異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-562【ゾンビには遠距離からチクチク攻めるのがセオリー】

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「単調と言いましたが、こういった攻め方も出来るんですね」

「というより、生前の戦い方を体が覚えてるんだろうな。知恵があるなら接近なんて単純な選択はしないさ」
 プロテクションを展開してくれるシャルナの横でコクリコに答える俺。

「尾の間合いだな」
 余裕あるベルの一言。
 ドラゴンゾンビに目を向け直せば、言うように巨躯を反転させ、その勢いで尻尾が轟音を唸らせながらこちらに迫ってくる。
 ガシンと大きな音が響けば、

「くぅ……」
 シャルナの表情が歪む。
 耐えられたけど、質量による尾の一撃を防ぐのは難しいようだった。
 いままで様々な攻撃を防いでくれたけど、攻撃に全振りしているような大型モンスターの一撃はやはり驚異のようだ。

「次が来る。全員下がれ」
 冷静なベルの指示に皆が息を合わせて動く。
 正面を向いたドラゴンゾンビが二、三歩歩み寄れば、右前足を大きく振り上げて――、力任せに振り下ろす。
 ――プロテクションが役目を終える。
 ガラスのように結界が砕かれる光景。

「中々のパワーだな」
 力と技での強力な一撃ってのがデスベアラーなら、コイツのは単純な力。
 デカくて単純な分、一撃はデスベアラーより重い。
 でも単調だから躱すのは難しくない。と言いたいけども、

「かんじきってありがたいけど……」

「まあ機動力はどうしても落ちるよな」
 牽制に二つ目のサーメートを投げるゲッコーさん。

「こうなりゃ遠距離で」
 お久しぶりのFN-57を手にして構え、パンパンと乾いた音を二発。
 チュインチュインと虚しい音が二回……。
 SG552が効果薄目なんだから、通用しなくて当然だよな。

「おのれ! ならば我がとっておきを見舞ってくれる」
 雑嚢に手を突っ込んでゴソゴソと取り出したるは――、

「モロトフカクテルの威力を見せてやる!」
 液漏れを起こさないように、念のために注ぎ口部分を羊皮紙の切れ端で包んでいる状態の火炎瓶。

「イグニース」
 イメージする事で拳サイズにも出来るようになった俺は、普段のスクトゥムのようなラージシールドではなく、バックラーくらいの小型化させた炎のシールドを左の籠手から顕現させ、右手に持った瓶の注ぎ口を炎のシールドに当てる。
 容易く羊皮紙が燃えて、コルクに挟んだ布きれに火が灯る。

「どりゃ!」
 弧を描くような投擲ではなく、一直線を描く軌道。
 ストレンクスンとインクリーズによる投擲は、プロ野球のピッチャーもビックリだ。
 ドラゴンゾンビに瓶が直撃すれば、ガチャンというガラスの割れる音をかき消すように、中に入ったガソリンがボフンッ! と、大きな爆発音を響かせる。

「バァァァァァァ!?」
 おお! アンデッドだけども痛みを感じ取ったような鳴き声だ。

「凄いぞモロトフ! コクリコのファイヤーボールよりは威力があるぞ!」

「言ってくれますね!」
 実際、爆発力ではモロトフの方に軍配が上がる。
 まあ、コクリコのファイヤーボールと比べてだけどね。口には出さないけど、若干の差で軍配が上がる程度だけど。

「もういっちょ」
 五本あるうちの二本目を投擲。
 二本目は下顎部分で爆ぜる。
 ここでも鳴き声に歪んだものが混ざった。

「よし! いけるぞ!」
 拳を硬く握る俺の姿に触発されたのか、負けられないとばかりにコクリコもファイヤーボールを唱えれば、物理的な矢による攻撃では効果が無いと判断したシャルナも、俺とコクリコ以上の威力からなるフレイムアローを放ち、ドラゴンゾンビの体に炎の矢を突き刺していく。
 通常の矢と違って朽ち折れる事はなく、刺さった箇所に火炎ダメージを与え続けていく。

「いいじゃないか。ならば」
 ベルがゲッコーさんみたいに宙空から取り出す仕草。
 出て来るのはワンオフLMGであるグリューセン。
 膝射体勢となって、容赦なく弾丸を吐き出させる。
 的が大きいからどれだけ撃っても外れることはなく、鱗と朽ちた筋肉を弾丸が着実に削り取っていく。

「本来は駄目だが、俺も今日はトリガーハッピーといこうか」
 SG552からM60というロマンを取り出し、これまたロマンの腰撃ちスタイルだ。
 的が大きいからADS覗き込みしなくてもいいって事なんだろう。
 右脇でストックを挟んで固定し、左手を弾帯に沿わせるスタイル。
 八十年代のアクション映画で、筋肉ムキムキな映画スターが見せるスタイルだ。
 実際はまったくもって意味のない射撃姿勢だけど、映画だとどんなに離れている相手にも簡単に当たる不思議使用。
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