642 / 1,861
ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-642【湖畔のログハウス】
しおりを挟む
「なんて名前の湖なんだ?」
澄んだ水面を陽射しが反射すれば、さながら巨大な宝石のようでもある。
「セイグライス湖。王都の北に位置する公爵領のニウラミエル湖と双璧をなす、大陸において人間が統治する領域で二大湖と称されている絶景の地よ」
絶景と言われるだけあって見ていて飽きる事がない。
老後はこの風景をロッキングチェアに座って眺めたいくらいだ。
澄んだ水面に負けないくらいに清らかな空気だが、それが冷たい風となり肺に入ってくる。
清らか空気はありがたいが、冷たい風は迷惑だな。
深呼吸によるデトックスをしたいけど、体の中から冷やすのはよろしくない。
火龍装備じゃないからか、今まで感じなかった寒さをしっかりと感じ取る事が出来た。
ここでも装備が無い事による弊害が生まれてしまっている。
「それで、どこからダンジョンに進入するんです?」
やる気満々のコクリコは琥珀の瞳を水面に負けないくらいに煌めかせている。
この湖は、暑い季節には避暑地としても活用されているそうだが、現在バランド地方は瘴気の驚異はなくても、魔王軍の脅威がある事から避暑地としての機能は停止。
湖畔には複数の建物。
殆どが景観に合っているログハウスからなるものばかりだが、現在、俺たち以外に人はおらず静かなものだ。
湖は自然の風景として最高の眺めなんだけども、点在する活気のないログハウスが原因となって、風景を寂しいものに変えてしまっている。
宿泊目的の客がいる季節には賑わっていたんだろうが、魔王軍の脅威があるいまでは、手入れされずに成長した背の高い草木がログハウスを呑み込もうとしているほどだ。
そんな中で気になる地点を俺は視界に捉える。
「どこから進入すれば良いのかしらね~」
飄々とコクリコに返すリンに、返された方は口をへの字にする。
「分からないから聞いているのですよ!」
への字を開いて怒気を飛ばす。
「ちょっとは考えなさいよ。ね~」
って、俺に振ってくるので、
「ね~」
と、返しておく。
「なんですかトールまでアンデッドと一緒になって」
「コクリコ。リンは仲間なんだからアンデッドって呼ばないように」
「傷つくわ~」
「ぬぅぅぅぅ」
悔しそうにコクリコが唸る。
「で! 分かっていそうなトールに答えてもらいましょう」
「よかろう。答えはずばり――あのログハウスだ」
ビシッと食指を向ければ、リンからは拍手が送られる。
正解だったのでコクリコはおもしろくないといった感じだ。
「で! なんであの建物なんですか」
「で! が続きますな。見たまえワトスン君。周囲のログハウスと俺が指さすログハウスを」
ワトスンとは誰の事ですか? と言いつつも、素直に見やる。
琥珀の瞳を忙しく動かし、ログハウスを見比べていた。
――――些かのしじまが訪れ、その間、コクリコは何度か首を傾げる動作を加える。
「――――おお!」
ようやく答えを導き出したようで、はたと手を打つと、
「トールが向けた建物は他と違い、建物周辺の草刈りが滞っていません」
「さよう。人の手が入らない状態になっている中で、あそこだけがちゃんと整えられている。そこに気づけたのはいいが、もっと早くに気づいて欲しかったね~」
「なんですか。自分が直ぐに分かったからって上からですね」
常にマウントを取りたがるお前には言われたくないけどな。
まあいいけども。
「つまりはリンの手の者がいるって事だな」
「ええ、監視役にね」
――ログハウスのドアまで接近。
ドアノブに手をかけて引いてみるもびくともしない。
押すのかと思えばこれまたびくともしない。
まさかの引き戸? なわけがないか。
「鍵がかかっているようですね」
すっと俺たちの前へと来れば、ホットパンツから伸びる白い足がドアに狙いを定める。
コクリコの蹴りがマスターキーになるかと思ったけども、リンが横に立ち、すっと手を横に出して動きを制する。
「なんでも力業というのはどうかしらね。ウィザードなんでしょ」
「ロードウィザードです」
「だったらその名に恥じないような対応をしなさいよ」
「分かりました」
足の代わりにワンドを掲げれば、貴石が力強い赤色に輝く。
「攻撃魔法じゃないわよ」
「ぬぅぅぅぅ」
っと、再度の唸りによる返事。
ワンドを振る動作を止めると同時に、リンが一歩前に出てから食指をドアへと沿わせれば、円形の白光魔法陣がドアに顕現。
ダイヤルのようにカチカチと回転し、程なくして止まれば、魔法陣は霧散する。
「どうぞ」
リンの誘導でドアノブに再び手を掛けて引けば、今度は造作もなく開く事が出来た。
「――ほほう」
なるほどね。流石に驚かない。
見慣れたからな。身構えることもしない。
ドア向こうの広間には、スケルトンが数体いる。
澄んだ水面を陽射しが反射すれば、さながら巨大な宝石のようでもある。
「セイグライス湖。王都の北に位置する公爵領のニウラミエル湖と双璧をなす、大陸において人間が統治する領域で二大湖と称されている絶景の地よ」
絶景と言われるだけあって見ていて飽きる事がない。
老後はこの風景をロッキングチェアに座って眺めたいくらいだ。
澄んだ水面に負けないくらいに清らかな空気だが、それが冷たい風となり肺に入ってくる。
清らか空気はありがたいが、冷たい風は迷惑だな。
深呼吸によるデトックスをしたいけど、体の中から冷やすのはよろしくない。
火龍装備じゃないからか、今まで感じなかった寒さをしっかりと感じ取る事が出来た。
ここでも装備が無い事による弊害が生まれてしまっている。
「それで、どこからダンジョンに進入するんです?」
やる気満々のコクリコは琥珀の瞳を水面に負けないくらいに煌めかせている。
この湖は、暑い季節には避暑地としても活用されているそうだが、現在バランド地方は瘴気の驚異はなくても、魔王軍の脅威がある事から避暑地としての機能は停止。
湖畔には複数の建物。
殆どが景観に合っているログハウスからなるものばかりだが、現在、俺たち以外に人はおらず静かなものだ。
湖は自然の風景として最高の眺めなんだけども、点在する活気のないログハウスが原因となって、風景を寂しいものに変えてしまっている。
宿泊目的の客がいる季節には賑わっていたんだろうが、魔王軍の脅威があるいまでは、手入れされずに成長した背の高い草木がログハウスを呑み込もうとしているほどだ。
そんな中で気になる地点を俺は視界に捉える。
「どこから進入すれば良いのかしらね~」
飄々とコクリコに返すリンに、返された方は口をへの字にする。
「分からないから聞いているのですよ!」
への字を開いて怒気を飛ばす。
「ちょっとは考えなさいよ。ね~」
って、俺に振ってくるので、
「ね~」
と、返しておく。
「なんですかトールまでアンデッドと一緒になって」
「コクリコ。リンは仲間なんだからアンデッドって呼ばないように」
「傷つくわ~」
「ぬぅぅぅぅ」
悔しそうにコクリコが唸る。
「で! 分かっていそうなトールに答えてもらいましょう」
「よかろう。答えはずばり――あのログハウスだ」
ビシッと食指を向ければ、リンからは拍手が送られる。
正解だったのでコクリコはおもしろくないといった感じだ。
「で! なんであの建物なんですか」
「で! が続きますな。見たまえワトスン君。周囲のログハウスと俺が指さすログハウスを」
ワトスンとは誰の事ですか? と言いつつも、素直に見やる。
琥珀の瞳を忙しく動かし、ログハウスを見比べていた。
――――些かのしじまが訪れ、その間、コクリコは何度か首を傾げる動作を加える。
「――――おお!」
ようやく答えを導き出したようで、はたと手を打つと、
「トールが向けた建物は他と違い、建物周辺の草刈りが滞っていません」
「さよう。人の手が入らない状態になっている中で、あそこだけがちゃんと整えられている。そこに気づけたのはいいが、もっと早くに気づいて欲しかったね~」
「なんですか。自分が直ぐに分かったからって上からですね」
常にマウントを取りたがるお前には言われたくないけどな。
まあいいけども。
「つまりはリンの手の者がいるって事だな」
「ええ、監視役にね」
――ログハウスのドアまで接近。
ドアノブに手をかけて引いてみるもびくともしない。
押すのかと思えばこれまたびくともしない。
まさかの引き戸? なわけがないか。
「鍵がかかっているようですね」
すっと俺たちの前へと来れば、ホットパンツから伸びる白い足がドアに狙いを定める。
コクリコの蹴りがマスターキーになるかと思ったけども、リンが横に立ち、すっと手を横に出して動きを制する。
「なんでも力業というのはどうかしらね。ウィザードなんでしょ」
「ロードウィザードです」
「だったらその名に恥じないような対応をしなさいよ」
「分かりました」
足の代わりにワンドを掲げれば、貴石が力強い赤色に輝く。
「攻撃魔法じゃないわよ」
「ぬぅぅぅぅ」
っと、再度の唸りによる返事。
ワンドを振る動作を止めると同時に、リンが一歩前に出てから食指をドアへと沿わせれば、円形の白光魔法陣がドアに顕現。
ダイヤルのようにカチカチと回転し、程なくして止まれば、魔法陣は霧散する。
「どうぞ」
リンの誘導でドアノブに再び手を掛けて引けば、今度は造作もなく開く事が出来た。
「――ほほう」
なるほどね。流石に驚かない。
見慣れたからな。身構えることもしない。
ドア向こうの広間には、スケルトンが数体いる。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる