690 / 1,861
ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-690【名前負け】
しおりを挟む
「やっぱり綺麗だよな」
ビジョンもあればファイアフライのタリスマンによって明るくなった地底湖でも目にはしたけども、霧もなく、窓から陽が射す場所で見ると格別。
陽の光を反射させ、美しい白い鱗が更に際立つというものだ。
「輝くような白だな」
「洗剤のCMみたいな感想ですね。ゲッコーさん」
「実際にそうだろう」
まあね。本当に純白ってのはこういうのをいうんだろうな。
「ではトール」
「おう」
保護者のようなリンからの了承を得て、イルマイユへと接近し、片膝を突いて中腰になる。
「怖いのは嫌だから……」
「任せろって。深爪なんかしないから」
無駄に時間をかけるより、スパッと切れる残火を使用。
ナイフなんかよりも刀身が長いから目にするイルマイユは及び腰。
ドラゴンにだけ分かるであろう火龍の威光を感じているから特にだろう。
及び腰になられると、急に前足を動かしたりする可能性もあり、切らなくてもいい部分まで切ってしまうって考えると緊張もする。
「安心してくれよ。動くと怪我をするから」
「うん……」
ドラゴンとしては小型の馬サイズとはいえ、人間からしたらデカいので見上げて問うときの迫力はなかなかだ。
あまりじらすのは良くないので、一つの爪の先端に刃を当ててから、力を入れずに腕を動かせば簡単に切ることが出来た。
水色の水晶のように綺麗な爪。加工すれば宝石のようにも見えるだろう。
切った後、痛みを覚えたような声を出さなかったので胸をなで下ろす。
「よし。これで足りるよな」
「十分よ」
残火を収めて立ち上がり、
「ありがとうな」
典雅な一礼を持って、ミストドラゴンの爪を頂いた。
「じゃあイルマイユが擬人化するから男達はもう一回、外の景色を楽しむように」
爪を手に握って、リンに従い再び百八十度回答。
今度は窓から景色を見るのではなく、水色の水晶の様な爪を眺める事にした。
俺の掌に乗っかる爪の長さは小瓶くらい。不思議と中は空洞だった。
――擬人化から着替えを終えたイルマイユにもう一度お礼を言って、
「で、後の素材はあるんだよな?」
「バッチリと残りはあるわよ」
「どんなのなんだ?」
「アプサラスの朝霧の雫。アイガイオンの海塩。トリックスターの弟切草。タイタニアの玉章の四種。これにミストドラゴンの爪を入れて全て揃う」
「イルマイユには悪いけど、名前負けが……」
なんか残りのは絶対に高難易度のような気がしてならない。
「失礼な男ね」
グサリとリンの台詞が胸に刺さる。
ミストドラゴンには申し訳ないとは思っているんだけどね。
他の素材の名前が強うそうなんだもの。トリックスター以外。
「トールの言っている事は正しいよ」
ここで援護射撃は当の本人であるイルマイユ。
「ま、そうなんだけどね」
と、悪戯じみた笑みのリンが続く。
残りの四つの素材を集めるとなると、現状の俺の実力では、今回みたいにコクリコと二人での採取となれば間違いなく無事では済まないし、回収も不可能って事だった。
無事では済まないってのはオブラートに包んでいるんだろうな。
実際は死ぬって事なんだろう。
昔の冒険者たちがミストドラゴンを狩る要因になったのも、これらの素材の中で攻略難易度が低かったからだそうだ。
結局それ以外を集めるのが困難だからエリクシールは伝説的な霊薬なわけだ。
シャルナのような長命のエルフでも見る事は稀なんだからな。
ミストドラゴン達は無駄に乱獲されたようなもんだ。
後先を考えていない昔の冒険者たちに、余計に憤りを覚える。
「ちなみにベルやゲッコーさんが採取に参加するとなると?」
「ぬるい。ぬるすぎる事になる」
そうか、分かってはいるけども、俺やコクリコのレベルはチート二人と比べて未だに天壌の差って事か……。
――頑張ろう。と、本気で思えた。
「じゃあ爪をこっちに」
キラキラと宝石のように輝く爪を両手で丁寧に持ち、リンへと手渡す。
「ちゃちゃっと作るわね」
「そんな簡単なのかよ」
しかもこの場で直ぐにって感じだ。
確か大魔法なんかも使用してから作るって話だったような。
「オムニガル」
「は~い」
