異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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レティアラ大陸

PHASE-483【まさかの新術】

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「行こうか。相手はあの通路の方へと撤退していった」

「臆病者たちが道を案内してくれるか」

「そういうこった」
 強く握りしめていた鞘から残火を抜けば、遅れてベルがレイピアを抜く。
 装飾が美しい護拳が、要塞内の灯りによってキラリと輝く。
 俺の残火も負けじとタリスマンを輝かせる。
 歩み出せば、嬉しいことにベルが横を歩いてくれる。
 俺からではなくベルからだ。ベルが俺の歩調に合わせてくれている。
 ようやく肩を並べて行動する事を許されたような気がするね。

「大きな通路ですね」
 小柄なコクリコがさらに小さく見える通路。
 人間サイズが当たり前ってのを払拭させるサイズだ。
 リオス近くの洞窟でトロールと戦ったけど、こんな感じに広い洞窟だったな。
 トロールが行動できるように作られた洞窟。
 ここではトロールだけでなく、オーガにゴーレムも使用するからな。大きくて当然。
 
 通路の視界は良好。
 ドヌクトスで目にした、ファイアフライを封じたタリスマンと同じ原理だろう。
 青白い光と違って、ここのは緑光だ。
 淡い輝きだけど、等間隔に通路に設置されているから全体がよく見える。
 レッドキャップスには必要のない灯りだろうけど、通常の護衛軍には必要だからな。

「さて、そろそろ出てきてもいい頃なんだろうけど――」
 正直、敵拠点の通路に侵入した時点で、背後を狙われる覚悟もあるんだけども、中々に仕掛けてくる気配がない。
 だからこそ、挑発じみた大きな声を出してみたが、それでも反応はなく、広い通路に俺の声が虚しく反響するだけだ。

「反応なしだね」

「ならば進むのみです」
 シャルナの発言を拾うコクリコが先頭に立とうとするところをゲッコーさんにフードをむんずと掴まれて、後方に回される。
 普段は俺の仕事なんだけどね。今回は慎重に行動してほしいからか、ゲッコーさんが真顔で実行。
 マンティコアの時の反省というか、その後の説教の記憶が甦ったのか、小さくコクコクと頷き、素直に従って後方に移動している。

「しかし、横道とかないな。あっても直ぐに行き止まりだし」
 要塞だから、迷路みたいな通路をイメージしてたんだけどな。
 ある意味、潔い通路だ。

「攻められるというのを想定していないからだろうな。ただ地龍を封じる場所と考えているだけだろう。火龍の時と同じだ。それに攻められたとしても――」

「ぎゃ!?」
 ようやくアクションを起こしてきた。
 一瞬で距離を詰めては来たが、ベルに仕掛けたのが運の尽き。
 要塞外で見たインプに似ていたが、背丈が人間の大人サイズだったような気がする。
 一瞬しか確認が出来なかったので、よくは分からなかった。
 ベルの炎によってすぐに消滅したから。

 俺の後方に位置するランシェルからは、今のはレッサーデーモンという低位悪魔との説明があった。
 インプ然り、低位の悪魔とはいえ、当たり前のように悪魔系のモンスターが出て来るようになったな。
 ベルの発言は途中で断たれたけど、要はレッドキャップスこいつらがここの最大の障害となるって事だな。
 だから要塞の造りはシンプルでいい。
 精鋭が闖入者を討伐するから。

「おう!?」
 目の前に迫るハマグリ刃。
 自慢の斧の一撃を俺は籠手で捌いていなし、残火で屠る。
 オークだった。
 あまりにも斬れすぎる残火のせいで、斬った感覚が手に伝わってこないのは相変わらずだ。
 有りがたくもあるが、命を軽くもしてしまう。

「くそ! 突撃!」
 不意打ちを皮切りに攻め立てたかったようだけど、失敗したとなれば、さっきまで息を潜めていた連中が横合いから現れ、突撃してくる。
 先行はやはりレッドキャップス。数は四。
 一瞬で距離を詰めてくる歩法で俺たちへと狙いを定め、護衛軍の突撃を掩護するといった戦法だ。
 ティーガーによる混乱はあったけども、収拾すれば、突撃隊形は見事なもの。
 四人のうち二人のレッドキャップスを俺とベルが倒す。
 残りの二人は後方へと距離をとる。
 入れ替わるように、様々な亜人から編制された護衛軍による槍衾やりぶすま
 矢を放って突撃を掩護ってのが普通はセオリーなんだろうけど、ここではレッドキャップスが矢の代わりだ。

「コクリコ」
 任せてみようと名を呼べば、

「お任せを」
 大人しく後衛に下がったコクリコが素直に応じ、自信に漲った表情で、手にするワンドを突撃する部隊に向ける。
 ワンドの貴石が赤く――ではなく黄色に輝いた。
 ファイヤーボールも怪しいのに、スタン系であるアークディフュージョンが通用するのだろうか? 
 と、思いきや――――、

「ライトニングスネーク!」

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!」
 聞いたことのない魔法を口にした。
 初耳魔法だった。
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