異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
638 / 1,861
ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-638【実質二人で攻略】

しおりを挟む
「え? 行きますよね」

「いや行かない」
 なんで即答。
 不満げな表情だけで返してあげれば、

「侯爵が持ってる酒が――――美味かったんだ」

「だから俺が採取に行っている間はしっかと休日を取って、酒を楽しみたいと?」

「ああ!」
 何という屈託のない返事なんだろう。
 美少年のそれなら女性は喜ぶだろうけど、髭のダンディズムが発せば残念な人にしか見えないですよ。
 ――この休日中、俺とゲッコーさん以外の女性陣パーティーメンバーだけがしっかりと頑張ってたわけだ。
 で、改心した俺はゲームをやめて採取に行くのに、この人だけは酒ですか……。そうですか……。

「トールは強いじゃないか。だから大丈夫だ。なので俺を残念な人を見るような目で見ないように」
 強者に強いと言われれば、認めてもらったみたいで嬉しくもあるが、それ以上に侮蔑の目を自然と向けてしまったようだ。
 向けてしまう理由として――、

「昨晩も堪能したみたいですね」

「ああ!」
 指呼の距離で話せば、酒気が漂っているのがわかる。ギムロンを思い出すよ。
 ドワーフと一緒になって酒蔵やってる蔵元は、王都より離れた地でも酒への探究心は忘れない。
 探究心というか、アルコールが欲しいだけなんだろうけど。

「ベル――は手伝いだったな。参加は無理か」

「ああ。無理だ」
 モフモフ達の世話をしないといけないもんな……。
 チートは揃って単独行動スキルが過ぎる……。
 コクリコとシャルナとリンの四人パーティーになるのかと考えていれば、なんとシャルナもベルの手伝い。
 ならばメイドさん達から協力をと思うも、侯爵と共に王都へと赴くリズベッドの準備をしないといけない。
 プリシュカ姫も王都に戻るということなので、帰省の支度をととのえる手伝いもあるそうだ。
 リズベッドが王都に赴くとなれば、王様と会談という流れになるだろう。
 人間サイドのトップと、元が付くとはいえ慕う方々も多い魔王による会談。
 
 リズベッドが動くのだから必然的に、ガルム氏やアルスン翁を中心とした戦闘要員の方々も準備をしないといけない。
 王都へと人員が割かれる事になるから、人足の減少で集落建設に遅延が生じてしまう。
 減少分を埋めるために、王都に赴く前にメイドさん達がそちらもお手伝い。
 多岐にわたっての活躍である。
 ベルやシャルナの参加もこれが理由のようだ。
 王都へ向かう準備が整うまでは、皆で集落建設に協力するようだ。
 そんな中で屈託なく酒を飲むと言えるゲッコーさんの胆力よ……。

「ふむん。てことは、俺とコクリコとリンの三人か」

「三人だけど二人で頑張って」
 今回リンは道案内。
 戦闘になった場合、よっぽどのことがない限りは参加はしないという事だった。
 ミストドラゴンが抵抗し、苛烈な戦いになり、どちらかが瀕死になったら止めてあげると言う辺り、最終局面まで手は貸してくれなさそうだな。

 リンの今回の立ち位置はパーティーメンバーとしてではなく、案内役というポジション。
 極力、協力はしないスタイルのスポット参戦みたいな立ち位置。
 もしかしたら俺やコクリコの実力をここでも試そうと思っているのかもしれない。
 ベルやゲッコーさん、シャルナを除いた俺たちの実力。
 情けない姿を見せれば、仲間になったのもご破算になるかもしれないので、そうならないためにも励まないとな。
 
「やばい時は回復してくれるよね?」
 アンデッドなのに回復魔法が適応するし、使用出来る存在だかな。
 戦闘に参加しなくてもいいから、俺たちが本当に危なくなったら最終局面じゃなくても回復をしてほしいと頼めば、危機に陥ったら回復だけはしてくれると約束はしてくれた。
 
「じゃあ、この三人で行ってみるか」
 実質、俺とコクリコの二人パーティーってやつだな。
 だが不安はあまりない。
 コクリコも使用する魔法が増えてきているし、俺もピリアがアクセルまで使用出来るようになった。何より火龍装備もあるから――、

「ああそうだ。トール」

「何でしょうかゲッコーさん」

「今回の採取は訓練も兼ねているからな、火龍装備を全て外していこうか」

「……ん?」

「それは素晴らしい提案ですね」

「え、ベル!?」
 ちょっと待て! なぜに苦行プレイをしないといけないんだよ。
 それをやっていいのは貴方たちやチート主人公だけなんだよ。
 俺みたいに必死にこの世界で頑張ってる存在に、追加で苦行プレイは駄目なやつだろ。オーバーワーク過ぎるわ!
 と、言い返したいけど、言い返せないヘタレが俺です……。

「せめて残火と籠手だけでも」

「駄目だな。そもそも火龍装備は全て駄目だ」

「なぜなんですゲッコーさん」
 ぶんむくれ気味み問えば、

「相手はドラゴンだろ。そんな装備で近づいたら、怯えて逃げるかもしれないぞ。出会うなんて不可能になる」

「……ああ」
 納得…………。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...