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死霊魔術師
PHASE-549【高貴な二人】
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三人の女性陣に称賛を受けた侯爵の動きは素早かった。
直ぐさま亜人たちの人数と家畜の数をガルム氏から聞き、当面の食糧と資材、飼料がどれだけ必要かを算出して、羊皮紙に羽根ペンの先端を当てれば、流麗な筆致で記入し、
「誰かある」
と、大河ドラマなんかで戦国大名が口にする台詞を発せば、直ぐさま外で待機していた軽装の兵士が一礼して入室。
「これを食糧管理官であるルビワイトに渡してくれ」
「畏まりました」
両手を出して恭しく巻かれた羊皮紙を受け取ると、一礼して退出。
閉じた扉向こうの通路から、駆け出す足音が聞こえてくる。
肩当てがないタンクトップのようなデザインのレザーアーマーは素早く動けるためのもの。
都市内部だし、伝達係だとあのくらいの装備で十分なようだ。
まあ、王都の兵士に比べたら上等のレザーアーマーだけども。
「感謝の言葉でしか返せない事お許しください」
「その言葉だけで十分ですよ。それに――」
じっと侯爵がガルム氏を見て、次に翁へと目を向ける。
「素晴らしい人材ですね。話を戻しますが、我々の状況を理解してくださっているのならば、ご助力を願えればありがたいのですが――」
と、ここで交渉といったところ。
先ほどは無償で衣食住を提供するとは言っていたけど、提供の言質を受け取ったリズベッドサイドがどういった言動をするのか注視していれば、上座の主がコクリと頷くのが見て取れた。
それを合図に、
「微力ですが喜んでお貸ししましょう。それどころか我々も復権を目指しておりますので、こちらとしてもご助力を願います」
「そうなると、結局はこちらが借りてばかりになるの~」
顎髭をしごきつつ翁が続けば、確かにとガルム氏は自分たちの置かれた立場は同等ではないのだと認識して、侯爵に深く頭を垂れる。
「いやいや、一騎当千のお歴々が協力してくださるのならばお釣りが来るくらい。頼らせていただきますよ」
これまた爽やかスマイルで応対する侯爵。
俺も会頭として、こんな風に応対することを心がけないと。
侯爵やゲッコーさんみたいにカリスマ性を研鑽していかないとな。
「お釣りがくると例えましたが、こちらは借金をしなければならないくらいのお願い事があります」
「存じております。エンドリュー候」
――――俺たちは早速、リズベッドを連れて本邸へと移動する。
面子の中には地龍がいなかったけども、きっと別邸でゆったりとしているんだろうと思いつつ移動。
リズベッドが動けば別邸の応接室を退室していたサキュバスのメイドさんも追従。
多くのメイドさんを伴うという異様な光景。
本邸に配備された兵達も、美人集団の行列に気圧されていた。
姫を護衛する精鋭からなる四人編制のバシネット兜のフルプレートさん達も、その例に漏れない。
「随分と騒がしいですね」
という発言と共に、部屋へと繋がる扉が開かれれば――、
「久しぶりだなライラ」
「待っておりましたトール殿。報告は受けております」
青髪ショートの眼鏡美人が俺に深々と頭を下げてくる。
体を起こせば、期待に満ちた瞳が俺に向けられていた。
「大人数だとご迷惑ですから、皆さん普段通りにお願いします」
リズベッドがメイドさん達に伝えれば、名残惜しそうにしながらも主の命令という事もあって、皆さん素直に仕事に戻っていく。
集落から来ている面々の今後の営みのためにも、皆さんの手伝いもするようにとコトネさんが付け足す。
メイドさんたちで残ったのは、コトネさんとランシェルの二人。
ここでもガルム氏と翁が、リズベッドから一歩下がった位置で左右に立つ。
俺と侯爵。ベル、ゲッコーさん、シャルナ、コクリコのいつものメンバーも姫の寝室に通される。
「トール様、皆様。ご無事で何よりです」
ベッド側にあるナイトテーブルには、湯気の立つ紅茶が入ったカップが置いてあり、それを楽しんでいたプリシュカ姫が立ち上がると、俺たちにカーテシーによる挨拶。
相変わらず血色の悪い白蝋の肌だ。
同じ背格好のリズベッドと見比べると、同じ白い肌でも全くの別物。
姫の肌は正に死者の肌だ。
「トール様。こちらが――」
「はい、プリシュカ姫です」
「そうですか。初めまして姫。リズベッド・フロイス・アンダルク・ネグレティアンと申します」
差し向かいでワンピースを掴んで、リズベッドもカーテシーにて姫に挨拶をすれば、
「ライラから聞いております、リズベッド様。プリシュカ・ファラン・コールブランドと申します。このように魔王様と対面する日が来ようとは」
跪いて挨拶をしようとしたところをリズベッドが制止。
「畏まらないでください」
お互いのファーストコンタクトは柔和な笑みだ。
前魔王であって、現魔王ではないからな。プリシュカにとっての仇ではない。
確か、王子であるお兄さんが現魔王の軍勢との戦いで命を落としたんだよな。
王子の散華で、王様がショックを受けて駄目な状態になったんだっけ。
