異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-692【んじゃ戻るかね】

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 姫も呪いが解け、侯爵の派兵準備もととのい、俺の手には霊薬。
 となれば――、

「勇者殿。万事整いました」
 良いタイミングで入室してきますね。侯爵。
 いよいよこの地から王都へと戻る事になる。
 長かった。
 侯爵の体を乗っ取っていたヴァンパイアのゼノを倒し。
 まさかの敵のお膝元である魔大陸まで赴き、前魔王のリズベッドに地龍を救い、バランド北にてリンと戦闘。
 で、ダンジョンでイルマイユと戦闘。
 霊薬であるエリクシールを得ることが出来たが、それ以上に頼れる仲間が多く出来たことが最も大きな成果だろう。
 
 姫の呪解もなり、侯爵の軍勢の助力も得た。
 最高の状態で王都に戻れる。
 凱旋と言っても言いすぎじゃないだろう。
 それに俺たちの懐も潤う予定だしな。

「では戻るか」

「だな」
 ベルの声は場をキリッとさせる。
 魔王軍との戦いのための力が整ってきた。
 これから魔王軍に対して守りから反抗に打って出ることになるだろう。
 その前に、王都北の公爵サイドとも話をつけないといけないんだよな。
 それらが済めば、人類サイドは力を集結させる事も可能なはずだ。
 
 
 霊薬を手にしてから一日が経過する。
 ――――蒼穹!

「最高の天気だな。旅立ちにはいい空だ」
 雲一つない晴れ渡った空。
 俺の心もこの空に負けないくらいに晴れやか。
 もちろんコクリコも。
 俺たちがダンジョンで手に入れた金塊の両替が完了。
 拵えが立派な防具などが競りにて全て売れた。
 リンの言うように有名な職人が作った鎧にはレアリティがあったようで、競りは白熱したと侯爵。

 で、俺たちの手元には、ダーナ円形金貨が約四千枚。
 一枚が十万円金貨と同じくらいの額だと俺は記憶しているので、一度のダンジョン攻略で俺たちは約四億円の金を手に入れた事になる。

 額を耳にし、百枚ずつ入った木箱が四十箱ほど俺たちの前に置かれた時は二人して固まった。
 まず喜びよりも、額の大きさに怖さが勝った。
 だが時間の経過とともに、恐怖も薄れて喜びだけが支配。
 俺とコクリコは飛びはねて喜んだ。
 山分けで一人二億――とはならない。冒険者はマタギ勘定。
 パーティーメンバー皆で山分け。
 今回はリンはいらないという事だったので五人で分ける。
 分けても一人が日本円で八千万。
 ゲッコーさんは酒蔵の運営資金に使用すると言って喜び、ベルからも感謝を受けるが使用目的は聞けなかった。
 どうせゴロ太たちの為に使うんだろうけど。
 愛玩達とのファンシーなお店の開業資金として使いそうだな。
 
 シャルナは長命なエルフだからなのか、お金に対してそこまで感心を持ってはいなかった。
 お金を使用せず、自然の物を利用するエルフには最低限のお金だけ有ればいいという考えのようだ。
 それでも貰えたことに感謝してくれた。
 
 俺と共にこの利益をもたらしたコクリコは贅沢品でも買うのかと思ったが、以外にも貯蓄するとの事。
 散財のイメージがあるが、大金となると手堅いようだ。
 
 かくいう俺もギルドの為の使用と、ベルには反対されているが、おピンク街の開業資金として一部を使用するつもり。
 正直、この世界でお金をどう使うか分からないからこの選択肢。
 現状、食事にも困っていないし、装備も整っているから自分の為の金の使い方が分からない。
 いつ入り用になるか分からないので、俺もここは半分を貯蓄する堅実なプランを選択。
 ほくほくの俺たち一行の側では、装備を調えたドヌクトスの兵士たち。
 征東騎士団もそろい踏み。
 イリー指揮の下、一糸乱れずに隊列を整えていく。
 軍馬たちもよく鍛えられていて、嘶くことがない。
 聞こえるといえば、時折、兵達や軍馬が動く事で発生する、鎧や馬甲が擦れる金属音くらい。
 調練された兵と馬の姿は非常に心強い。

 懐も潤い頼れる者達を引き連れて王都に戻る。
 やはり凱旋と言っても言いすぎではない。 

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