異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
626 / 1,861
死霊魔術師

PHASE-626【ゲームよりデート】

しおりを挟む
 ピローン♪
 相も変わらず返信が神速である。流石は死神。神である。

{長い間、連絡を取らなくても普段からこういうやり取りをするのが俺って人間だから。ってのを装っているメールを送るという手法ね}
 ――……チッ、ばれてやがる。

{ごめんて。忙しかったの。最近、本当に忙しかったの。レベルの上がり方で分かるだろ}
 なんでコイツとやり取りする時って、遠距離の恋人に言い訳しているようなメールみたいになるんだろうな。
 童貞だぞ俺。

{忙しくてもちょっとくらいの連絡は取れるでしょ}
 ――…………うぜっ。セラ、うぜぇ。
 恋人気取りかよ。むしろ美人が恋人なら嬉しいけどな。鬱陶しくない美人に限るけども。

{こっちは魔王討伐のために色々と努力してんだよ。そもそもなんで連絡を一々せにゃならんのだ}
 お前がこの異世界に送り込んだのは魔王を倒してって事だったからだろ。
 こっちの世界で頑張ってる人間がメールをしないからって、病みかかったメールをよこしてさ。本当に暇神じゃねえかよ。

{私達はフレンドでしょ。フレンドなら毎日でもメールでやり取りしないと駄目でしょ}
 フレンドってそんな面倒くさい関係じゃないと思う……。
 自分と同じゲームやってる連中と協力してからゲームするって事だし、今度いつ集まるとかの連絡だけをすればいいだけの関係じゃないの? 
 俺のフレンドの場合はリアフレがそのままゲームフレンドだからそこら辺はよく分かってないけども、フレンドってそんなに重い関係ではないと思う。
 にしても面倒くさい死神だな。
 コミュ障をこじらせるとこういったのになるんだな。間違いなくセラはストーカー予備軍だね。

{まあ、たまには報告をさせてもらうよ}
 妥協はここまでだ。まじで毎日なんて無理。
 そもそも俺はそういった連絡とかのやり取りをめんどくさがるタイプですから。 どういった内容で返信するかを考えて、結果、やる気がなくなって返信をしない男ですから。

{仕方ないわね。でもちゃんと連絡をいれるように}
 ああ入れるよ。入れないと怖いメールが連続で来そうだからな……。
 しかし、偉そうな書き方だな。まじでなんなのこの死神。
 お前のいる世界で、お前を相手にしてくれる神様とかいないのかよ。
 ルックスもスタイルもいいのに、性格がアレだと近づかれなくなるっていう典型だな。

{それで、これからの計画は?}

{ああ、数日はゆっくりするよ。その後は王都に戻って侯爵の助力を得た事を伝えるさ}

{着実に進んでいるようね}
 これがチートさんだったらサクサク進むんだろうけどな。
 俺はこの辺の進み具合が遅いのはしかたがないよね。
 なんでもかんでも剣を一振り、魔法一つ発動で終わらせられるって力は持ってないから。
 俺のパーティーにはいるけど。
 でもスパルタだから基本は俺が解決しないといけないからな。

{数日は休みでやる事ないなら、たまにはプレイギアを本来の使い方でもしてみたら?}
 本来の使い方ね~。
 まあ、たまにはいいかもな。
 肯定的な返事をすれば、直ぐさま何時くらいにインするのか聞いてくる辺り、絶対にフレンド参加しようとしているな。

 ――――なんとか重度の病みに発展させずにメールのやり取りを終える事が出来た。
 メールさえ来なかったら、本当だったらベルと買い物とかでもと、勇気を出して誘うつもりだったんだけどな。
 ――――いや、まだそのチャンスはある!
 ゲームもいいが、ベルとドヌクトスの盛り場で楽しくデートってルートの方が良い。
 最近は怒られる事も少なくなったし、距離感が縮まっているとも思うんですよ。
 戦闘中でも短いやりとりでの以心伝心みたいな事も出来ているし。

「まだだ。まだ終わらんよ」
 夜風で酔いを覚ましたのは良くなかったな。
 酒の力を借りて、その勢いで誘う事も出来ただろう。
 齢十六にして酒の力を借りるというパワーワードは、異世界だからこそ許されるものだろう。
 ま、夜風で酔いが覚める以前に、セラの恐怖メールで一気に酔いは覚めてしまったけどね。
 覚めてしまったが俺は勇者。勇気のある者だ。なのでしらふでも誘う事なのど容易だ。
 と、暗示をかける。
 ずっとバトルだったからな。たまにはラブコメ路線でもいいじゃない。
 早鐘を打つ鼓動と共に俺は歩む。
 バルコニーから大広間へと戻る。
 進む足は緊張から鈍く感じるが、一歩一歩の足取りは強いものだ。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...