何にしても、プリシュカが歪んだ恨みをぶつける事がなくてまずは一安心だ。
直ぐさま亜人たちの人数と家畜の数をガルム氏から聞き、当面の食糧と資材、飼料がどれだけ必要かを算出して、羊皮紙に羽根ペンの先端を当てれば、流麗な筆致で記入し、
「誰かある」
と、大河ドラマなんかで戦国大名が口にする台詞を発せば、直ぐさま外で待機していた軽装の兵士が一礼して入室。
「これを食糧管理官であるルビワイトに渡してくれ」
「畏まりました」
両手を出して恭しく巻かれた羊皮紙を受け取ると、一礼して退出。
閉じた扉向こうの通路から、駆け出す足音が聞こえてくる。
肩当てがないタンクトップのようなデザインのレザーアーマーは素早く動けるためのもの。
都市内部だし、伝達係だとあのくらいの装備で十分なようだ。
まあ、王都の兵士に比べたら上等のレザーアーマーだけども。
「感謝の言葉でしか返せない事お許しください」
「その言葉だけで十分ですよ。それに――」
じっと侯爵がガルム氏を見て、次に翁へと目を向ける。
「素晴らしい人材ですね。話を戻しますが、我々の状況を理解してくださっているのならば、ご助力を願えればありがたいのですが――」
と、ここで交渉といったところ。
先ほどは無償で衣食住を提供するとは言っていたけど、提供の言質を受け取ったリズベッドサイドがどういった言動をするのか注視していれば、上座の主がコクリと頷くのが見て取れた。
それを合図に、
「微力ですが喜んでお貸ししましょう。それどころか我々も復権を目指しておりますので、こちらとしてもご助力を願います」
「そうなると、結局はこちらが借りてばかりになるの~」
顎髭をしごきつつ翁が続けば、確かにとガルム氏は自分たちの置かれた立場は同等ではないのだと認識して、侯爵に深く頭を垂れる。
「いやいや、一騎当千のお歴々が協力してくださるのならばお釣りが来るくらい。頼らせていただきますよ」
これまた爽やかスマイルで応対する侯爵。
俺も会頭として、こんな風に応対することを心がけないと。
侯爵やゲッコーさんみたいにカリスマ性を研鑽していかないとな。
「お釣りがくると例えましたが、こちらは借金をしなければならないくらいのお願い事があります」
「存じております。エンドリュー候」
――――俺たちは早速、リズベッドを連れて本邸へと移動する。
面子の中には地龍がいなかったけども、きっと別邸でゆったりとしているんだろうと思いつつ移動。
リズベッドが動けば別邸の応接室を退室していたサキュバスのメイドさんも追従。
多くのメイドさんを伴うという異様な光景。
本邸に配備された兵達も、美人集団の行列に気圧されていた。
姫を護衛する精鋭からなる四人編制のバシネット兜のフルプレートさん達も、その例に漏れない。
「随分と騒がしいですね」
という発言と共に、部屋へと繋がる扉が開かれれば――、
「久しぶりだなライラ」
「待っておりましたトール殿。報告は受けております」
青髪ショートの眼鏡美人が俺に深々と頭を下げてくる。
体を起こせば、期待に満ちた瞳が俺に向けられていた。
「大人数だとご迷惑ですから、皆さん普段通りにお願いします」
リズベッドがメイドさん達に伝えれば、名残惜しそうにしながらも主の命令という事もあって、皆さん素直に仕事に戻っていく。
集落から来ている面々の今後の営みのためにも、皆さんの手伝いもするようにとコトネさんが付け足す。
メイドさんたちで残ったのは、コトネさんとランシェルの二人。
ここでもガルム氏と翁が、リズベッドから一歩下がった位置で左右に立つ。
俺と侯爵。ベル、ゲッコーさん、シャルナ、コクリコのいつものメンバーも姫の寝室に通される。
「トール様、皆様。ご無事で何よりです」
ベッド側にあるナイトテーブルには、湯気の立つ紅茶が入ったカップが置いてあり、それを楽しんでいたプリシュカ姫が立ち上がると、俺たちにカーテシーによる挨拶。
相変わらず血色の悪い白蝋の肌だ。
同じ背格好のリズベッドと見比べると、同じ白い肌でも全くの別物。
姫の肌は正に死者の肌だ。
「トール様。こちらが――」
「はい、プリシュカ姫です」
「そうですか。初めまして姫。リズベッド・フロイス・アンダルク・ネグレティアンと申します」
差し向かいでワンピースを掴んで、リズベッドもカーテシーにて姫に挨拶をすれば、
「ライラから聞いております、リズベッド様。プリシュカ・ファラン・コールブランドと申します。このように魔王様と対面する日が来ようとは」
跪いて挨拶をしようとしたところをリズベッドが制止。
「畏まらないでください」
お互いのファーストコンタクトは柔和な笑みだ。
前魔王であって、現魔王ではないからな。プリシュカにとっての仇ではない。
確か、王子であるお兄さんが現魔王の軍勢との戦いで命を落としたんだよな。
王子の散華で、王様がショックを受けて駄目な状態になったんだっけ。
何にしても、プリシュカが歪んだ恨みをぶつける事がなくてまずは一安心だ。
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