玉肌のポルターガイストの少女が、無遠慮に床から出て来る。
ビジョンもあればファイアフライのタリスマンによって明るくなった地底湖でも目にはしたけども、霧もなく、窓から陽が射す場所で見ると格別。
陽の光を反射させ、美しい白い鱗が更に際立つというものだ。
「輝くような白だな」
「洗剤のCMみたいな感想ですね。ゲッコーさん」
「実際にそうだろう」
まあね。本当に純白ってのはこういうのをいうんだろうな。
「ではトール」
「おう」
保護者のようなリンからの了承を得て、イルマイユへと接近し、片膝を突いて中腰になる。
「怖いのは嫌だから……」
「任せろって。深爪なんかしないから」
無駄に時間をかけるより、スパッと切れる残火を使用。
ナイフなんかよりも刀身が長いから目にするイルマイユは及び腰。
ドラゴンにだけ分かるであろう火龍の威光を感じているから特にだろう。
及び腰になられると、急に前足を動かしたりする可能性もあり、切らなくてもいい部分まで切ってしまうって考えると緊張もする。
「安心してくれよ。動くと怪我をするから」
「うん……」
ドラゴンとしては小型の馬サイズとはいえ、人間からしたらデカいので見上げて問うときの迫力はなかなかだ。
あまりじらすのは良くないので、一つの爪の先端に刃を当ててから、力を入れずに腕を動かせば簡単に切ることが出来た。
水色の水晶のように綺麗な爪。加工すれば宝石のようにも見えるだろう。
切った後、痛みを覚えたような声を出さなかったので胸をなで下ろす。
「よし。これで足りるよな」
「十分よ」
残火を収めて立ち上がり、
「ありがとうな」
典雅な一礼を持って、ミストドラゴンの爪を頂いた。
「じゃあイルマイユが擬人化するから男達はもう一回、外の景色を楽しむように」
爪を手に握って、リンに従い再び百八十度回答。
今度は窓から景色を見るのではなく、水色の水晶の様な爪を眺める事にした。
俺の掌に乗っかる爪の長さは小瓶くらい。不思議と中は空洞だった。
――擬人化から着替えを終えたイルマイユにもう一度お礼を言って、
「で、後の素材はあるんだよな?」
「バッチリと残りはあるわよ」
「どんなのなんだ?」
「アプサラスの朝霧の雫。アイガイオンの海塩。トリックスターの弟切草。タイタニアの玉章の四種。これにミストドラゴンの爪を入れて全て揃う」
「イルマイユには悪いけど、名前負けが……」
なんか残りのは絶対に高難易度のような気がしてならない。
「失礼な男ね」
グサリとリンの台詞が胸に刺さる。
ミストドラゴンには申し訳ないとは思っているんだけどね。
他の素材の名前が強うそうなんだもの。トリックスター以外。
「トールの言っている事は正しいよ」
ここで援護射撃は当の本人であるイルマイユ。
「ま、そうなんだけどね」
と、悪戯じみた笑みのリンが続く。
残りの四つの素材を集めるとなると、現状の俺の実力では、今回みたいにコクリコと二人での採取となれば間違いなく無事では済まないし、回収も不可能って事だった。
無事では済まないってのはオブラートに包んでいるんだろうな。
実際は死ぬって事なんだろう。
昔の冒険者たちがミストドラゴンを狩る要因になったのも、これらの素材の中で攻略難易度が低かったからだそうだ。
結局それ以外を集めるのが困難だからエリクシールは伝説的な霊薬なわけだ。
シャルナのような長命のエルフでも見る事は稀なんだからな。
ミストドラゴン達は無駄に乱獲されたようなもんだ。
後先を考えていない昔の冒険者たちに、余計に憤りを覚える。
「ちなみにベルやゲッコーさんが採取に参加するとなると?」
「ぬるい。ぬるすぎる事になる」
そうか、分かってはいるけども、俺やコクリコのレベルはチート二人と比べて未だに天壌の差って事か……。
――頑張ろう。と、本気で思えた。
「じゃあ爪をこっちに」
キラキラと宝石のように輝く爪を両手で丁寧に持ち、リンへと手渡す。
「ちゃちゃっと作るわね」
「そんな簡単なのかよ」
しかもこの場で直ぐにって感じだ。
確か大魔法なんかも使用してから作るって話だったような。
「オムニガル」
「は~い」
玉肌のポルターガイストの少女が、無遠慮に床から出て来る。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる