異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-662【タッグマッチは余裕】

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 炎を振り払おうと体を大きく左右に振る姿は悶えているようにも見える。

「隙だらけだぜ!」
 ここが攻めの好機と判断し、切っ先を向けてから駆ける。
 狙うは頭部。

「ヴァラ!」
 顔が炎に包まれながらも、攻撃が来るとなれば迎撃姿勢をとるのは敵ながらお見事。もう少し様子を見ることも大事だと学ばされる。
 眼窩の緑光が好戦的に輝き、炎に苛まれながらも俺へと意識を集中させているのが分かった。
 刃幅の広い白刃による渾身の一振りが俺の鼻先を掠める。
 剣圧で生じる風は、恐怖を心底に刻み込んでくるものだ。心の中で剣圧をはじき飛ばす気迫を生み出し後退はしない。
 下がらず背を反らせるだけで回避し、再び前へと足を出す。
 頭部を狙う軌道が逸れたので狙う箇所を変更。
 ファルシオンを回避し、懐に潜り込んだところで両膝を曲げ姿勢を更に低くし、次には曲げた両膝を力一杯に伸ばし、その勢いのままにロングソードをディザスターナイトの胸部に突き刺す。
 オリハルコンのロングソードによる一点に集中した刺突は、大柄のディザスターナイトが装備する赤紫色のフルプレート胸部に突き刺さり、

「オラ!」
 こちらも負けじと、心の中の気迫を体外に発して、全体重をディザスターナイトに預けるかのようにぶつかって、剣身を更に深く突き刺す。
 ヒロインが主人公の胸元に飛び込んでいくイメージ。
 現実は、童貞がアンデッドの騎士に飛び込んでいるという光景。
 
 そこからはピリアによる踏み込みで巨体を一気に押し込み、反撃を許すことなく壁へと叩き付ければ、ディザスターナイトを貫いたロングソードが壁まで貫通。
 昆虫標本のようにして動きを封じる。
 もちろんアンデッド。胸部を刺して動きを封じたところで、倒れたり消滅などはしない。
 一気に頭を叩きつぶしたかったけども。

「トール。お願いします」

「あいよ!」
 逡巡なんかしない。
 即断、即決、即答、即応。
 二体を相手によく堪えてくれたと称賛したい。
 左手にワンド。右手にはミスリルフライパン。
 文句を言っていたけども、十分に活躍しているフライパン。
 ディザスターナイトにとどめは刺せなかったけども、それは優先すべき事ではない。

「アクセル」
 味方こそ優先。
 コクリコに迫るリビングアーマーの側面まで瞬時に移動してからの、

「よっこいしょ!」
 ホームランバッターの如きフルスイングをミスリルメイスで見舞ってやる。
 バイーンと、如何にも鎧の中が空洞というような音が響く。
 重鎧の脇腹部分をヘコませ、くの字を書かせて吹き飛ばす。

「よくやったな」

「ロードウィザードなんで」

「おう」
 大量に魔法も使用してたみたいだけど――。
 ――うむ。
 リビングアーマー二体の鎧を上から下まで見れば、所々がヘコんでいる。
 次に目を移すのは、コクリコが右手に持つ青白く光るフライパン。
 検分によるダメージ配分は、右手に持った武器が、最も多くの成果を出しているとジャッジ。

「随分と大活躍のようで」

「思いの外、手に馴染みます」
 のようだな。
 コクリコがメイン武器を手に入れた。

「せい!」
 思っている矢先に残りの一体がハルバートを斜に振り上げるけども、その動作よりも速く、パカーンって爽快で豪快な音が玄室に響く。
 コクリコの見舞ったミスリルフライパンが顔面にヒット。
 弓なりとなって、殴られた方とは反対方向に仰臥にて倒れる。
 兜のスリット部分。倒れる時に伸びる紫色の残光が印象的だった。

「お前は俺!」
 ギギギ――と、鎧の軋み音と共に立ち上がろうとする、俺が吹き飛ばした相手。
 中腰で立とうとしているところに蹴りを見舞って再び倒し、諸手でしっかりと握ったメイスを頭部へと全力で振り下ろせば、陥没したように兜が大きくヘコむ。
 クリティカルだったのか、鎧が関節部分からガラガラと音を立てて床へと転がる。

「お見事」
 二人で戦えばこいつらは驚異じゃない。
 ディザスターナイトの取り巻きってところだろうから、三体同時に攻めてこられれば面倒だっただろう。
 もしかしたら、コンビネーションアタック的な攻撃手段も持っていたかもしれない。
 コクリコの活躍でその驚異が取り除かれた事には、心底感謝している。
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