取れば、皆そろって仲良く震え出す。
やべえ……。やっぱ怖えよ……。
伝説の兵士の凄みはヤバイよ。
魔法とかベルみたいな力は持っていないけど、数え切れない戦場を渡り歩き、任務を成功させ、様々な武器や兵器を操り、無手でも強い。
高順氏のパラメーターの武力部分が87に対して、この人は95なんだよな。
この世界に照らし合わせた数値だとすると、100が最高値だとすれば、この人はカンストに近いんだよね。
強すぎだな。
ベルはカンストオーバーだけども、ゲッコーさんは、95にプラス武器兵器ってので計算を出すべき人物だな。
「――――よし」
ここでなぜかゼノを解放する。
「じゃあ、普通にやれ。女たちを巻き込むな」
低く重厚な声は、ゼノを押し黙らせるには十分だった。
四つん這いになって新鮮な空気を貪るように吸い込んでいる最中に、怯えきった目でゲッコーさんを見上げつつ、弱々しく首肯で返していた。
「戦え」
――……は?
「はあ!?」
おかしいおかしい。
なんなの? まるでゼノの上役みたいな立ち位置じゃないか。
不甲斐ない部下を力で脅して、退くことは許さない。死ぬまで戦えと命令するようなポジションみたいなんだけど……。
普通に、そこはゲッコーさんが倒せばいいんじゃないの?
なんで俺に仕掛けるように指図するの?
どんだけスパルタなんだよ。
状況を考えてほしい。貴男は軍人なんだから。状況判断をもっとも大事にする人なんじゃないの? そこはスマートに貴男が倒すのがベストでしょ?
なぜに俺にまだ戦わせようとする……。
「お前が生き残るには、トールに勝つ事だけだ。それ以外に道は無い」
ほらやっぱりおかしい事を言っているよ。
あのハリウッディアンは、おかしな事をサラッと言ったよ……。
完全に向こう側じゃねえか!
ヴァンパイアを支配する、冷酷非情なボスポジじゃねえか!
ゲッコーさんがこの場にいない。つまりは――――、
「――――数多なる破壊の曲線を天よりえがけゅ!?」
「長ったらしいな。トールみたいに一言発するだけで、ぽんっと出せないものなのか。その大魔法ってのは?」
見えないがゲッコーさんの声がしっかりと聞こえる。
声を耳にして俺はガッツポーズ。
如何に高位の魔族であるヴァンパイアだろうとも、伝説の兵士が気配を消し、且つ光学迷彩を使用したなら、それは最早この場に存在しないのと一緒。
存在しない者を捕捉することなど出来ないのだ。
感知能力が高いベルだって、温泉ではしっかりと見られているわけだしな!
体を硬直させているようにしか見えないゼノだが、硬直の原因が光学迷彩を解き、姿を現す。
高らかに上げていた右手は無理矢理に下ろされ、関節を極められている。
首は隆起した筋肉からなる腕によって締め上げられていた。
まるで大蛇が巻き付いているかのようなイメージを見る者に与えてくる。
急な締め付けに襲われたからか、吸気でしっかりと酸素を体に取り込む事が出来なかったようで、息苦しそうに口は半開き。粘度のある涎をだらしなく垂らしている。
「アンデッドでも呼吸は大事なんだな。それにしても汚いじゃないか」
酷薄な声は、この場に戦慄を走らせる。
涎が腕に付着したのが嫌だったのか、ゲッコーさんは更に締め付けを強くする。
ジタバタと暴れたいだろうが、それをさせてくれないのがゲッコーさんの拘束だ。
ああなってしまえば、並の膂力じゃ逃げられないだろう。
もしゲッコーさんより力のある存在だったとしても、関節を極められて、呼吸もままならない状態なら、抜け出すことは不可能。
膂力の面でも、ゼノはゲッコーさんに勝てないようだし。
「汚いのはよくない」
立て続けに汚いって単語を使用したけど。涎じゃなくて、戦い方か。それとも両方かな?
ともかく、あのヴァンパイアは怒らせてはいけない人達を怒らせるのが得意なようだ。
白蝋じみた肌から更に血色が奪われているように見えるのは、いままで経験したことのない恐怖に襲われているからだろう。
このまま首の骨をへし折られるのか、それとも首に刃物を突き立てられるか。
ゼノは様々な恐怖を頭の中で巡らせているのだろう。
でも、あいつはアンデッドだろうから、首を折られたところで死にはしないのかな?
「くおぉぉぉぉぉぉりゅぃぃぃぃぃ……」
声にならない声を発しつつ、抵抗しようとすればするほど、容赦のない締め付けがゼノを襲う。
今にも黄色い目が白目になりそうだ。
影達も動きがピタリととまる。
先ほどもだったが、術者にアクシデントが生じると、機能停止となるようだ。
完全自立型が、この魔法の完成形と俺は見る。
つまりゼノのは不完全魔法だな。
「まったく、トールが大魔法を使用しないのは、ここいらの事を考えてだ。お前も少しは考えろ。じゃないと――――殺す」
キーンってやつだ。
擬音で例えるならソレだ。
語末の発言で、一瞬にして、一帯が氷の世界に変わったかのような錯覚に陥ってしまう……。
本気の殺意を見せるゲッコーさんには、流石のベルも緊張してしまったようで、コクリと生唾を飲んでいるご様子。
ベルでそれだ。俺だけでなく、コクリコにシャルナ。イリーにメイドさん達が、ゲッコーさんの殺意を感じ取れば、皆そろって仲良く震え出す。
やべえ……。やっぱ怖えよ……。
伝説の兵士の凄みはヤバイよ。
魔法とかベルみたいな力は持っていないけど、数え切れない戦場を渡り歩き、任務を成功させ、様々な武器や兵器を操り、無手でも強い。
高順氏のパラメーターの武力部分が87に対して、この人は95なんだよな。
この世界に照らし合わせた数値だとすると、100が最高値だとすれば、この人はカンストに近いんだよね。
強すぎだな。
ベルはカンストオーバーだけども、ゲッコーさんは、95にプラス武器兵器ってので計算を出すべき人物だな。
「――――よし」
ここでなぜかゼノを解放する。
「じゃあ、普通にやれ。女たちを巻き込むな」
低く重厚な声は、ゼノを押し黙らせるには十分だった。
四つん這いになって新鮮な空気を貪るように吸い込んでいる最中に、怯えきった目でゲッコーさんを見上げつつ、弱々しく首肯で返していた。
「戦え」
――……は?
「はあ!?」
おかしいおかしい。
なんなの? まるでゼノの上役みたいな立ち位置じゃないか。
不甲斐ない部下を力で脅して、退くことは許さない。死ぬまで戦えと命令するようなポジションみたいなんだけど……。
普通に、そこはゲッコーさんが倒せばいいんじゃないの?
なんで俺に仕掛けるように指図するの?
どんだけスパルタなんだよ。
状況を考えてほしい。貴男は軍人なんだから。状況判断をもっとも大事にする人なんじゃないの? そこはスマートに貴男が倒すのがベストでしょ?
なぜに俺にまだ戦わせようとする……。
「お前が生き残るには、トールに勝つ事だけだ。それ以外に道は無い」
ほらやっぱりおかしい事を言っているよ。
あのハリウッディアンは、おかしな事をサラッと言ったよ……。
完全に向こう側じゃねえか!
ヴァンパイアを支配する、冷酷非情なボスポジじゃねえか!
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